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    Renri_NED

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    Renri_NED

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    クルドジの③⑤です。
    友達の誕生日のために書いた、③の誕生日話。

    #クルドジ
    #三五
    #貴元

    誕生日には目一杯のありがとうを「生まれてきてくれて、ありがとう」
    大切な人の誕生日は、一年で一番それを感じる日だ。



    「それじゃあみんな、また今度。 おやすみなさい」
    「「「おやすみなさーい」」」
    「おやすみ〜」

    本格的な秋の訪れを感じさせる涼し気な十月の夜、僕と貴之は見送ってくれる颯、瞬、蒼真達に笑顔で別れを告げる。
    瞬の姉であるあさみさんの店から、貴之の家へ向かういつもの帰り道、貴之の右手と俺の左手には、貴之への誕生日プレゼントが詰まった紙袋が下げられている。

    「それじゃ、帰りますか」
    「そうだな」

    貴之の前に差し出した右手を、貴之は当たり前のように握り、俺たちは歩き出す。街灯に照らされた住宅街の道には、秋の涼し気な夜風とと共に微かに金木犀の香りが薫り始めている。

    「それにしても、瞬のプレゼントは面白かったな〜。 自分はハンドボール部なのに、最近見たバスケ映画が面白かったからって、バスケットボールをプレゼントしてくるんだから。 ほんと、高校生の発想って面白いよね」

    貴之へのプレゼントを渡す瞬の顔を思い出しながら、隣を歩く貴之へと顔を向ければ、貴之もプレゼントを貰った時を思い出してるのか、眼鏡の奥のやわらかな目元を更にゆるめる。

    「瞬くんは素直なんだと思う。自分の好きな物、面白いと思ったものを、相手にも知って欲しいって」
    「でもそれなら、原作の漫画を渡せば良かったんじゃない」
    「あっ」
    「www 俺、貴之のそういう所好きだよ」

    クスクスと笑う俺に、貴之は少し困ったよな照れ隠しの笑顔を一つ浮かべると、繋いでいる俺の右手をふにふにと何度か握る。
    繋いだ手から伝わる貴之のほのかな温もりを感じながら、俺と貴之は駅を避け、鈴虫の凛とした鳴き声が響く人通りの少ない住宅街の道を行く。

    「実はさ、家に帰ったらもう一つプレゼントがあるんだけど、受け取ってくれる 」
    「……もしかして、元晴自身 」
    「あはは、それはどーでしょう 」

    貴之の予想外の返答に、思わず声を上げて笑ってしまう。こういうふとした瞬間に、恋人から昔馴染みの友達に戻るのが好きだ。きっと大人になって普通に出会ってたら、もっとあれこれ頭で考えた恋愛したんだろうと思う。相手にどう思われるかとか、周りの目にはどう映るんだろうかとか、そういう余計なものに囚われて、本当の意味で相手のことを思いやれない恋愛。
    そんなことを考えると、改めて貴之ともう一度出逢えて本当に良かったと思う。ふざけたり、寄り添ったり――――友達と恋人の間を行ったり来たりする、俺たちだけの恋愛の形。本当に大事にしたいもの。

    「帰ったら、この前貴之の部屋で見つけたAVみたいに、バニーガールのコスプレで誘っちゃおうかな〜」
    「大変だ。それじゃあ今夜は頑張らないと」
    「ふふふ、貴之ほんと面白いwww」

    繋いだ手を子供のように大きく振り、高校生のような冗談を言って歩く俺達。
    あと少し、貴之の住むマンションまでの道をゆっくりと歩く。




    ✣✣✣✣✣✣

    「貴之、こっちきて」

    風呂上がり、まだ濡れた髪をタオルで乾かしている貴之を手招きすれば、まるで大型犬を思わせるゆっくりとした動きで、貴之は俺が座るソファーまでやってくる。
    隣に腰を下ろし、こちらを向く貴之に俺はニコリと一度微笑むと、背後に隠していたもう一つのプレゼントを貴之に差し出す。

    「はいコレ。 俺からの二個目の誕生日プレゼント。 バニーガールのコスプレじゃなくてごめんね」

    冗談交じりに笑いながらそう言えば、貴之は俺の冗談につられたのか同じようにクスリと小さく笑うと、俺が差し出したプレゼントを受け取る。
    紫色の包装紙にかけられた白とピンク色の細いリボンをほどき、 丁寧に包装紙を剥がしていくスラリと細い指先。男にしては優しく、繊細な指が、さほど分厚くない一冊の本へと辿り着く。

    「これは」
    「俺と貴之の出会った時の話を本にした本だよ。どの出版社からも出してない非売品。今日のために書き下ろして、白川ちゃんに手伝ってもらってなんとか本にしたんだ。いやぁ、本にするって思ってたよりもずっと大変なんだね。何度も印刷所から訂正確認の連絡が来て、参ったよ」

    そう言って苦笑する俺の顔を驚いた顔で眺めていた貴之の視線が、慌てて中身を確かめるように手の中の本への注がれる。
    ペラペラとページをめくり、そして最後にパタリと本を閉じると、なんとも言えない、愛しそうなそれでいて泣きそうな横顔で、本の裏表紙を撫でる。

    「僕たちの話……ありがとう元晴。あの時は感想伝えられなかったけど、今度こそ絶対に伝えるよ」

    花がほころぶように微笑んだ貴之の手が、流れるように俺の手を握る。触れる指先や、薄茶色のやわらかな瞳の奥に、嬉しさと目一杯の愛情を滲ませてくるその姿に、つられた俺の頬も思わずゆるんでしまう。

    「改めて、誕生日おめでとう。貴之」
    「うん」
    「生まれてきてくれて、ありがとう」

    握った手のひらに優しく力がこもるのを合図に、俺たちはゆっくりと唇を重ねた。
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