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    shiki_poi

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    shiki_poi

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    バニーの誕生日おめでとう話です。遅れてきたおめでとう…。やっぱりバニーをでろでろに甘やかしたいだけの人ですね!
    もうまとまらないから思い切って投げました。誕生日だとかどうとか関係ないよね!
    バニーからプレゼントのリクエストはずいぶん前にしてあって、二人の予定があったタイミングでのお買い物デート…というのを…入れそびれました…。

    #TIGER&BUNNY
    #虎兎
    tigerRabbit

    [虎兎]あなたがくれたもの「これ、楓から」
     朝、いつもギリギリに出社してくる虎徹さんが、何故かアポロンメディア本社ビルの入口で僕を待っていて、可憐なピンクの封筒を差し出してきた。
    「楓ちゃんから?」
     何だろう……と思いながら受け取ると、それがわかったのか呆れたような声で答えが帰ってきた。
    「誕生日だろ」
     封筒から出てきたのは、楓ちゃんからのバースディカードだった。小さくちぎった紙で描かれたバースディケーキ。かわいらしい手書きの文字で、『HAPPY BIRTHDAY』と記されている。
    「忘れてました……」
     嬉しくて、自分でも頬が緩んでいるのがわかる。わざわざ虎徹さんに託してくれたんだ。
    「忘れんなよ、誕生日なんかさ」
    「別に蔑ろにしてたわけじゃないですよ。このところ忙しくて、今日だというのを失念していました」
     ヒーロー事業部に向かいながら、カードは大事に封筒にしまい直しておく。忘れずに持ち帰ろう。
     一昨年とその前の誕生日は、ヒーローたちが僕の誕生祝いという名のサプライズ……という名の馬鹿騒ぎをやらかしてくれた。
     昨年は、もうケーキを送ってくれる人はいないことを実感するのが辛くて、シュテルンビルトを離れた場所で過ごした。
     今年は復帰して最初の誕生日だからと、テレビや雑誌がやたらと特集を組んでくれたのだ。全て事前に収録などは済ませていたので、今日が当日だという実感がすっかり失せていた。
    「夕方、トレーニングが終わったら、ジムで皆さんがケーキを用意してくださるそうです。もちろん、何事もなければ、ですけど」
     誕生日番組の収録がすべて先に行われたのも、もちろん『不測の事態』に備えてだ。
     警備員やすれ違う社員達から『おめでとう』の言葉をたくさん受け取り(そして笑顔を振りまき)ながら、オフィスにたどり着く。事務の女性からも若干そっけないものの祝われたのだが、そこでふと気づく。

    (そういえば……虎徹さんからは、何もないような……?)

     僕の思い込みでなく、僕と虎徹さんは親密な関係だ。相棒であるのはもちろん、恋愛という意味でもだ。僕はあまりそういうお付き合いに耐性がないので、若干覚束ないかもしれないし、加減もよくわからないのだけれど、間違いない。お互いに気持ちを伝え合った『大人のお付き合い』だ。
     ――別に、記念日ごとにお洒落なレストランや夜景の美しいホテルでの甘い時間を希望するなんてことはない、けれど、も。
    (なにか一言、きちんと言ってしかるべきじゃないか……!?)
     楓ちゃんからのおつかいを果たしたら、それでおしまい?
     のほほんとした顔でパソコンの電源を入れている虎徹さんに、若干ムッとしてしまった。この日のことを忘れていた自分は、都合よく棚に上げて。

     午後には出動があったものの、不幸中の幸いで大きな被害も出ず、ヒーローたちは揃ってジムで顔を合わせることができた。年少組は、まだ予定の時間にならないうちからソワソワしていて、トレーニングに身が入らないようだ。
    「バーナビーさん、今年はね、僕たちも少し遅くまで参加していいって!」
    「ハロウィン込みなんだからって、パオリンがごねるから……」
    「だって去年はできなかったんだもん、いいじゃない!」
     賑やかな声に押されるように早めに始まった誕生祝いは、なんと女性3人による手づくりケーキが披露され、『窃盗団』とは違ったサプライズになった。
     夜にはそのままレストランに移動し、さらに大人達はもはやただの酔っ払いとなって飲み会へとなだれ込んだ。めずらしくスカイハイさんもかなり飲んでいて、もしも今PDAが鳴ったとしたら、すべてのポイントを先に帰った年少組に献上することになるだろう。
    「もうお前の誕生日だとか、ただの口実だなぁ」
     バイソンさんのその一言が、僕は嬉しかった。特別扱いされているわけでも、可哀相がられているわけでもない、ただ普通に『仲間の誕生日』として祝ってもらったような気がしたから。

     さすがに全員で朝まで飲み明かすことが出来るような立場ではなく、早めに店を出た。
     あらためて僕の誕生日だったことを思い出した面々に肩や背中を叩かれながら(もしくは熱烈に抱きしめられながら)HAPPY BIRTHDAYの言葉をもらい、ちょっと覚束ない足取りで帰っていく彼らを見送った。
    「――で?」
     ネオン鮮やかな夜の雑踏に残ったのは、僕と虎徹さんだけだ。
    「で、って何ですか。むしろこちらのセリフですけど」
    「これからどーすんの。帰るなら送るけど?」
     送るといっても、僕も虎徹さんも飲酒していて足がないので、タクシーを拾うしかないのだが。
    「少し寄りたいところがあるので……」
    「俺もついていって平気?」
    「いいですけど、外だから寒いですよ?」
     どこだ?と問いたげな顔。
    「両親の墓です」

     タクシーを待たせて、真っ暗な墓地を懐中電灯の明かりを頼りに進む。
    「懐中電灯とか準備いいな、お前」
    「今日来られるかはわからなかったんですけど、できたら来たいと思っていましたから」
     実は来たのは去年のクリスマス以来だ。なんとなく区切りがつくまで、と思っていたらそろそろ季節が一巡りしてしまいそうで、今日来ようと思い立った。
    「僕が生まれたことを一番喜んでくれたであろう人達に、僕が今、自分で望んだ道を歩けていることを報告したくて」
     あの日雪に埋もれていた両親の墓が、懐中電灯のひかりに照らされて闇のなかに浮かび上がっている。懐中電灯のスイッチを切れば、シュテルンビルト中心地の明かりが遠く輝くだけの暗闇になって、隣の虎徹さんの表情もよくわからない。
    「結局、僕がやりたいことの背中を押してくれたのも……両親との思い出でした」
     ヒーローとして誰かを守れるような人間になりたいと願って、そしてもう一度虎徹さんの隣に立つことができた。もしかしたら無かったかもしれないこんな未来を、両親の残した思いがくれたのだ。
    「そうだなぁ。俺もお前の親御さんに、すげぇ感謝してるよ。あの日バニーがヒーローに戻ってきたのもだけど――お前をこの世に生んでくれて、ありがとうございますって」
     暖かくて優しい声だけが聞こえてきて、僕はなんだか胸が詰まるようだった。
    「虎徹さん……」
     その時急に、電子音が墓地に響き渡った。一瞬PDAの呼出しかと思ったが、虎徹さんの携帯電話だったようだ。慌てて引っ張り出してボタンを押すと、音が止んで静寂が戻る。
    「おし、そろそろ日が変わるぞ」
     ガッと両肩を掴まれ、暗闇の中でも表情がわかるほど近くまで顔を寄せられた。虎徹さんのアンバーの瞳が、遠い光を反射しているみたいに明るい。
    「バニー、誕生日おめでとう!てか生まれて来てくれてありがとな!……ッしゃ、これで今年の誕生日に聞く最後のHAPPY BIRTHDAYだろ!」
     少し照れているのか、早口でたたき付けるような『おめでとう』だった。
     ――なんだ、そんなことを企んでいたのか。
    「だから朝から、不自然にお祝い言ってくれなかったんですか?」
    「や、朝バニーが誕生日だって気づいてなかったみたいだったから、つまり楓が一番最初に伝えたんだなぁと思ってさぁ。なんか俺もそういうのがいいかなーって」
     娘に張り合ってだなんて子供のようで、虎徹さんらしくて、掴まれた両肩が震えるほど笑いがこみあげてきた。
    「なんだよ、笑ってんなよ!」
     出動がないかとか、飲み会終わるかなとか、一日中ヒヤヒヤした!アラームまで鳴らしたし!と開き直って主張するから、余計に笑いが止まらない。
    「嬉しいんですよ。だって一日中考えててくれたんでしょ」
    「んー、まぁな。急に思いついたから……」
     虎徹さんの手が肩から撫でるように背中に回って、僕も同じように虎徹さんの体をゆるく抱くと、お互いの体温で暖かかった。
     それでも寒いのか、それともだんだん照れ臭くなって来たのか(たぶん後者だろう)、近くで見る虎徹さんの頬が少し赤い気がする。
    「けどさ、いつか来るつもりだったけど、バニーの親御さんのお墓にも……来れてよかったよ」
     何故と目線で尋ねると、ますます顔全体が赤くなって、虎徹さんが目をそらす。
    「だってよ、ご両親にご挨拶とかアレだろ……!『息子さんを僕にください』だろ!」
    「は……ハァ!?なに言ってるんですか!???」
     思わずがばりと上体を反らしてしまった。
     息子さんを?ください?
     それじゃまるで。
     いよいよ真っ赤になった虎徹さんは、俯いてしまったが、言葉は途切れなかった。
    「俺は、俺はさぁ。……もう決めたからさ、バニー。もうこれから先、ヒーローでもヒーローじゃなくても、ずっと一緒にいたいし、毎年誕生日にはおめでとうって言いたいんだ」
     お前は?といって顔をあげ僕を見た虎徹さんは、びっくりした顔に、それから少し痛いみたいな笑顔になって、両手で僕の髪を乱暴にかきまぜた。
    「だから俺は、お前のお父さんとお母さんに、お前を俺にくださいってお願いして、お前にも俺とずっと一緒にいてくださいって言いたかったの」
     僕はもう――髪をぐしゃぐしゃにされたことに抗議もできないくらいに涙がぼろぼろ零れてきていて、言葉も出なくって、嗚咽を漏らしながら馬鹿みたいに頷くしかできなかった。

    「ああ、緊張した!」
     ハンカチで僕の顔をぐいぐい拭ってから、虎徹さんは大仰にため息をついた。
    「誕生日祝うだけのはずだったんだけど、つい言っちまった」
    「ついなんですか?」
    「前から考えてたからつい出てきちゃったの!」
     虎徹さんは、友恵さんと結婚をして、楓ちゃんという子供を授かって――つまり人生を分かち合うという約束をしたことがある人だ。その重みを知っている人だ。だから、僕と僕の両親にそういう約束をくれたというのがすごく嬉しい。
     同じくらい一緒にいたいんだと言ってくれたんだ。
     ずっとそんな風に考えていてくれたんだ。
    「なんだか……悔しいです」
    「え、ここで悔しいとかになっちゃうの?!」
     タクシーも待たせていることだしと、両親にまた来ることを約束して来た道を戻り始める。
     帰り道は、なんとなく離れがたくて手をつないだまま、虎徹さんが懐中電灯を持ってくれた。僕は繋いでいないほうの手でハンカチを握り締め、しつこく流れてくる涙に辟易しながらだ。これ、タクシーにたどり着くまでに止まるんだろうか。
    「だって僕も虎徹さんにプロポーズしたかった……」
     こんなに嬉しいことなら、僕からも虎徹さんに贈りたかった。虎徹さんを喜ばせてみたかったな。
    「いいんだよ、だって今日は……もう昨日か。バニーの誕生日なんだからさ、俺がお前にあげたかったの!」
    「だったら虎徹さんの誕生日に僕からしようかな……」
    「そういうもんなの、これって?」

     あの時、僕の復讐に彩られた20年が終わった時、僕は何も持っていないし、やりたいことも何もないと思ってずいぶんショックを受けたものだった。何か理由があってしなくてはならないことしか、持っていなかったんだと。
     けれど、僕は今たくさんの望みがあって、あれもやりたい、これもやりたいと思える。
     楓ちゃんがくれたカードに返事も書きたいし、ヒーロー仲間たちに何かお礼にお菓子でも差し入れしたいし、そして何よりヒーローとして誰かを守っていきたい。
     僕がそんな風に思えるようになったのは、両親の思い出と、やっぱり虎徹さんのおかげだ。
     僕は、虎徹さんと一緒にいたい。
     虎徹さんも同じ風に思ってくれるなら、こんなに嬉しい事はない。

     街灯と、その下で待つタクシーが見えてきた。
    「虎徹さん」
    「んー?」
     足を止めた僕の呼びかけに、一歩先へ進んだ虎徹さんが振り返る。
     妙に力が抜けて油断した顔の虎徹さんの唇に、ちゅ、と小さく音を立てて口付けた。
     ちょっとおさまりかけていた虎徹さんの顔が、またブワッと赤くなってしまって可愛い。キスなんて、いつもしてることなのにな。
    「おかえしです」
     いつも僕の一番欲しいものをくれる、一番大好きな人に。
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    DONEバニーの誕生日おめでとう話です。遅れてきたおめでとう…。やっぱりバニーをでろでろに甘やかしたいだけの人ですね!
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    「楓ちゃんから?」
     何だろう……と思いながら受け取ると、それがわかったのか呆れたような声で答えが帰ってきた。
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     封筒から出てきたのは、楓ちゃんからのバースディカードだった。小さくちぎった紙で描かれたバースディケーキ。かわいらしい手書きの文字で、『HAPPY BIRTHDAY』と記されている。
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