曇天から射し込む淡い光を受け、銀灰色に浮かび上がる部屋の中でミスタは目を醒ました。
寝返りを打てなかったせいか、強張った筋肉や関節があちこち軋むような感覚を覚える。頭の下に敷いたクッション越しに、扉を閉てるかすかな物音を聞きつけた。程なくして床板を踏む控えめな足音が響く。リビングへ立ち入った人影は、家主に気を遣ってか照明を点けないまま薄暗い部屋の中で荷物を下ろした。ソファに横臥したままミスタが名前を呼ぶ。薄暗がりに紛れて姿が見えていなかったのか、はたまた眠っていると思い込んでいたのか、シュウは小さく声を上げた。
「寝るなら寝室に行きなって言ったのに。そんなところじゃ体が休まらないよ」
愕かされたのを根に持つ風でもなく、ソファの傍らへ駆けつける。ブランケットの裾から半分ほど顔を出したミスタは、気遣わしげなきょうだいの表情を確認して満足そうにほくそ笑んだ。
1947