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    Mochakored

    @Mochakored
    主刀テキスト置き場になる予定

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    Mochakored

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    主刀(さに←ちょも)
    南泉をそえて

    ##主刀

    「すまない、少しいいか?」
    「にゃっ!?」
    久しぶりの非番はごろごろするに限る。そんな信念を持って自室でのんびり過ごしていると、甘さを含んだ低い声に部屋の外から呼び掛けられた。声に覚えがありすぎる南泉は悲鳴をあげて飛び上がる。
    一家のお頭である山鳥毛にだらしない姿を見せるわけにもいかない。畳へ出していたものを押し入れに放り込むと、平静さを装って部屋へ招き入れる。
    「非番の日にすまんな。少し相談があるのだが……」
    「お頭が、相談……?」
    「ああ、小鳥と先日話をした時なんだが……。彼が、私と一緒に酒を呑みたいなどと可愛らしい事を言ってくれてな」
    「はあ……」
    「その為の酒器を探しているのだが、品揃えの良さに見れば見るほど悩んでしまっているんだ。少々困ってしまってな」
    そう言って広げられた万屋のカタログを見た南泉は全身の毛が逆立つような気持ちにさせられた。
    カタログの装丁からして違うとは思っていたが、どう見ても日用品とは思えない。人間国宝やら有名な工房の受注品ばかりだ。その品々の金額は、南泉が万屋などで買い物をする時に見たことのない価格帯のものばかりだ。国宝や重文の刀も数多くある一文字一家ではあるが、南泉は日用品はそれなりの物を気楽に使える方が安心する性質だった。こんな金額の割れ物など怖くて使うのも億劫になる。
    「これを、主に、贈る、にゃ……?」
    「ああどれも素晴らしい品だろう?だが、小鳥に一番似合うものを選ばねばと思うと決め手にかけてしまって……」
    どうしたものか、と悩む山鳥毛の横顔は雄々しい美貌を苦悩に染めていて、男女を問わず目を奪ってしまうような色香に満ちている。
    「……どれが、いいとか……むしろまだ早いっていうか……」
    南泉たちの主はようやっと脇差の背を越えたばかりの年頃で、まだ脛毛すら生えていない。
    酒の匂いに顔をしかめて甘いものを喜んで食べている主の顔を思い出しながら、南泉は敬愛するお頭への答えに頭を悩ますのだった。
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