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    うたこ

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    うたこ

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    異層の魔法使いたちと黒猫のカーニバル展示その1。
    アシュタルとアリオテスのお話です。2021サマコレ後らへん。

    不磨の環 イスルギの依頼を受けて商隊の護衛をしていたアシュタルが戻ってきたと聞いて、ラド家の屋敷に向かうと、ちょうどルミアも同じようにやってきた所だった。
    「護衛が必要な連中とは思えないけどな」
    「そういうんじゃないと思う」
     ルミアは持ってきた菓子を並べ、アシュタルが土産に持たされたという遠い国の茶を淹れる。道中で一緒になったというセリアルと共にアシュタルはのんびり荷ほどきをしていた。
    「帰ってきて早々なんなんだよ、おまえら領主様の勉強してる最中だろう」
     とアリオテスもルミアも文句を言われたが二人ともそんな言葉を真に受けるほどアシュタルとの付き合いは短くない。アシュタルは一人を苦痛を感じる人間では無いけれど、自分達の来訪を喜ばないほど薄情でもない。
    「見て。お花」
     ルミアがティーポットの蓋を開けて中を見るように促す。湯の中に、茶葉を纏った一輪の花が咲いていた。
     いつも無表情な娘だけれど、声には少し表情がある。嬉しそうだ。
    「淹れるとお花が咲くお茶なんだって。高級品」
     そんなかわいらしいものをあの色気も素っ気もない男に土産に渡すか?
    「たぶん、イスルギのお礼。護衛頼んだのも、そう」
    「仕事の依頼が?」
    「うん。誰だって戦争は嫌」
     商隊に扮したイスルギ達が先日ケルド大陸を訪れたのは仇討ちのため。結局アシュタルが血を流さずにそれを平穏に収めたため、何も事件は起こらなかった。彼女達に謝礼は出すので隣の国までの護衛をしてくれないかと頼まれて、数日間似非商隊の護衛としてアシュタルは一緒に旅をしてきたのだ。
    「商隊の中にセキリュウヒの焼き物の専門家がいたの」
     戦士ばかりの部隊では商隊でないことなどバレバレになってしまうので、イスルギ達には本物の商人も同行していた。彼らにとっても一流の戦士と一緒なら安心して遠方に行くことができるまたとない機会だ。
    「その専門家に教えを請うためにアシュタルは、一緒に行ったのか」
     こくりとルミアが頷く。セキリュウヒの焼き物は美しく、人気が高い。アシュタルは好んで陶芸をしているが、その腕はまだまだ未熟だ。それでギリギリ食い扶持が稼げているのは剣聖が作った焼き物、という付加価値のせいだとアリオテスは思っている。皿にしても茶碗にしても、アシュタルが作ったものは不格好で素人臭さが抜けていない。ぶっちゃけ商品としての価値はあまりない。
    「あの程度の陶芸の腕で?」
    「アリオテスが言うことじゃない」
    「…………」
     アリオテスがアシュタルに剣を習おうと思ったのは一番腕の立つ剣士だったからだ。父親の仇でもあるから、すぐ近くに居れば仇討ちの機会があるかもしれないという気持ちも無くなかった。とはいえ、多少剣の心得がある程度の自分が、当時既に「怪物」の異名を取る剣士に弟子にしろと転がり込んだのは事実。
    「でも、結果的には正解だったろ」
    「結果論」
     ルミアがアシュタル作のちょっと歪んだカップにお茶を注ぐ。それをアリオテスがトレイに乗せる。ここに出入りしてからそんな雑用も自然とこなすようになった。家に居れば家臣が全部やってくれるが、案外こういった仕事がここでは楽しかったりもする。

     二人が茶と菓子を持ってアシュタル後セリアルがいる部屋に入ると既に二人はくつろいでいた。護衛に出る時も持っていったのは革袋一つに剣一本だから、片付けはすぐに終わったのだろう。今、アシュタルが手にしているのはミツィオラの剣だ。慣れた手つきでその手入れをしている。
    「剣を抜くような場面でもあったのか?」
     テーブルの上に持ってきた茶を置いて、アシュタルの隣の席に座る。
     いくら陶芸の授業が主目的だったとはいえ護衛として付いていった以上、野盗に襲われたときにはアシュタルも剣を抜かなくてはいけない。ただの商人達だと思って襲った連中がいたとしたらご愁傷様、だ。
    「いや。何も無かった。それに、こいつに血は見せねえよ。港にも立ち寄ったからな、念のためだ」
     錆止めのための作業だろう。オイルを塗って、革で磨く。他の剣に対しては無表情でその作業を行うアシュタルもこの剣だけは別だ。
    「こいつが生きてる間はあちこち出かけられるような状況じゃなかったからな。隣国に行くなら連れて行ってやろうと思っただけだ」
     その剣を通して死界にいるであろうミツィオラに気持ちが届くと思っているようだ。手入れも丁寧に行うし、時折話かけてもいる。
     不格好なカップを手に取って香りを楽しんでからセリアルが茶に口をつける。
    「良くも悪くも、お前はミツィオラに捕らわれているな」
    「なんだそりゃ」
     アシュタルは曇り一つなく、剣を磨き上げて大切そうに鞘に収める。
    「良くも悪くもとは言ったがミツィオラが側にいる限り悪さはしないだろうから、プラスマイナスすればプラスの方だろう」
    「悪さって……ガキじゃあるまいし。それに、もう傭兵に戻ろうなんざ、思ってねえよ。だいたい仕事がねえだろ」
     アシュタルも剣を傍らに置き、カップを手に取って一口飲む。せっかくルミアが丁寧に淹れてくれたのに、味も香りもわかっていなさそうな飲み方だ。
    「それに、あいつはラド家の復興を目指してたらしいが、俺は今さら領主様になろうって気も無え。そもそも家臣の面倒を見るなんてやってられるか。向いてねえよ。こいつらの面倒見ているだけでいっぱいいっぱいだ」
    「最近は面倒みてねえだろ。師匠との剣の稽古の回数、かなり減ってるし」
     不満な気持ちが声に出た。アシュタルが面倒くさがるだけでなく、アリオテスの方も領主業もあるのでなかなか時間がとれないというのもある。
    「そういえばアシュタルは半人前の陶芸職人を目指してるんだったな」
    「目指してねえよ、中途半端すぎんだろ。目指してんのは一流だ」
     壺作りの方は今まで何年もやってきてそれほど上達していると思えないんだよな、とカップを手に取ってアリオテスもお茶を飲む。異国の花の香りがした。
     向いてるか向いてないを考えたら、アシュタルはやっぱり剣の道を行くのが向いているのだと思う。独学の剣術で、戦場で腕を磨いて剣聖まで上りつめたのだから。彼に師匠はいない。陶芸の方はいろいろ教えてもらっているのに、未だに「味がある」が褒め言葉になってしまっている。
     今、ミツィオラが居たらなんと言うだろう。
     アシュタルの脇に置かれた剣を見ながらアリオテスは、その会ったことのない女性のことを考える。ルミアの母親だから同じような考えをするだろうか。ルミアがもっと大人になったとしたら言いそうな言葉とはなんだろう。
     きっと剣の腕を磨けとは言わない。
     血と泥にまみれて猛獣同様の傭兵だったアシュタルを戦から引き離したのがミツィオラだ。ルミアも戦いを厭う。
    「アシュタルがやりたいことをやるのが一番」
     小さな口で菓子をかじりながら、ルミアが言った。
     戦争が終わって、覇眼から解放されて、ルミアはスア家の跡を継ぎ領主となる勉強を始めた。ミツィオラからルミアを預かって、アシュタルがやるべきこととして定めてきたことは、もう全部終わったようにも思える。
    「半人前の陶芸職人か?」
    「一流だっつってんだろ」
     セリアルと軽口を叩いてから、アシュタルがそっと剣の頭を撫でる。
    「そうさな。あんまり頭使うのは得意じゃねえから、これからのことなんて考えてもしょうがないだろ。その時その時でやりたいことをやっていきゃいい」
    「アシュタル、お前、まるで子育てが終わった父親のような顔をしているぞ」
    「そんな歳じゃねえよ」
     今でもやっぱり快くは思っていないようだが、アリオテスがアシュタルの家に通うことを家臣達も認めてもらっている。良い気晴らしになると思っているようだ。実際ここでは気を張ったりしない。やっぱり、ここは落ち着く。昔から住んでいる自分の家みたいに。
     一緒にいたのはほんの数年なのに。
     離れたくないなと思う。これからもずっと彼には自分の師匠でいて欲しい。アシュタルはとっとと独り立ちしてくれと思っているだろうけれど。
     アシュタルが常に側に置き、話しかけているあの剣はこれからもずっと彼と一緒にいるのだろうと思うと、少し羨ましくなった。



     領主として隣国の話を聞きたい、とアシュタルやセリアルに頼んでルミアと二人夜更けまで旅の話を聞き、結局ラドの屋敷に泊まった。もう、この家は勝手知ったる我が家みたいなものだ。今でも自分の部屋がこの家にあるのが嬉しい。あの頃と変わらないままだ。アシュタルは人の部屋を掃除をしてくれるほどマメでもないので、時々来ないと酷いことにはなってしまう。要するにただ放ってあるだけなのだが、それでもいつでも来て良いと言われているようで嬉しい。
     朝起きてから窓を開け、外を見ると木刀を振っているアシュタルが見えた。戦争が終わっても、鍛錬をしている姿は何度も見ている。冥王カノンと戦うために死に物狂いで剣を握っていた頃とは違って、今のアシュタルは剣を握る時に、静謐な表情をしている。精神統一、みたいなものだろうか。
     もしかしたらちょっと相手をしてもらえるかも、と寝間着を着替えて慌てて外に出て行く。
    「どうかしたか、チビ」
    「もうチビじゃねえ」
     素の自分で話せる心地よさを感じながら、同じく鍛錬用の木刀を手に取って駆け寄る。
    「師匠、相手してくれよ」
     悪態をつかれるかな、と思ったがアシュタルはちょっと笑って「仕方ねえな」と呟いて、木刀の切先をアリオテスに向けた。挨拶なんてない。騎士道なんてそっちのけの、無骨で無作法なアシュタルの剣技。
     カン、と打ち合わせてから切り込む。久しぶりだったけれど、慣れ親しんだ開始の合図に自然に身体が動いて気分が高揚する。
     お互い動きを知り尽くした同士での打ち合いだが、腕はアシュタルの方がまだずっと上だ。どれほど鋭く踏み込めたと思っても難なく避けられる。特別上手くいった時だけは、アシュタルも避けきれず、木刀でアリオテスの刀を受ける。
     息が切れるほど集中して何度も打ち込んだのに、アシュタルの方はけろっとしていて、最後に手首を捻っただけで簡単にアリオテスの木刀を弾き飛ばした。
    「くそ……」
    「俺に勝とうなんて百年早えよ」
     アシュタルは弟子相手に大人げなく勝ち誇ってから、ぽんと使い込まれた水筒を放ってくる。
    「なんか、懐かしいな。こういうやりとり」
    「そんな昔の話じゃねえだろ、ついこの間のことじゃねえか」
    「歳をとると時間の進み方が早くなるってホントなんだな」
    「うっせぇ」
     こつん、と握りこぶしが優しく額にあてられた。
     気安くて、馴染んだ仕草。
    「あんたが剣を捨てなくて良かった」
     気を遣わなくて良い相手に、気が緩んだのかもしれない。年上だけれど、遠慮をしなくていい相手にポロリと口から本音が漏れた。
     別に戦争がしたいわけじゃない。そのために強くなりたいんじゃない。ただ、無心で剣を振るうのが楽しいだけ。
    「ルミアや……ミツィオラだったら、きっともう剣を握らなくて良いって言うだろうけどさ」
     だけど、アリオテスはこんな時間が好きだ。この男は親の仇の家のはずなのに、ここには楽しい思い出がたくさんある。領主だとか盟主だとか、そういう肩書きをとっぱらって、ただの一人の少年として居られるのはアシュタルやルミアの側くらいだ。もう、そんな甘えたことを言っていられる立場じゃない、とも思うこともあるけど。
     だけど、この場所を失うのは、すごく寂しい。
    「あいつらなら言うだろうな」
     想像するようにアシュタルが遠くを見つめて、眼を細める。
    「つっても、今のところ、俺が一人前なのは剣だけだしな。流石に自分の壺が一流だとは思っちゃいねえよ。いざとなりゃ、また剣で喰ってくしかねえ。それに、お前に剣を教える相手が居なくなっちまうだろうが。少なくても、家臣連中の中に今のお前の相手できるようなヤツはもういねえ。なんつっても、剣聖の弟子だからな」
     ぽん、と幼子にするようにアシュタルがアリオテスの頭に手を乗せた。子供扱いされるのは嫌だと言いつつ、優しく触れられるのは心地よかった。もちろん、努力を認めてもらえることも。
    「俺を越えるんだろ。だったら俺が相手するしかねえじゃねえか」
     穏やかに笑って、アシュタルが自分の水筒から、一口水を飲む。
    「戦争が終わっただけで、平和な世の中になりましたってわけでもねえし、お前には、父親の作った負債がある。鍛えておいて損はねえ」
     別にそれを嘆くわけでも、責めるわけでもなくアシュタルは今日の天気の話でもするように自然な声音で言った。事実を事実として言っただけだろう。持ち前の戦闘センスで少年兵の頃から幾多の敵兵を屠ってきた男だ。戦争にそういうことは付き物だとよく知っている。
     ゲー家の裏であれこれあったとは言っても、そんなことは多くの民は知らない。
     アリオテスの父が領民に慕われていたミツィオラを死に至らしめ、カンナブルを崩壊させた。他にも幾多の非道を行った。恨んでいる人間は多い。ゲー家の領地もようやく人が戻り始めてはいるが、戦争の最中スア家に身を寄せていた者は肩身の狭い思いをしていたと聞いている。ミツィオラを直接手に掛けたのはアシュタルだが、娘のルミアがアシュタルを頼りにしていたり、イリシオスを討ったことで、むしろスア家の人間からはアシュタルは英雄として見られているようで、やはり恨み辛みはゲー家に向く。
    「そのことなんだけど」
     アシュタルはまつりごとに絡むことを嫌ってはいるが、一応話をしておこうかと口を開いたところで、ルミアの呼ぶ声が聞こえた。朝食ができたらしい。
     自分一人で話すより、ルミアと話した方がいいかもしれない。
    「朝食の席で話す」
    「そうだな。ルミアを待たせてスープが冷めちまったらまた怒られる」
     世界一の剣の使い手とも言われる剣聖が随分年下の女の子を怖がっているのを見て笑ったら、睨まれた。

     朝食の席で出たアシュタルとセリアルが国境近くの港で手にれたというパンは、特別な小麦粉を使っているとかで、食べたことのない味だった。この辺りで流通しているものよりずっと美味しい。
    「新しい品種とかなんとか言っていたな」
    「製粉の仕方も違うそうだし、大きな石で作られた窯で焼いているとのことだ。港にはいろんな国の品が溢れていて楽しかったぞ」
     こんがり焼かれた外側とふわふわとした中身で、とにかく戦が長かったせいで日持ちを優先していた固いケルド島のパンとは大違いだ。あまり表情のないルミアですら微笑みを浮かべながら噛みしめている
     争いがなくなったおかげで徐々に他の大陸とも交流が生まれ、新しいものがどんどん入ってくるようになった。うちの領地でも小麦のような強い植物なら育つかも知れない、と思うと楽しみが広がる。しばらくしたら、こんなパンが焼けるようになるかもしれない。屋敷に戻ったらメンジャル達に話をしてみよう。
     食べ物が美味しいのは良いことだ。
     こういう話題の中だと話しやすいな、とアリオテスは小さく息を吐く。
    「さっきの話なんだけど」
     言い出すと、アシュタルとセリアルがこちらに視線を向けた。言い出しだけで、何の話か分かったのかルミアがきゅっと口を結ぶ。
    「ゲー家もやっとまともに畑ができるようになってきたんだ。今年はそれなりに自分達で食い扶持を稼ぐことができた。全部とはとても言えないけど。ずっと戦争の中心の家だったから鍛冶に関してはスア家より大分進んでいたってのもあって、助けてもらっている間、お礼に鉄を強くする方法や農具の効率的な作り方を教えたり、そういうことをしていたらしい」
    「だから、共同で収穫祭をすることにしたの」
     アリオテスの言葉を引き取ってルミアが小さい声ながら、はっきりと言う。それを見てセリアルの目元が緩む。
    「成功すれば、民も少しは安心すると思うんだ」
     民にはなんの責任もないのにゲー家に属する者というだけで白い目で見る人達もいる。カンナブル中の人間に恨まれてもしかたないことを父イリシオスはした。だから彼らを守るのは現在の領主であるアリオテスの役目だ。
     遺恨のあるスア家と友好関係を築いていると広く見せることができれば、彼らの気も楽になるだろうし、世間の目も多少穏やかになる。
    「おまえらの発案か?」
     アシュタルに聞かれて、アリオテスはルミアとこくりと頷いた。
    「細かいことまではできないから家臣達にほとんどやってもらうことになるけど。収穫祭っていっても俺達には何をしたらいいか分からないし」
     アリオテスは物心ついた時には戦火を避けるために家族から引き離されていた。争いを厭うスア家の嫡女とはいえ、ルミアも祭りなんてのんびりしたものとはほど遠い人生を送っている。
    「かまわん。部下を信頼して任せることができるのは、当主の度量があるからだ」
     セリアルが二人に笑いかける。少し悪戯めいた表情が浮かんでいた。
    「せっかくだ。リラにも助力を求めてみた方がいい。規模は小さくても良い。復興の中心となっているイレ家やロア家も協力しているとわかれば宣伝になる。まだ混乱も続いているし、使えるものは使わなければもったいない」
    「そういうところは、しっかりしてんだな。いつもフラフラしてるように見えて」
    「失敬だな。部下を信頼しない主が、部下の信用を勝ち取れるとでも思っているのか?」
    「里を放りだして放浪してるだけだろ」
     笑い声をあげるセリアルに呆れたようなため息をつきながら、それでもアシュタルも、
    「まぁ、好きなやつに頼られりゃ気分が良いってのはわかるがな」
     とらしくない台詞を口にした。ちらりと見た先は、ミツィオラの剣だ。
     優しいようで、悲しむような、そんな顔で。
     滅多に見せない切なげな表情にちりちりと胸の内に焼けるような痛みが走った。
     しばらく剣を見ていたアシュタルが、ふっと何かに気付いたように顔をしかめる。
    「俺も良い考えだとは思うが、ダダをこねるヤツも出るだろうな」
     スア家の中には先代領主の仇と馴れ合えというのか、という反発の声が上がっているのは事実だ。
     しかし、アリオテスとしてはこれは領主としてやって損は無いと思っている。
    「反発があったとしても、せっかく戦争が終わったのに今までの恨みで報復しあっていたら、何も変わらないのと一緒だろう」
     目の前で、いがみ合っていたイレ家のリヴェータとロア家のルドヴィカが手をとりあって新しいカンナブルを作り上げているのだ。同じ領主としてただ見ているだけ、というのは歯がゆい。
     親父のせいで苦しんでいる民がいるならなおさらだ。
    「わかってるって。テメーが、んなことで怖じ気づくってんならとっくに破門にしてるよ」
     アシュタルの言葉にほっと息をつく。反対されたとしても止めようなどという気はさらさら無かったが、家族同然の彼に肯定してもらえると、安心する。
    「ただ……」
     アシュタルがきゅっと眉を寄せる。
    「口でダダをこねてる連中はたいしたことねえよ。ミツィオラが馬鹿に政を任せていたはずがねえから、スア家の政を取り仕切っている連中なら相手が議論で向かってくる以上、なんとでもできんだろ」
    「うん、みんな頼りになる」
     ルミアが頷く。
    「口で勝てなきゃ手が出てくる。そういう連中は自分じゃなくてゴロツキに解決を頼むのが世の常だ」
     戦争が長く続いた。だから、物事の解決は力尽くで、という考え方が染みついている人間もケルド島には多い。
    「問題は、今うろついているゴロツキがただのゴロツキじゃねえってことだ」
    「ただのゴロツキじゃない?」
     首を傾げると、アシュタルが口をへの字に曲げた。
    「戦争が終わったばっかだからな。烏合の衆だったら簡単に蹴散らせるが、戦闘のプロはそうはいかねえ。戦場を渡り歩いた傭兵が職を失ってその辺をゴロついてる。面倒くせえぞ。そうしなければ生き残っていけねえから即席での連携もこなせる。覚悟も度胸も経験もある。恨み辛みで動くわけじゃねえから、冷静で隙もねえ。一対一ならなんとかなる相手でもそれが集団となると厄介だ」
     アシュタル自身、戦場では見ず知らずの相手と連携をとって、敵とやりあっていたんだろうことは苦々しい顔を見ればわかる。そう言う連中を相手にしてきたことも。彼は、幼い頃から底辺の傭兵として戦に身を投じてここまで生き残ってきた怪物だ。
    「いくらでも仕事ならあるのに」
     ルミアの言葉にアシュタルはさらに渋い顔になる。
    「このあいだの護衛で会ったが、戦場で傭兵やってたヤツが他の商隊の護衛をしていたな。あちこち見て回れて楽しいっつってたからアイツは戦争が終わったことに感謝してんだろう。だから、剣しか使えなくても生きていく方法はいくらでもあるんだが……」
     ほんのりと、唇に自虐的な笑みを浮かべる。
    「残念ながら戦でしか喰ってけねえって思い込んでるヤツもいるってこった」
     きっとミツィオラと出会わなければ自分がそうだった。
     アシュタルが浮かべたのは、そういう笑みだった。



     襲撃は思ったよりも早かった。
     ゲー家の家臣は他に比べれば極端に少ない。家が崩壊していたのだから仕方ないがたった三十、それだけだ。領地には徐々に人が戻ってきているから、その領民を守らなければいけないのに人手が足りない。かといって新しく雇い入れた者に充分な報酬を払える程、裕福でもない。けれど先代が恨みを買ってしまっているから、腕っぷしは必要だ。
     まだまだ自分自身が強くなる必要がある、だからアリオテスはアシュタルに稽古をつけてもらうために今朝も馬を走らせていた。
     一人で。
     アシュタルの屋敷が小さく見えてきたところで、不穏な気配を感じた。戦場で嗅いだのと同じ匂いがする。このまま全力で突っ切っていくことも考えたが、屋敷にはまだルミアがいる。巻き込むわけにはいかない。馬を止めると物陰から十二人の男が一斉に現れた。きっとアリオテスの考えを読んでいたのだろう。襲撃者もアシュタルを相手取りたくはないだろうが、屋敷に火を放たれたりしたら大事だ。
     全員、小柄なアリオテスよりも優れた体躯をしている。顔に大きな傷跡がある者もいる。指が何本か無い者、耳が片方削げている者、大きな火傷の跡が腕を覆っている者も。アシュタルの言っていた職を失った傭兵達だというのは発する威圧感ですぐにわかった。アリオテスだって何度も戦場に立っている。
     確かに手強いかもしれない。その辺のチンピラとは違う。彼らが握っている剣はどれも人の血を吸ったことのあるもので、鈍い光を放っている。人間を骨ごと叩き切る、重い装飾のない無骨な剣。
     傭兵達は地面にいるし、馬上の上からの方が優位はとれる。だが、それが戦歴の猛者に通用するか? こいつらは当然対処法なんていくらも知っている。
     周囲を伺うが火器の用意はないようだ。発砲すれば大きな音が出るし、火器は貴重な品だ。正式な軍人でもなければ、手に入れるのも難しければ使えば当然足が付く。
    「ゲー家に恨みがあるわけじゃないんだが、俺らは傭兵でね」
     一人が剣を握ると、合わせるように全員が剣を上げた。
     周囲は荒野だ。見えるのはアシュタルの屋敷だけ。
    「戦争は終わった。今のカンナブルに兵は不要だ」
     馬上から告げると男達が低いうなり声のような笑い声をあげた。
    「依頼主にもらった金額の分は働かせてもらう。信用問題に関わるからな。お前を殺らなければ、これからの仕事に響く。悪く思うなよ、坊主」
     周囲を取り囲む男達にとっては、戦争はまだ終わっていないのだ。
     ここで自分の首が落ちればメンジャル達は黙っていないだろう。戦争にまでは発展しないかもしれないが、ゲー家の領地の復興は遠のく。協力してくれているスア家の人達にも迷惑はかけたくない。領民達は戦争中も手を取り合って生きてきたのに。
     愛用している双剣を抜く。愛馬が戦に慣れていて良かった。周囲を囲まれても大人しくしていてくれる。ここで暴れられたら万事休す、アリオテスだけでは彼ら全員を相手取ることはできない。背後にも気を配りながらにらみ合う。
     勝算はある。男達には見えないが、馬の上にいて視界が高い分、自分には見えているものがあった。
     視界の端、こちらに向かってくる影。もう少しで、間合いに入る。安堵しながら肩の力を抜く。落ち着いていたつもりだったが、かなり緊張していたようで身体の強ばりが解けたのがわかった。
    「人んちの目の前で、時代遅れの茶番してんじゃねえよ!」
     聞き慣れた怒鳴り声と共に、アリオテスの死角から愛馬に切りつけようとしていた男が吹き飛ぶ。
     伸び放題に伸びた雑草に隠れながら迂回をしてアリオテスの後ろに回り込んで来たアシュタルが蹴り飛ばしたせいだ。
    「怪物……」
     呟きが聞こえた。
    「ほぉ。どっかの戦場で会ったことがあったか?」
     アシュタルが剣を抜く。握っているのは、ミツィオラの剣だ。それを、あっさり鞘から抜いた。
    「いいのか、その剣?」
    「手入れ中だったんだよ、仕方ねえだろ。だいたい、あいつにガキが殺されるような無様、見せられるかよ」
     ミツィオラの剣を手入れしている最中窓の外を見て、そのまま駆けてきたようだ。屋敷からはかなり距離がある。それでも息一つあがっていない。
     アシュタルの登場で男達の纏う空気ががらりと緊張感や恐怖を帯びたものと入れ替わった。それでも戦場で敵として相まみえたなら、生き残ることは不可能とさえ言われた怪物と対峙して、男達の誰一人戦意を失った様子はない。
    「貴様も傭兵ならわかるだろう、報酬の分は働かせてもらう」
     アシュタルが剣をだらりと下げた状態で相手を睨み付ける。
    「残念ながら、俺はもう傭兵じゃなくてな」
     兵の輪の中に飛び込んできたアシュタルに合わせてアリオテスが馬から下りる。戦場で指揮をとるならともかく、今はこの方がやりやすい。
    「今の俺は、陶芸家なんでテメーらの信用なんぞ知ったこっちゃねえが」
     まだ陶芸家を名乗れる腕じゃねえだろ、と心でツッコミみながらアシュタルまでの距離を測る。
     やれる。まずはこの包囲を抜けて、アシュタルの隣に立つ。
    「あ?」
     呆れたような声が男達から上がった。本当だったのか、噂には聞いていたが、といった呟きも。その後に失笑が続く。
    「元傭兵として言わせてもらえば、時流を読み間違えるなんぞ傭兵として終わってんぞ、転職しろ、転職」
     アシュタルがゆっくりと剣を持ち上げる。
     隙だらけに見えて、その実どこから斬りかかっても返り討ちに遭う、アシュタル独自の剣術を知らない者はここには居ない。
    「まぁ、傭兵も長いことやってたからな、信用が重要ってのはわかるし、俺も守らなきゃならねえ約束があるんで、悪く思うんじゃねえぞ?」
     ミツィオラと交わした約束だ。ルミアを守るという約束。
    約束そいつを守るには、コイツが必要なんでなッ!」
     怒鳴るように言った、その台詞が合図だった。アリオテスが思い切り愛馬の尻を叩いて「行け!」と叫ぶと大きな嘶きをあげて馬が男達の中に突っ込んで行った。それを避けるために一瞬できた隙にアシュタルに駆け寄る。背中合わせに立っただけでピタリと呼吸が合うのを感じた。
     先日アシュタルが言っていた通り、傭兵達は息を合わせて一斉に斬りかかってくる。アシュタルが剣を大きく振り、アリオテスが両手に持った剣でそれを弾く。
    「背中は任せる」
    「俺が護衛対象じゃないのかよ」
    「剣聖と連携できるヤツ、他にいんのか?」
     笑いを含んだアシュタルの声。
    「世界中探してもいねえよ!」
     ふわっと気分が浮いた。風で舞い上がるように、心が軽くなる。
     敵から殺意が漏れ出して、ピリピリとした空気の中でさえ、唇の端が緩むのがわかった。
     剣を抜いてもアシュタルは敵を切り伏せる気は無いらしい。それは敵側にもすぐに伝わる。
     アシュタルは、人並み外れた身体能力と豪腕で剣を弾き飛ばし、剣の柄を相手の顔にたたき込み横にいる兵の腹を蹴り上げる。死なないが、すぐに身動きが取れない程度の攻撃を的確に決めていく。アリオテスは鼻血は流れた血の内にはいれないことにした。骨の折れる音が聞こえたが気にしない。ミツィオラの剣に血は見せない、とかなんとか言っていた気がするが、ここで手加減できるほど相手は弱くない。
     相手は十人以上で、あちらは手加減無しに斬りかかってくる。殺されることはないと分かっているから、無茶もしてくる。
     戦場では血糊で切れなくなった剣で、力業で相手に叩きつけて攻撃をするなんてこともザラだ。剣術ではそれなりの域に達しているアリオテスでも、少年の域を出たばかり。戦場の猛者達にはどうしたって力負けをする。彼らを上回っているのは、素早さと正確さ。決定打はアシュタルに任せて、サポートに徹した。双剣で敵の剣先はじき返して、相手が防御できる程度の速度で打ち込みアシュタルから引き剥がす。
     敵は誰かが切り込めば誰かが背後に回って、二段、三段の多段攻撃を仕掛けてくる。アシュタルの言っていた付け焼き刃とはいえ、連携してくるから手強いという言葉の意味がよくわかった。アシュタルだって、一人きりなら相手を殺さず勝つことは難しい。
     だけど、こちらは、ずっと一緒に剣の腕を磨いてきた仲だ。
     動きを見なくても、会話をしなくても、視線すら合わせる必要も無くアシュタルがどう動くのか感覚で分かった。
     負けない。負ける気がしない。
     自分の剣は、剣聖アシュタルから学んだ剣だ。
     付け焼き刃の連携なんかで、相手になるわけがなかった。

    「陶芸なんか向いてねえよ。どうやってもあんたは兵隊だろ」
     敵兵のリーダーと思わしきその男はうなり声と共にそんな台詞を吐いた。
     倒れている男の背中をアシュタルが足を乗せる。
    「あぁ?」
     不機嫌そうにアシュタルが柄の悪い返事をしてもう一度、どん、と足で背中を踏みつけると、その男は意識を手放したのか何も言わなくなる。
    「自分が何者なのかなんて、自分が決めることだろうが」
     アシュタルが足を男の背中から下ろして、気を失っても男が放さなかった剣を蹴り飛ばす。
     良くも悪くもミツィオラに捕らわれている、アシュタルのことをセリアルはそう言っていた。実際その通りだろう。アシュタルの隣にはいつも形見の剣がある。決して手放さないし、ミツィオラとの約束を今も大事にしている。戦争が終わった今もルミアを守るためならいくらだって身体を張る。
    「すぐに動けるヤツはいねえだろうが、一応役人に突き出しておくか」
     面倒くさそうに言うものの、なんとなく死者を出すこと無くアリオテスの護衛の任務を終えたアシュタルは満足そうだ。彼らを縛るための縄を取りに戻っていくその背中を追う。
     そうか。
     アシュタルは、アシュタルだ。
     ミツィオラとのことも、アシュタルの中ではそれなりの折り合いがついていて、そしてきっと今の生活をまんざらでも無いと思っている。だから剣を手放さない。剣の稽古をするのも、形見の剣を連れて旅をするのも、壺を作るのも全部アシュタルがしたいこと。
     自分はミツィオラが心の内に居るアシュタルが好きなんだ。
     アシュタルが彼女のことを語る時に、その切ない表情に胸が痛むことがある。だから彼女をうらやむことがある。死者には勝てない。出会った時には既にアシュタルの中にはもう、彼女がいたのだ。
     だけど、ミツィオラに捕らわれていないアシュタルは、自分の知らない人間で、きっと好きにはならなかった。そんな気がする。怪物と呼ばれていた頃のアシュタルなら、敵に囲まれたら、全員を血祭りに上げていただろう。アシュタルは強い。自分が隣に立つことなんて出来なかった。
     俺は、今のアシュタルが好きなんだ。
     ふっと、そのことが腑に落ちた。
     自分はアシュタルの隣に立つことも出来るし、背中を任せられることもできる。これからもずっと、きっと望めば剣の稽古もしてくれる。自分にはこれからがある。アシュタルがミツィオラの剣と共に過ごす時間、自分も一緒に過ごせる。
     アシュタルの隣に並んで「師匠!」と呼ぶと、少しだけ笑みを浮かべてアシュタルがこちらを見た。それはミツィオラの剣に対して見せる表情とは違う。優しいようで、楽しそうな、そんな笑みだった。



     規模は小さいが、ゲー家とスア家の共同でおこなわれた祭りは滞りなく進んでいく。保護者面をして様子を見に来たアシュタルの腰にはミツィオラの剣が下がっている。きっとこの祭りを見せてやるために来たのだろう。娘の成長と、カンナブルの未来を見せて安心させるために。
    「領主様が何やってんだ」
    「せっかくならやりたいことやった方が良いだろ? 師匠も食べて行ってくれよ」
     姉のリラに教わった伝統料理を振る舞うと仕方ねえな、と言いながらアシュタルが皿を受け取る。なにせゲー家は人手が足りない。領主も働かなければスア家に任せきりになってしまう。戦争中だって雑兵として散々駆けずり回ったのだから、下っ端仕事を領主がするのは今さらだ。
    「師匠、また明日から剣の稽古よろしくな」
     心底面倒くさそうな顔をして、それでも渋々アシュタルが頷く。
     戦争がなくなって、平和になって、カンナブルは変わっていく。過ごしやすい方に。良い方に。ここに居る人間のほとんどはそれを望むだろう。
     だけど、この先の未来、剣を握る必要の無い世界になったとしても、それでもこの師弟関係が続いていて欲しい、アリオテスはそう思う。
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    Replies from the creator

    うたこ

    DONEにーちぇさん(@chocogl_n)主催の合同誌に載せていただいた、ディアエンのダンシャロです。
    エンブレムの最後は悲劇的な結末になることが確定しているので、互いを思う二人に幸せな時間がありますようにと思い書きました。書いたのが8月でGAの発表もまだだったので、今開催中のイベントとは雰囲気が異なるかもしれないです。
    インターリフレクション 白く清潔なテーブルの上に置かれたマグカップから、フルーツの香りが漂う湯気がふわっと湧いた。ほのかに異国のスパイスの匂いも後から追いかけてくる。
    「先生、ヴァンショーです。あったまりますよ?」
     この香りは昔、嗅いだことがある。
     何百年も前の風景、ガス灯や石畳の町並みが一瞬だけ脳裏に浮かんだ。へにゃっとした緊張感の無い少年の笑い顔と一緒に。
     懐古趣味なんてらしくねぇなぁ。
     頭に浮かんだ人物と風景を追い払ってマグカップに口を付ける。
     甘い。
     ヴァンショーは葡萄酒に柑橘系の果物とスパイスを加えて煮るのが一般的だが、出されたものには甘いベリーがたっぷりと入っていた。この医療都市にそびえ立つパンデモニウム総合病院には、もちろんしっかり空調が完備されている。真冬の今も建物内に居る限り、さほど寒さは感じない。大昔、隙間風の入り込む部屋で飲んだヴァンショーとはありがたみが随分違う。
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    うたこ

    DONE黒猫男子きょう何食べたい?企画のお話。
    さじゅさんとう゛ぃれさんが出ます。
    たいやき。 飽きませんか? と聞かれて何のことを聞かれているのか分からなかったのは昔の職業のせいだろう。昔はそこそこ真面目にお仕事をしていたから、当たり前だと思っていたのだ。
     そういうもの、だと思って居なければ飽きるかもしれない。張り込みなんて。
     言われてみれば、ほとんどの時間は、動きの無い現場をただ見張っているだけだ。退屈でつまらない仕事だ。
     厄介な資産を回収してこいとルダンに命じられて、面倒そうだけど、仕事だからしょうがない。サボりながらやるかと出向いた先には先客がいた。資産を持っているのは没落貴族の娘だそうで、その資産というのは値の張る宝飾品だそうだ。よくある話だが、家宝の古式ゆかしく豪華なアクセサリーには多くの人の恨み辛みが宿っていた。よって幻想銀行に相応しい資産というわけだ。持ち主を不幸にするとか、取り殺すとかそういうアレ。まだ彼女の家が栄華を誇っていた頃にはその家宝の宝石を巡ってどろどろした争い事がたくさん起こったのだそうだ。そうして沢山の怨念を取り込んだ宝石は意思を持つようになったのか、更なる不幸を呼び始めた。彼女の両親も、突如気の触れた侍女に刺し殺された。
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