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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。内と外のギャップが激しいルチにTF主くんがにやにやするだけの話です。ルチと一般モブの絡みが見たい話でもあります。

    ##TF主ルチ

    内と外 お腹の上に、ずしんとした衝撃を感じた。驚いて目を開けると、視界にはルチアーノの顔が広がっている。彼は真上から僕を覗きこんで、にやりとした笑みを浮かべていた。
    「いつまで寝てるんだよ。とっとと起きな」
     そう言うと、彼は僕の頬をつねった。頬をむにむにと触られて、一気に目が覚める。
    「今日は、なんかあったっけ?」
     僕は尋ねた。寝起きの頭では、用事が思い出せなかったのだ。何かがあったような気がするが、そこまで印象に残ることではなかった。
    「なんだよ。忘れたのか? 今日は、WRGP出場チームとの模擬試合の日だろ?」
     その言葉を聞いて、ようやく僕も思い出した。今日は、大会が主催する模擬試合の日だったのだ。最近はいろいろありすぎて、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。
    「そういえば、そうだったね。支度するから、ちょっと待ってて」
     洗面所に向かって、大急ぎで顔を洗う。服を着替え、鞄を手に取ると、ルチアーノの待つ部屋へと走った。
    「できたよ。行こうか」
     ルチアーノに手を引かれ、ワープで会場付近へと向かう。本当に、ワープというものは便利だ。

     会場付近のコンビニで、軽い朝食を食べた。開始まではまだ少し時間があったし、何も食べずに向かうのは不安だったのだ。カードゲームと言っても、デュエルはスポーツだ。エネルギーを消費するし、お腹も空く。空腹で挑んで、倒れたりしたら大変だった。
     スタジアムの中は、たくさんの人で溢れていた。参加者だけでなく、観客の姿も見える。ゲートでチケットを見せると、スタッフの女性が場内へと案内してくれた。
     今回の模擬試合は、アマチュアチームを対象に行われるイベントだった。WRGPの規約では、デュエリストであればプロアマ問わず参加できることになっている。参加者も、世界で名を馳せる有名チームから、初めて大会に参加する学生チームまで多種多様だ。しかし、それにはひとつ懸念点があるらしいのだ。
     アマチュアチームは、大会への参加経験が少ない。地方の小さな大会は知っていても、スタジアムを使った大会は知らないという参加者が大勢いるのだ。そのような参加者に大会の流れを知ってもらうために、今回の模擬試合が企画されたのだという。
     イリアステルの設定では、ルチアーノは有名チームであるニューワールドのメンバーということになっている。本来、僕たちは対象にならないのだが、僕の大会参加履歴が少ないことを考慮され、余っている枠に入れてもらったのだ。とはいえ、実はこの模擬試合自体が、ルチアーノの計画した作戦なんじゃないかと、僕は密かに疑っていた。
     対戦相手は、くじ引きで決まった。僕たちの相手は、大学生くらいの青年で結成されたチームだった。リーダーの青年は、僕たちを見て感心したような表情を見せた。
    「君たちか、大会最年少のチームっていうのは」
     僕は一歩前に出た。ルチアーノに任せておくと、何を言い出すか分からない。自分自身で応対したかった。
    「よろしくお願いします」
    「君のパートナーの子は、僕たちより一回りも下みたいだね。この年で大会なんて、すごいなぁ」
    「全然、大したことないよ。この大会に参加してるデュエリストなんて、キングに憧れて申込みした素人ばかりだからな」
     僕の後ろから、ルチアーノが口を挟んだ。容赦の無い毒舌に、肝が冷える思いがする。
    「ルチアーノ!」
     僕が嗜めると、青年は爽やかな声で笑った。
    「いいんだよ。彼は、チームニューワールドのメンバーなんだろう? そんな大物と戦えるなんて、身に余る光栄だよ」
     全然気にしていないようである。パートナーの青年も、何も思ってはいないようだ。ホッと胸を撫で下ろしながら、青年たちと向き合う。ルチアーノはこういう言動を取るから、いつもヒヤヒヤしてしまうのだ。
    「じゃあ、そろそろ準備しようか」
     青年に言われ、僕たちも位置につく。デュエルディスクを構えると、ルチアーノは青年に向かって言った。
    「アマチュアだからって、手加減しないからな」
     相変わらず生意気な態度だ。青年はにこりと笑うと、爽やかな声で言った。
    「こっちも、相手が大物だからって、忖度したりしないよ」
     隣の青年が、からかうように言う。相手の好戦的な言葉に、ルチアーノはにやりと笑った。張り合いのある相手が現れて、嬉しがっているのだろう。
     デュエルの間も、ルチアーノは嬉しそうだった。ケラケラと笑いながら、楽しそうに相手を追い詰めていく。相手が悔しそうな顔を見せると、にやにやと笑いながら軽口を叩く。
    「なんだよ、それで終わりかい?」
    「それはどうかな? 切り札は、最後の最後まで隠しておくものだぜ」
     青年たちも、楽しそうにルチアーノのデュエルに応じた。彼らは、心からデュエルを楽しんでいるようだった。ルチアーノの好戦的な態度にも、気を悪くすることは無さそうだ。僕も、安心しながらデュエルに応じた。
    「ありがとう。楽しかったよ」
     デュエルが終わると、青年は嬉しそうに言った。
    「僕たちも楽しかったよ。ありがとう」
     僕たちもお礼を言う。初戦から、いい人たちと巡りあったものだ。予選でも勝ち残ってほしいと思える相手だった。
     次の相手は、年上の男の人たちだった。無口で無愛想という、典型的な怖そうな大人だ。僕とルチアーノを一瞥すると、黙って位置につく。
    「なんだよ、対戦相手に対して挨拶も無しか?」
     男たちを見て、ルチアーノは煽るように言った。生意気な態度に、男が不快そうな顔をする。
    「挨拶は、年下からするものだろう」
     二人の間に、バチバチと冷たい火花が散る。僕は、不安になりながらその様子を見つめていた。
     ルチアーノは、僕の隣へと戻ってきた。僕に耳を近づけると、冷たい声で言う。
    「あいつらを叩き潰すぞ」
     どうやら、不機嫌になっているようだ。デュエルディスクを構えると、相手を睨み付ける。
     彼は、圧倒的な攻撃で相手を追い詰めた。少しの隙も与えずに、本気のデュエルをぶつけている。男たちは、あっという間に倒されてしまった。
    「ふん。子供だからって舐めてるから、痛い目に遭うんだぜ」
     ルチアーノはケラケラと笑う。男たちは捨てゼリフを吐くと、僕たちの前から去っていった。
     最後は、女性二人のグループだった。ルチアーノを見ると、にこりと笑顔を浮かべる。片方の女性が、もう一人の女性に囁いた。
    「見て、あの子かわいいよ。最年少の参加者かな?」
    「ほんとだ。あんなに小さい子が、大会に出るのかな?」
     女性たちの話を聞いて、ルチアーノは不満そうに頬を膨らませた。僕の方をちらりと見ると、窺うように尋ねる。
    「なあ、あいつらを叩きのめしてもいいかい?」
    「…………ほどほどにしてあげてね」
     僕は答える。彼らに悪気は無いし、実際にルチアーノはかわいいのだ。多目に見てあげてほしい。
     ルチアーノは、嗜虐的な態度で相手を追い詰めていった。かわいいという評価を覆すように、甲高い笑い声を上げながら、攻撃を繰り出す。女の人たちは、そのギャップに怯えているようだった。
    「見たかよ。今の顔、最高だったな」
     楽しそうに笑いながら、ルチアーノは言う。彼は満足そうだったが、僕は微妙な気持ちだった。止めることができなくて、相手に申し訳なかったのだ。
     模擬試合は、三戦で終了した。閉会式が終わると、人々は思い思いの方向に帰っていく。会場を出ると、僕たちも家へと向かった。
     帰宅すると、僕は真っ先にシャワーを浴びた。一日中デュエルを繰返して、僕の身体は汗びっしょりになっていたのだ。全身を流してさっぱりさせると、ソファに腰を下ろす。入れ替わるように、ルチアーノも洗面所へと向かった。
     しばらくすると、ルチアーノが戻ってきた。塗れた髪をタオルで包み。手にはドライヤーを持っている。僕の隣に腰を下ろすと、甘えるような声で言った。
    「今日は、なかなかの成績だったな。これも、僕のおかげだぜ。感謝しろよ」
     尊大な態度だが、声の響きには甘えが滲み出ている。これは、誉めてほしいときの態度だった。
    「そうだね。ルチアーノが味方についてくれて嬉しいよ」
     答えると、彼は誇らしげに笑みを浮かべる。僕にもたれ掛かると、胸元に頭を擦り付けた。
    「そうだろ。他に言うことはないのかよ。君の大会に協力してやってるんだから」
    「分かってるよ。本当に感謝してる。ありがとう」
     素直に応じると、彼はへへんと声を上げた。僕を上目遣いで見上げると、囁くような声で言う。
    「もっと誉めろよ……」
     僕は息を飲んだ。僕に甘えるルチアーノの姿は、年齢相応の子供のようで可愛らしかったのだ。これは、僕の前でしか見せない、『内』の顔だ。この姿が見られるのは、僕だけなのだ。その事実に、身体がぽかぽかと暖かくなった。
     今日の対戦相手は、ルチアーノの本質を知らない。彼がこんなにも可憐な男の子だなんて、知るよしも無いのだ。そう思うと、僕は優越感に浸ってしまう。
    「ルチアーノ、いつもありがとう。愛してるよ」
     僕が言うと、彼は頬を赤く染めた。恥ずかしそうに顔を伏せる。
    「別に、そこまで言わなくてもいいだろ」
     僕のパートナーは、なんて可愛らしいのだろう。そう思いながら、僕はルチアーノの姿を見下ろした。
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