好きとか愛とか番とか Ωにはαの子孫を残したいという本能がある。例に漏れず、ウタにもシャンクスの子供が欲しいという願望があった。けれど、海の上で生活している以上難しいだろうなとも思っており、ウタはいつも理性と本能の間で揺れている。
αにも自分の子孫を残したい、Ωを孕ませたいという強い本能があり、ウタの番であるシャンクスもα性である限り同じ思いを持っているはずだ。
項に熱い息を吹きかけ甘噛みするシャンクスに、ウタはαの発情期『ラット』が近いんだろうなと聞きかじった知識を頭に浮かべた。胸の下へ腕を回し、肩まで出る形のワンピースを纏ったウタをぎゅうと抱きしめる男になんと言ったものかと言葉を探す。
「シャーンクス、何かして欲しいこととかない?」
項に噛り付かれると発情しちゃうからできる事なら離して欲しいなと考えながらウタが告げれば、シャンクスは肩口にじゅうと吸い付いてから「傍に居てくれ」と増々腕の力を強めた。男の甘えた姿に、離すことを早々に諦めたウタは「まぁいっか」と身体から力を抜く。
冷たい鼻先を擦りつけられ、じうと首筋を吸われる。すりっと擦り寄られると髭や赤髪が肌にさわりと触れてウタは落ち着かなくなってしまう。それにシャンクスの膝の間に抱き込まれているせいで腰に硬いものが当たる。
したいならしたいって素直に言ってくれる方がこっちも助かるのに……。どくどくと熱く脈打つものを背に感じながらウタはぽんぽんと男の膝を軽く叩いた。
「ねぇ、シないの?」
その言葉にぴくりと反応したシャンクスはウタの項から顔を離し、ウタの顔を手で捉えた。するりと硬い指に顎をとられ、ぐいっとシャンクスの方へ顔を向ける形で唇を奪われる。
触れるだけの軽い口づけに、ウタは男の上唇と下唇を啄ばむように食み、はむはむと表面を撫でるキスを繰り返す。最後にちゅっと音を立てて唇を離し、シャンクスの頬を撫でてやれば、何か言いたげな顔をしていた男がようやく口を開いた。
「今ヤったら孕ませちまう」
「そうなの?」
聞くに、ラットの時αの陰茎は普段と違って亀頭球が膨れ、Ωのことを妊娠させやすくなるらしい。射精時間も長くなり、ゴムでは防ぎきれないほどの量が出るとのことだった。
「私は別にいいけど……」
シャンクスの子供なら欲しいしとウタが本能に任せて言うと、シャンクスはぶすっとした顔をして首を横に振った。
「お前を船から降ろす気はねェ」
ウタの身体をひょいと膝の上へ抱えあげ、シャンクスは彼女の瞼や頬へすりすりと擦り付けるように唇を滑らせた。顔の形を確認するようなしぐさに、ウタは混乱しながらもよしよしと赤髪へ手を伸ばして優しく撫でる。
「私だってシャンクスと離れたいわけじゃないから子供のことはいいんだけど。けど、やっぱりシャンクスのことは欲しいな……」
ウタは頬に熱を登らせながらも「ラットのシャンクスも食べてみたい」と囁いた。うるうるとしたアメジストの瞳に見つめられ、理性を揺さぶられたシャンクスはうぐっと息を詰まらせ、彼女から目をそらす。
「あのなぁ……」
なんとか逃れようとするシャンクスの両頬を手で包み、ウタはじっと男を見つめる。
「ちゃんと避妊薬も飲むから……」
避妊薬を飲んだら生でしていいって理由にはなんねェぞとシャンクスは自分に言い聞かせる。ただでさえラットで理性が緩んでおり、我慢するのに神経を使っているというのにシャンクスのフェロモンに誘発されて発情した番に誘惑されてはたまったものではない。
「ウ――……」
シャンクスがなんとか咎めようと口を開いたところで身を乗り出したウタに唇を奪われる。ちろっと小さな舌が口内へ入り込み、歯を一本一本なぞっていく。ほっそりとした腕を男の首へとまわし、豊満な胸を押し付け絡みついてくるウタにシャンクスの理性の紐がちりちりと焦がされる。
「――ンッ……ふ、」
小さな爪で項をかりかりと引っ掻かれると番の項へ噛みつきたくてたまらなくなる。あたりに充満するΩのフェロモンにシャンクスは頭をくらくらとさせた。
「ンぅッ、ふっ……じぅっ……」
シャンクスの厚い舌を吸いだすように口内へ誘い込んだウタは、項に触れていない方の手を男のはだけた胸元へと這わせる。ちゅぽっとシャンクスの舌を解放したウタは、舌を男の顎から首筋へすべらせ、小さな突起をちゅるりと口に含んだ。
「ね、シャンクス、いいでしょ?」
もちろん良いわけがない。が、ウタに散々煽られたシャンクスはベッドサイドの引き出しを乱暴に開け、仕舞っていた薬の中から避妊薬を取り出して口の中へと放り込んだ。
シャンクスがやる気になったのを見て取ったウタは「ちょっと待ってね」と男を押しとどめ、番の膝から降りた。
「今日はちょーっと違うんだよね」
そう言って膝立ちになったウタがワンピースのスカートを持ち上げると、そこからは両サイドが頼りないリボンで結ばれただけの白い下着が現れた。