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    ゆる抹茶風味

    @gdgdocha

    かべうちから移行。さと探/その他二次創作/オリジナル 書き掛けかR指定を置いてます。

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    ゆる抹茶風味

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    短いし習作だけど五感を意識した表現を気に入っている(自画自賛)

    しゅうまつプロローグ リビングで洋画を見終えたあとの世界には二人きりだった。落とされた明かりの中、液晶が青白く光っている。ソファに凭れ掛かり、僕と彼の肩が寄り添う。感想の一つでも口にしてしまえば、浮遊感から上手く抜けられない気がして唾を呑み込んだ。
     熱を帯びる左肩にゆるり頭を預けると、より鼓動が響く。ほのかなシャンプーの香りが鼻孔をかすめて、ちいさく息をする。同じものを使っているはずなのに、なんでこうも落ち着かなくなってしまうのだろう。匂い一つで狼狽えるのが恥ずかしくなって、慌てて背筋を正す。
     呼吸を止めた心音は秒針より早い。脈打ち流れる血液に気をとられていると、左手が暖かくなった。ゆったり重ねられた手に一度包み込まれたあと、指が徐々に肌を離れていく。残った人差し指で指の形を探られると、それだけで甘い痺れが背骨を走って、僕は目を瞑ってしまった。ふちのすれすれ、あいだ、骨、筋。すべて覚えるように、教え込まれるように何度も指は進んでいく。自由奔放のようで、毛細血管まで余すことなく伝わる熱からは執念さえ感じる。三周されたころには、軽く息が荒くなっていた。そして暗闇のなか、内側へするりと潜り込んだ指に抱きしめられる。幼子がしがみ付くように固く結ばれた掌は逃げることを許さない。
     つうと汗が首筋を落ちてゆく。心臓ごと焼かれるように熱い。熱くて、苦しい。
    「成海」
     目を開くと、淡い光が照らす輪郭だけが世界だ。掠れた囁きは同じ温度で耳を染めるから、身を委ねる理由には十分だった。僕は筋張った手を握り返した。
     瞳は四角の光を反射して、その中央には影だけが映っている。吸い込まれそうな黒がじっと息を潜めて、たったひとつの期待を待っていた。それはきっと、間違っていないと確信している。
    「……湊崎」
     祈るような五文字で、僕の友人は安心したように笑った。そして静かに唇は重ねられた。
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    ゆる抹茶風味

    DONEポッキーの日ネタ。アヤタがモブギャルに話し掛けられているだけ。9割捏造。高校生時空で、灯影院の交友関係がそこそこ広くて、あだ名を付けられている。
    蛇足メモ: このモブの家はスナックをやっている設定。
    アヤタがクラスメイトからポッキー貰った話「ねー、ささたなコンビにポッキーあげる」
     ホームルームが終わり、教室はざわついている。読み掛けの本を開いて、トイレに行った灯影院を待っていると、目の前に派手な恰好をした女子が立つ。机を挟んでふわりと化粧の香りがする。普段教室の対角線上にいるタイプで、僕は思わず身構えた。
    「……えっと、ごめん、どういう風の吹き回し?」
    「風の吹き回しって言い方すご。ウケる」
     その言い様は馬鹿にしているのか、それとも本当にツボに入ったのだろうか。どちらにせよ、意味もわからず笑われるのは気分が悪い。固くなる僕を前に、彼女はひとしきり笑ってから話を続けた。
    「んーとね、うちにいっぱいあったから持って来たんだけど、配ろうとしたらみんなノリよくて、最終的に九箱ぐらいダブったんだよね。手当たり次第あげても余ってたところで、ささたながいたからちょうどいいやって。あ、ポッキー好きじゃない感じ?」
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    ゆる抹茶風味

    DOODLE短いし習作だけど五感を意識した表現を気に入っている(自画自賛)
    しゅうまつプロローグ リビングで洋画を見終えたあとの世界には二人きりだった。落とされた明かりの中、液晶が青白く光っている。ソファに凭れ掛かり、僕と彼の肩が寄り添う。感想の一つでも口にしてしまえば、浮遊感から上手く抜けられない気がして唾を呑み込んだ。
     熱を帯びる左肩にゆるり頭を預けると、より鼓動が響く。ほのかなシャンプーの香りが鼻孔をかすめて、ちいさく息をする。同じものを使っているはずなのに、なんでこうも落ち着かなくなってしまうのだろう。匂い一つで狼狽えるのが恥ずかしくなって、慌てて背筋を正す。
     呼吸を止めた心音は秒針より早い。脈打ち流れる血液に気をとられていると、左手が暖かくなった。ゆったり重ねられた手に一度包み込まれたあと、指が徐々に肌を離れていく。残った人差し指で指の形を探られると、それだけで甘い痺れが背骨を走って、僕は目を瞑ってしまった。ふちのすれすれ、あいだ、骨、筋。すべて覚えるように、教え込まれるように何度も指は進んでいく。自由奔放のようで、毛細血管まで余すことなく伝わる熱からは執念さえ感じる。三周されたころには、軽く息が荒くなっていた。そして暗闇のなか、内側へするりと潜り込んだ指に抱きしめられる。幼子がしがみ付くように固く結ばれた掌は逃げることを許さない。
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