[虎兎]あなたがくれたもの「これ、楓から」
朝、いつもギリギリに出社してくる虎徹さんが、何故かアポロンメディア本社ビルの入口で僕を待っていて、可憐なピンクの封筒を差し出してきた。
「楓ちゃんから?」
何だろう……と思いながら受け取ると、それがわかったのか呆れたような声で答えが帰ってきた。
「誕生日だろ」
封筒から出てきたのは、楓ちゃんからのバースディカードだった。小さくちぎった紙で描かれたバースディケーキ。かわいらしい手書きの文字で、『HAPPY BIRTHDAY』と記されている。
「忘れてました……」
嬉しくて、自分でも頬が緩んでいるのがわかる。わざわざ虎徹さんに託してくれたんだ。
「忘れんなよ、誕生日なんかさ」
「別に蔑ろにしてたわけじゃないですよ。このところ忙しくて、今日だというのを失念していました」
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