「ねぇね、タイガくん」
「あ?」
「コンビニ行きたいんだけど、付き合って?」
「あぁ? 俺もう風呂入ったし、一人で行ってこいよ……」
時刻は0時を過ぎたところ。うちに泊まりにきていたカケルが、突然風呂上がりの俺に言った。
「だって、一人じゃ怖いんだもん。夜中のコンビニって、ヤンキーとか怖い人いそうだし……」
「怖い人って……」
コンビニ前に不良って、そんなベタな……。平気だから行ってこい、と言いたいところだけど不安そうにしているカケルを見ると、はっきりそう言えない。それに、オフモードのコイツは気が弱いから、不良なんかに絡まれたら一発でやられて有り金全部渡しそうだ(しかもすごい額)。
「ったく、仕方ねぇな……」
髪を拭いていたタオルを洗濯機に放り投げ、新しいTシャツと短パンを履く。
「ありがとう! タイガくん!」
ホッとした顔。めんこい。
この顔のためならまぁ、コンビニくらいなら付き合ってやるか。
そんなこんなでコンビニに向かったら、本当にコンビニ前に絵に描いたような不良がいて、カケルはビビって俺にしがみついた。本当についてきて良かった。
不良たちは俺らを知らないのか、カケルのアフロを見てクスクス笑った。俺が睨んだら、ぶつくさ言いながら逃げてった。
「あれれ? いなくなっちゃった。どうしたんだろ?」
「さぁな? 便所じゃね?」
「えー? おトイレならコンビニにあるでしょ?」
カケルからは、俺が不良らを睨んだのは見えてない。見えなくていい。
「まぁ、いっか! 行こ、タイガくん! 着いてきてくれたお礼に、アイス買ったげる!」
「おう。サンキュ」
俺はカケルの肩を抱くようにして、コンビニに入った。