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    ③@PgpgBlackice

    @PgpgBlackice

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    ネオの死後、雷の独白

    ##小咄
    ##現代組

    毎夜淡い期待を胸に抱き
    冷えた寝床に身を沈ませる。

    体温を奪い温もるシーツに
    ほんの少しだけ心を晒す。

    数刻せずに意識は水面下
    甘い夢に瞼を落とす。



    何度朝日が昇っても


    彼の寝床は冷えたまま。




    ---------------------------------------



    例えば夕方帰宅したときだったり。
    夜寝る前のふとした時間だったり。

    その事実は存在を主張してくる。








    彼はもう
    どこにもいないのだ。




    といってもそんなこと受け入れられるはずもなく、少し埃を払う程度で、彼の私物は彼が家を出た日のままにしている。
    まるで時を止めているように。






    とても几帳面な人だった。


    彼はいつも壁に向かって丸まって寝ていて、
    目が覚めてしばらくすると、一度伸びをする。
    それからベッドから下りてシーツを皺一つないよう整える。
    そして枕元にあるカレンダーの昨日の日付に×印を付け、
    ベッドの足下にある観葉植物に水をやる。


    最後に、そっと俺のベッドに近づいて、俺を優しく揺り起こす。

    「おはよう、雷。もう朝だよ。」
    と。


    ここまでが彼の毎朝の日課。何があっても順番が変わったりはしない。

    結局俺は最後まで、自分からおはようとは言えずじまいだった。
    今日こそは、と思ってもなぜか照れくさくなってたぬき寝入りをし、
    温かい手が肩に触れ、柔らかい声が降りてくるのを申し訳ない気持ちで待っていた。




    今なら自分から言える、
    そんな気がするのに。





    あの日から、坐や鬼樹さん、他の皆がちょくちょく様子を見に来てくれるようになった。
    藍さんからは洋館に来ないかと話を持ちかけられたこともある。



    でも、それはつまり、

    この部屋から出て行かなければいけないわけで、
    あの人のいたこの部屋の、この空間から逸脱した生活を新たに始めるということ。




    誘いはありがたいけれど、俺にはそんなことできっこない。



    あの人は
    冷たい冷たい檻の中の俺を"ヒト"として見てくれた初めての人だったから。
    初めてできた"家族"だったから。



    一人は辛いし、思い出の詰まったこの部屋で生活するのも辛い。

    だけど、ここを出て別の場所で生活するのはもっと辛い。







    だから俺は今日も

    あの人の帰りを待ち続けるのだ。








    (二度と帰らないとは分かっているのに、)
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