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    Manatee_1123

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    Manatee_1123

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    気温が下がってきた日の主人と従者の日常

    四季折々「気温、低くなってきたね」
    「はい」
     人は、寒いと服を着たり温かいものを欲したりする。暑いと服を脱いだり冷たいものを欲する。
     影光様には、そういった行動が見られない。
     汗をかいたり指先が冷えたりといった肉体的な変化は伺えるが、暑くとも寒くとも意図して衣類を変えられない。無意識に我慢しているらしく、我慢していたということにすら後から気づく始末。彼のそういった体調管理も私の仕事の一つである。
    「トレンチコートの準備があります。本日はスーツの上からお羽織りください」
    「ん」
     寒い日に着せすぎて暑くなっても、彼は脱がない。エアコンが効きすぎていても、彼は言わない。気づかない。とてもデリケートな存在なのだ。
     誇らしく愛おしい、繊細な人。
     ――ただ一つ。
    「侑臣のコートは?」
    「私は平気です」
    「お前に風邪ひかれると僕が困るの。お前も暖かくするんだよ」
    「……はい。善処いたします」
     影光様は、他人に対してはやけに過敏だ。それが私に向くのならともかく、他の人に向けられるのは虫唾が走る。
     だから、わざとコートを忘れたりして、彼の気を引く私の癖。彼は気づいているだろうか。
    「さ、行くよ。今日は風が強いって霊司郎が言ってたから、ハンドル取られないようにね」
    「貴方を乗せている時に、そんなミスはしません」
    「うん。今日もよろしくね」
    「はい」
     変化していく四季折々、変わらぬ日常がここにある。酷く暑苦しい最高の快楽だ。
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