雨の日が嫌いだった。服や靴が濡れるのも嫌だったけど、スニーカーが擦れて変な音がするのがどうしようもなく嫌だった。
雨の音も嫌いだった。無遠慮に大きくてそれ以外の音がわからなくなるから、世界でひとりぼっちになった気がするから。
爺ちゃんの葬式の日も雨が降っていた。雨音がうるさくて、バカ弟までいなくなってしまわないか無性に不安になった。手を強く握ったら同じくらい握り返されて少しだけ痛くて、同じくらいほっとした。
はじめて入ったやたらと豪華な部屋で、真っ黒い服を着た大人たちが話していた。詳しいことはわからないけど、爺ちゃんの遺産について話し合っているらしい。湿気と熱気が混ざり合って胸の奥がムカムカしてくる。
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