【ゼン蛍】かわいいひと ほぅっと息を吐き出せば、自然と体から力が抜けてそのまま湯に沈んでいく。このまま一度顔まで浸かってもいいかもしれないと身を任せれば、首まで浸かったところで腰に回った腕にそれを阻止された。
「眠くなったか?」
真上を向けばこちらを見る瞳と視線がぶつかる。
「ううん、大丈夫」
いつだってアルハイゼンの入れる湯加減は私の好みにぴったりでその気持ちよさについ眠くなることもあるけど、今は気持ちいいだけで眠くはない。
「辛かったらすぐに言え」
「うん」
少しだけ姿勢を正して背後のアルハイゼンに体を預け直す。程よい力で支えられ、多分このまま寝てしまっても溺れることは無いだろう。実際は意識が沈み切ってしまう前に抱き上げられ、ベッドまで運ばれるだろうからその心配すら無いのだろうけど。
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