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    fgo_sawara

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    ケイぐだちゃんワンライ一回目、お題「秘密」

    #ケイぐだ♀

    二人の秘密。「マスター、少しお話が……」
    「あ、わ、開けちゃだめ!」
     まさかこのようなミスをするとは。
     自らを急かしたはずの用事など、頭から消え去ってしまった。
     着替えの最中であったマスターが、慌ててその身を隠す。
     すぐに目を反らし、ここから出ていくべきなのに……目が離せなかった。
    「ご、ごめんね! 汚い、よね……」
    「っ、まさか! そんなはずが、ありません……」
     華奢な身体。白い肌に広がる夥しい傷痕。
     もう消えないのだろう。カルデアの、最先端の技術を用いても。
     細かいものから大きなものまで。最近できたような打ち身の痕は、時間が経てば消えてくれるだろうか。
    「私は……こう言ってはなんですが、好きです」
    「あはは、ありがと……」
     ぽろりと零した言葉に、少女は力なく笑った。
     気を遣っていると思われたのだろう。心外ではあるが、無理もない。
     早く出ていくべきだとわかっている。
     そのはずなのに、気がつけば彼女にゆっくりと歩み寄っていた。
    「せんせ……?」
     蜂蜜色が不安げに揺れる。
     怖がらせたくない。しかし、普段彼女が他の者にするのと同じように、自らのことを愛しんでほしい。
     そっとその手を取り、少しだけ黒ずんだ指先に口付けた。
     ハッと息を呑む音をよそに、傷痕を唇で辿る。
     全ての傷を、こうして慰めたい。全てを愛しているのだと、新しく刻むように。
    「せんせ、だめ……」
    「嫌ですか?」
    「嫌では、ないけど……」
     ならば構わない。
     半ば強引にその身を抱き寄せ、剥き出しの肩に口付けた。
     ふと顔を上げ、涙に潤んだ大きな瞳を覗き込む。
    「痛みは?」
    「古いのは、もうなんともないよ」
    「よかった……」
     痛みがないのなら、ただ愛おしいだけだ。
     鎖骨の辺りを唇でなぞれば、少女は泣き出したいような声を漏らす。
     そんな顔をされたら、やめられなくなるのに。
    「あ、や……」
     泣きそうな声を上げながらも、その身体は抵抗をしなかった。
     それをいいことに、傷の一つ一つに口付けを繰り返す。
     鎖骨、首筋、また肩口に戻って、腕の先へ。
     いつしか、蜂蜜色はとろりと蕩けていた。
    「あっ」
     力の抜けた肢体が、ベッドに倒れ込む。
     図らずも組み敷いたようになって、しばし見つめ合った。
     このまま……いや、何を考えている。
    「すみません、マスター……調子に乗り過ぎたようです」
     自らの目を手で覆った。
     熱よ冷めろ。この瞬間抱いた感情を、全て忘れるために。
    「っ……」
     ひた、と冷たい指の感触。
     促されて、再び彼女と見つめ合った。
     潤んだ蜂蜜色。紅潮した頬。小さく震えながらも、目を逸らしたりはしないのか。
    「やめちゃうの……?」
     あぁ、もう限界だ。
     彼女の秘密を覆うように、大きな秘密を二人で作った。
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