君待ち/江澄「蓮花の咲きだす音の聞きたさに走る君の背まぼろしなりて」
ゆさゆさと肩を揺らされて、寝台でよく眠っていた江澄は何事かと寝返りを打とうとする。
「おい、江澄起きろ。行くぞ」
「なんだ?」
目を擦りながらゆっくりと目を開けるが、まだ夜は明けていないようで部屋は暗いままだ。
「こんな夜中になんだ」
「夜中じゃないよ、寅の刻(午前四時)だよ」
「なんでそんな時間にお前が起きてるんだ」
江澄が苛立たしげに声を上げると、魏嬰は人差し指を顔の前に立てながら、もう片方の手のひらで江澄の口を塞ぐ。
「しーっ! 大きい声を出したら師姉達が起きちゃうだろ」
たしかにこんな時辰に騒ぎ立てようものなら、父上や母上の耳に入ったら何を言われるか分からない。
3734