Good luck 2 イデアは、自分の立場をよく理解していた。
自分はシュラウド家の人間だということ。そして、遠くない未来、家を継がなければならないということ。
シュラウド家は、ブロットを浄化する「祝福」を血に宿した一族だ。ファントムを封じ管理する、冥府の番人という責務を担っている。
シュラウド家を継ぐ、ということは、外界から距離を置き、冥府の番人として一生を捧げる、ということであり、祝福を宿す血を後世に残す責任を負う、ということでもあった。
「お相手は多分、確実に炎の子が生まれるよう、ハズレくじを引いた、島に住む遠縁の誰か。これも、確定事項」
灯りを消したままのS.T.Y.X.の自室で、イデアは独り、ベッドに横たわっていた。S.T.Y.X.の制服に身を包み、一切の感情が抜け落ちた冷たい無表情で、薄暗い部屋の宙空を見つめながら、他人事のように呟く。元々整った顔立ちは、無表情になるとますます端正さが際立ち、近寄り難さすら感じさせた。
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