FF14幻想譚KleinSpielの日常「パッパ、立ち回り上手くなったよね」
Spieldoseから独立後しばらくして、KleinSpielの看板を掲げたバーの地下でミコトがつぶやく。
角にはリンクパールが掛けられており、フリーカンパニーと通信中の淡い光が灯っている。
「そうか?自分ではよくわからないが」
壮年の男の声が角に響く。
「だって、前まで回避とか全然しなかったし、その分わたしの回復リソースえぐかったもん……」
「避けられているものだと思っていたのだが……」
「あれで?」
ミコトの脳裏によぎるのは、どう見ても大振りの攻撃が来るのに敵の正面を譲らない実父の姿であった。
「あぁ、でも、ミコトに教えてもらったスキルの順番表は役に立ったな。とても快適に戦闘ができる」
何を隠そう、この父、戦闘狂なのである。
道中にいる敵は全てなぎ倒し、大地に立っているのが自分だけになるまで戦い続ける。
しかし、圧倒的に不器用なのであった。ミコトも随分と苦労させられたものである。
おまけに結構なコミュ障。
人付き合いが下手すぎて、元の古巣Speildoseでも結構お世話になったものである。
そんな父が、ふとしたきっかけでそこそこ名うての冒険者になってきたのは、娘としても誇らしいものがある。
相変わらず人付き合いが苦手すぎてパーティなど組めたものではないが。
「コウさん、相変わらず人付き合い苦手ですからね」
「…………」
「だまっちゃった」
「いつものことだ」
ミコトとアザミがくすくすと笑う中、父は一人、また戦に出るのだった。