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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。敵との戦闘で負傷したルチを心配するTF主くんの話です。ルチの傷口の描写があります。

    ##TF主ルチ

    負傷 背後の路地から、人の気配がした。振り返ることなく、真っ直ぐに足を進める。ここは人通りが多い。そうでもしないと、一般人を巻き込んでしまうだろう。
     大通りを抜けると、ビルとビルの間に入り込んだ。人の気配は、まだ感知できる。前に一人と、後ろに一人だ。極限まで気配を殺しているようだが、僕のセンサーはごまかせない。
     先に動いたのは、背後の男だった。僕に銃を突きつけると、狙いを定めて引き金を引く。大きく跳躍して弾丸を避けると、男のいる方向を向いて着地する。銃を構える男が、悔しそうな顔をした。
     僕が背を向けたことを確認すると、前方の男が動き出した。こっちは近接武器らしく、人間にしてはなかなかのスピードで僕の方へと走ってくる。僕の意識を逸らしたいようだが、その作戦は無意味だ。僕の戦闘システムは、背後の気配さえしっかりとスキャンできる。
     男の身体が、僕の真後ろまで迫った。刃物を構えると、僕の心臓を突こうとする。体勢を変えた男を、蹴りの一撃ではね飛ばした。
    「っ!?」
     男が地面に倒れ込む。その腹部に、追加の一撃をお見舞いした。気持ち悪い悲鳴と共に、口から胃の中のものが溢れる。胃液を撒き散らすと、その男は動きを止めた。
     僕は、即座に背後を振り返る。銃を持った男が、僕には狙いを定めていた。打ち出される弾丸を避けながら、男の背後へと跳躍する。
     僕は、男の手から銃を奪い取った。男を押し倒すと、額に銃口を突きつける。腕の下で、男が怯えた顔をした。
    「頼む……! お願いだ……! 命だけは助けてくれ……!」
     男が言葉を紡ぐ。無様な命乞いを、僕は呆れ顔で聞いていた。そんなことなら、命なんて狙わなければいいのに。人間というものは実に愚かだ。
    「僕を狙うってことは、正体を知ってるんだろ? そんなやつ、放って置けるわけないじゃないか」
     言いながら、僕は引き金に手をかける。男の顔が、恐怖に歪んだ。顔をひきつらせながら、譫言のように命乞いの言葉を繰り返している。大の男が情けない声を上げる姿に、背筋が痺れるような快感を感じた。
    「君は、もうおしまいなんだよ。自分の愚かさを食いながら、地獄に落ちるんだね」
     おかしくて、笑いが止まらなかった。ひきつった笑い声を漏らしながら、じわじわと引き金に力を込める。もう少しと言ったところで、男がにやりと笑みを浮かべた。
    「なんてな」
     言葉と同時に、背後に人の気配を感じた。ヒリヒリと背筋を射抜くこの感覚は、紛れもない殺意だった。
     油断した。僕を狙っている男たちは、この二人だけだと思っていたのだ。三人目の刺客が潜んでいるなんて、考えもしなかった。
     男に蹴りを入れて失神させると、地面を蹴って大きく跳躍した。左足に、何かがぶつかるような衝撃が走る。体勢を持ち直すと、敵と向かい合うように着地した。
     三人目の男が、再び刃物を構えた。冷たい瞳で、真っ直ぐに僕を見る。一瞬だけ見つめ合うと、男が地面を蹴った。
     僕は軽く跳躍すると、男の背後に着地した。どんなに鍛えていても、人間の身体能力では僕には敵わない。両腕を伸ばすと、男を羽交い締めにした。
    「こいつ……」
     男が悔しそうな声を上げる。背後からでも、男の顔が歪んでいるのが分かった。今度こそ、彼らの計画は失敗したのだ。歓喜に顔が歪んでしまう。
    「残念だね。君たちの作戦では、僕を倒すことなんてできないよ」
     男を拘束していた腕を、ゆっくりと上に回す。両腕で首を掴むと、少しずつ力を入れた。
     男の唇から、苦痛の悲鳴が漏れる。気道が塞がり、吐く息がかすれ始めた。拘束から逃れようと、男は何度も手足をばたつかせる。ローラースケートの底で、その足を踏みつけた。
    「無駄だよ。君はもう逃れられない。このまま、ゆっくりと朽ちていくんだ」
     腕の中で、男の動きが弱まっていく。しばらくすると、完全に動きが止まった。男の身体から力が抜け、ずしりとした重みが伝わる。意識を失った男を、地面に横たわらせた。
    「全く、面倒臭いことしやがって」
     僕は、男たちに背を向けた。こんなやつら、殺すまでもない。ここまでこてんぱんにやられたら、リベンジなんて考えないだろう。
     人間は、本当に愚かだ。そんなことを考えながら、僕は男たちに背を向けた。

     路地を出ると、僕は青年の家へと向かった。男たちと戦っていたせいで、すっかり遅くなってしまったのだ。日の暮れかけた路地へ入ると、ワープを起動して彼の家まで飛ぶ。リビングに入ると、彼は能天気に食事を取っていた。
    「お帰り、遅かったね」
    「面倒なやつに絡まれてな。捌いてたら、こんな時間になっちゃったんだ」
     僕が言うと、彼は心配そうな顔をした。僕が神の代行者であることは知っているはずなのに、彼は妙に過保護だった。
    「大丈夫なの? 怪我とかしてない?」
     真顔でそんなことを言ってくる。子供扱いされているみたいで、少し気分が悪い。
    「僕を誰だと思ってるんだよ。そんなことで怪我なんてするわけないだろ。僕は、神の代行者なんだから」
    「大丈夫ならいいけど……」
     歯切れの悪い言葉を発して、彼は口を閉じた。手元に視線を落とすと、黙って食事を口に運ぶ。そんな彼の姿を見ながら、僕はソファに腰を下ろした。そろそろ、風呂が沸く頃だ。風呂に入ってしまえば、この話の続きを聞かなくて済む。

     風呂上がりには、髪を乾かしてもらうことが習慣になってしまった。彼が頼み込んで始めたことが、そのまま習慣になってしまったのだ。年上の人間に髪を触られるなんて、子供のようで気分が良くないが、断るのも意地を張っているみたいで嫌だ。彼が求めてくるから、パートナーとして仕方なく応じてやっているのである。
    「髪、やるのかよ」
     ドライヤーを手に尋ねると、彼は嬉しそうに笑った。手招きで僕を呼び寄せると、床に座ってドライヤーのコンセントを差し込む。僕を足の間に座らせると、近くに置いてあったブラシを取った。
     彼は、優しい手付きで僕の髪を梳かし始めた。ドライヤーで風を送り、ブラシで髪をなぞっていく。その優しい触れ方は、拒絶するほど不快なわけではなかった。
    「あれ?」
     青年が、不意に手を止めた。ドライヤーを止め、ブラシを床に置くと、不思議そうな声を上げる。その視線は、僕の左足に向かっていた。
    「なんだよ」
     尋ねると、彼は困ったように口ごもった。迷うように視線を動かすと、思いきったように言う。
    「その左足、怪我してない?」
     僕は、自分の左足に視線を向けた。足の裏側、人間のパーツで言うふくらはぎの部分に、ぱっくりと裂け目が生じていた。肌を模した表面装甲が剥げ、下の構造が露出している。場所が場所だから、金属の下には疑似筋肉が敷き詰められていて、肉が切れたように見えていた。
    「ああ、あの時の」
     僕は呟いた。少しかすっただけだと思っていたが、しっかりと傷になっていたらしい。しかも、自分では直せないくらいには深かった。
    「これ、大丈夫なの? 結構深そうだけど、痛くない?」
     青年は問いを重ねる。わざわざ痛みの有無を聞いてくるところが、妙におかしかった。僕は、痛覚という感覚が欠如しているのだ。
    「気づかなかったくらいだぞ。痛いわけないだろ。君って、変なやつだな」
    「だって、すごく痛そうだよ。肉が見えてる」
    「これは、人工筋肉なんだよ。切れたところで、なんてことないさ」
     何度言っても、彼は心配みたいだった。救急箱を取り出して、包帯を巻き始める。無意味な行動に呆れてしまった。
    「君って、変なやつだよな。僕に手当てをするなんてさ」
     損傷箇所をなぞりながら、僕は言った。彼は、心配そうに僕の様子を眺めている。人間は仲間が怪我をすると心配するのだ。他人に意識を裂いていて、攻撃されたらどうするのだろう。
    「君も僕の仲間なら、もっと冷酷になれよ。そんなんじゃ、いつまで経っても戦闘を任せられないぜ」
     そう言うと、ようやく彼は落ち着いた。内心では心配なのだろうが、表に出さないように意識していることが分かる。彼も、ずいぶん物分かりが良くなったものだ。
     彼は、どこまでも人間の感性を持っているのだ。僕が倒した男たちと同じ、愚かで哀れな人間だ。こんな男が僕のパートナーだなんて、考えるだけで妙だった。
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