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    京紫(けいし)

    @ke_shitl

    ちょにゃ恋3開催おめでとうございます!

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    京紫(けいし)

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    2022.09回の毎月ちょぎにゃん祭り参加します~。
    初めて書いたちょぎにゃん...にゃんが日向ぼっこしてるだけの話。弊本丸設定多々あり。

    #ちょぎにゃん
    squishy
    #毎月ちょぎにゃん祭り
    monthlyChoginyanFestival

    【ちょぎにゃん】ねこじゃらしよく晴れた昼下がり。内番もなく午前の内に遠征も終わらせた南泉は、本丸の西側。建物内でも居住区から少し外れた一角の廊下に腰を下ろしてぼんやりと外を眺めた。
    現在も第一部隊が出陣に赴いているし、二から四部隊は再編成され遠征に出ている。それに加え夜戦に備え仮眠を取っているものもいるからか、辺りはどこか静かで暖かな陽気が身体を温めているのもあって思わず欠伸が出る。
    自前の枕まで持参で人が来ないこの場所まで来たのだ眠気を我慢する必要もないと、ごろりと寝転がりふと目を閉じようとした南泉の視界の先で揺れる薄茶。
    本丸が存在する空間はある意味隔離された特殊なものであるらしいが、その中でも主たる審神者が設定できる季節には種類が多数ありその時期にあった木々や花々が咲くという。南泉からすれば到底理解の出来ない魔訶不思議なからくりなのだろうが、それも万全ではないらしい。
    その最たるものが今南泉の目の前で揺れているものであり、畑当番を悩ませるものでもある。それを総じて言うならば雑草、だろうか。自然の摂理に逆らっているようで従っているらしく、春の花見が終わった頃から雨が降るたびにむくむくと芽を出し背を伸ばすそれの種類は多岐に渡る。
    この本丸が出来てすぐの頃、短刀たちが遠征に出るたびに主への土産だと道端に咲く花や珍しい実などを持ち帰り、枯れてしまったからと庭に埋めたのも恐らく一役買っているのだろう。そしてそういった習慣はなかなか抜けないものだ。
    南泉がこの本丸で人の身を持ち数年が経つが、毎年本丸内でも初めて見かける雑草というのはあり、どんどんその種類を増やしていた。。

    そんな風に南泉が思考飛ばしている間も、風に揺られて右へ左へとそのふさふさした穂を動かしているそれ。もし南泉に尾があるならば獲物をしとめんとばかりにてしてしと床板を叩いているのかもしれないが生憎南泉は猫でもなければ尾も生えていない。
    あれを獲物だとも思わないし、考えることは次の草取り当番は大変そうだなということくらいだ。冬場以外の時期は週一回の内番に草取り当番が設けられている。長物や太刀といった上背のある刀たちはここぞとばかりに年寄りであることを主張して腰が痛むなどと言いその当番を免除されていて、主に短刀と脇差で組まれているがそれでは負担が大きいだろうと打刀も毎回二振りほどは組み込まれている。
    ちなみに免除されている長物の中でも短刀と変わらない背丈の蛍丸や真面目な性分の蜻蛉切、相棒に引っ張られて張り切る岩融などは草取りに混じっているが、蛍丸はともかく他の二振りはあの大きな体躯を丸めて草取りをする姿に見ている方が腰が痛くなるくらいだったので、鋤簾を使った草集めで大いに活躍している。
    そしてそれを見た大抵の打刀も当番が当たると積極的に鋤簾を使う仕事を担おうとするし、南泉もまた例外ではなかった。

    雑草というのは増えやすく抜きにくいという性質があるためかどんなに小まめに草取りをしても鼬ごっこなのだが、南泉はどちらかと言うとその性質に関心を抱いた。
    人の目に付きやすく、手に取り持ち帰りたくなる見た目というのはとても合理的だと思うのだ。あるものは五虎退の虎にじゃらせようとし、あるものはこんのすけの前に出し、あるものは鳴狐のお供に見せた。まあ全て南泉自身なのだが。
    短刀も手の中に握り込み出てきた様を喜んでいたし、雑草を疎んでいる主ですら懐かしいと目を細める狗尾草。そのふさふさとした見た目は犬の尾に似ているから犬っころ草、それが転じてその呼び名になったという。
    ただ俗名のねこじゃらしのほうが一般的らしく、主もそう呼んでいた。犬の尾なのに猫がじゃれるのかと思ったりもしたが南泉が言うとややこしそうだったので黙っておいた。
    ちなみにこういった雑学のほとんどが主が短刀たちに用意した図鑑から得ている。それも南泉が手に取り読んだわけではなく、こうして日向ぼっこをしているとどこからか図鑑片手にやってくる短刀が多いのだ。そうして大抵が始めはひとりで静かに読んでいてもいつのまにか「これが」だの「あれが」だのと文字を読んで解説し始めるのだった。
    その短刀たちが読んでいた図鑑の中で見た蝦夷栗鼠の尻尾の方が似ているんじゃないかと思ったけれど、それを言った南泉の近くに座って人体図鑑を眺めていた薬研に「似たようなもんじゃねえのか?」と一蹴されたのでそれ以降口にしたことはない。
    こんな調子でとりとめのないことをあれこれ考えすぎたせいだろうか。先ほどまでしっかりと感じていた眠気はすっかりと遠退いており、いつまでたっても眠りにつけそうになかった。
    そしてずっと視界の先で揺れていた狗尾草の穂が寝転がる南泉の目の前に一つ現れてゆらゆらとし始めたのを見とめ、もう寝れねえなと内心独り言ちた。

    「なにしてんだ、にゃ」
    「惰眠を貪ろうとする大きな猫と戯れようかと思って」
    気配を消すこともしなかったので背後にいるのは分かっていたが、流石に今の今まで思考の中にいたものを持っているとは思わなかったため、多少問いかける声がいつもより不遜になったのは南泉は悪くないだろう。
    そもそもそんなことを気にするような繊細なやつではないのだ。庭に向けていた目線を後ろへと向けるために振り返ればそこには装備を解いた正装姿に真顔で狗尾草を持ついけ好かない恋刀がいた。
    「残念ながらソイツ動物の遊び相手にならないのは証明済だぞ」
    「は?」
    「五虎退の虎はひと噛みだった」
    「ちなみにそれは修行前の話か?」
    「いや、極めになってからだな」
    「なんで戯れると思ったのか聞きたいね」
    「こんのすけには鼻で笑われ、鳴狐のお供は遊ぶ振りしながらノリ突っ込みしてきた」
    「のりつっこみ?」
    「主に言ったらいろいろ見せてくれるぜ」
    くすくすと笑いながら話す南泉と違い、にこりともしない山姥切にこういうところが可愛げがねえんだよなあ、と思う。揶揄するのならそれを表情に見せればまだ面白がってるんだなと可愛く思えるのに、終始真顔なお陰で腹立たしさしか沸いて来ないのだ。
    ただ、なんとなくおかしいなと思って身体を起こすと未だに狗尾草を振っている山姥切の表情を確認すれば原因は分かった。

    「昨日、結局寝てねえのか?」
    「聞いてくれるかい、終わったのはつい今しがただよ」
    じゃあ真っ直ぐ部屋言って寝ろよ、とつい口に出そうになったがそれを言ってしまうと後々面倒なので咄嗟に口を噤んだ。
    昨日の朝から事務仕事に強い面々は執務室に籠りきりになっていた。曰く、主が後回しにして溜めに溜め込んだ書類の提出日が何の因果か全て今日だったらしい。昨日の朝食時にその時揃っていた全刀剣の前で本人曰くお得意の土下座をした主は恐らく今は初期刀のお説教中だろうか。昨日の日の出ているうちには終わらず、夜食の差し入れを手伝いで運び入れた時には全員が目が据わっていたがあのまま徹夜どころかまもなく八つ時を迎えるであろう時間まで戦う羽目になったらしい。
    南泉の感じ取った違和感はいうなれば覇気のなさ、だろうか。普段は真顔でもその目の奥にしっかりと覇気があるのに今はそれがなく、南泉に絡んできたのも特に理由はないのだろう。
    それでも目に付いた狗尾草を摘んで隠れるように一目つかない場所にいる南泉の元へ来るとは、なかなかに可愛げがあっていいんじゃないだろうか。またなにか面倒臭い絡み方をしてきた時にはこれを使って撃退してやろうと思いながら、目の前に揺れる穂を潰さないように掴み抜き取ると、空いた手を掴んで自分の方へ引き寄せる。
    南泉が動くとは思わなかったらしい。「うわ」という小さな悲鳴と共に簡単に体勢を崩した山姥切をそのまま廊下へと寝転がらせる。優しいので南泉が持って来ていた枕にきちんと頭が乗るようにしてやったから特にどこかをぶつけたような音も上がらなかった。
    「ちょっと!猫殺しくん!?」
    「うるせえ、人がちょっと引っ張ったくらいですぐによろける化け物切りはさっさと寝てろ、にゃ」
    「寝ろったってこんなひとがいつ来るか分からないところで……」
    「もうすぐ八つ時だから、みんなウロウロしなくなるだろ。しかもここはこれから西日が当たって暑くなるから誰も喜んで近付いて来ねえよ」
    「じゃあ寝るのには不向きなんじゃないか」
    「うるせえ、いいから寝ろ!」
    山姥切の顔がちょうど影になる様に廊下に腰掛け、先ほどまで南泉の目の前で揺れていたそれを目の前で振ってやる。
    「俺にはじゃれる習性はないんだけど」
    「俺にもねえにゃ。じゃなくて、ほらあるだろ。あなたは段々眠くなる―ってやつ」
    「……催眠術にしては大分雑じゃないかい?」
    「こんなものは雰囲気だろ、にゃ。ほらあなたはどんどん眠くなるー」
    「どんどんなのかい?」
    南泉の棒読み具合もあってかようやくその一般的には綺麗だと評されるのだろう容貌を崩し、クスクスと笑った山姥切はしばらくそうしていたかと思うといつの間にか寝息を小さく立て始めた。

    「……ったく、こんなになるまで起きてないでさっさと寝ろよな」
    半分外のような廊下の端で、誰が来るかも分からない状態で素直……ではなかったがそれでも大した抵抗もなく寝転がっただけで十分分かっていたことだが、すぐに寝付いたなんてよっぽど昨日の徹夜が効いていたのだろう。
    これはしばらく起きないだろうな、と思うものの日よけを買って出てしまったため同じように横になることも出来ず、片膝を立ててそこに顎を乗せた体勢で軽く目を閉じた。片手は柔らかな銀糸を撫で、時折吹く心地よい風にこのままだと風邪を引いてしまうかもしれないなと思いつつも、もう目が開くことはなかった。


    余談ではあるが、次に南泉が目が覚めた時にはやわらかな掛布を被っていた。それを被せたついでにふたりが寝入る姿を写真に撮ったと楽し気に笑う初期刀の声に流石に寝ていられなかったのか、南泉より少し遅れて目を覚ました山姥切は初期刀の姿に何かを察したのだろう、執拗にこちらに絡んできた。寝起きなのに元気だにゃあと呆れて笑う南泉にいつまでもその絡みに付き合う理由もなく、早くも出番となった疲れていながらも南泉を探していたという隠し玉を使って撃退してやったのだった。
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    Replies from the creator

    京紫(けいし)

    DONEちょにゃ恋3の展示作品①
    他所の審神者に呪をかけられた特付きすぐの初にゃんと、接触禁止令の出たカンストちょぎの話。書き始めから時間が経っているのがよくわかる春設定。
    以下諸注意!
    ・シリアス風ほのぼのでハピエン
    ・ネームレス性別不明主が喋る
    ・まんばもよく喋る
    ・他の刀剣も少し出てくる
    ・にゃんが他の刀剣等に対し暴言を吐くシーンがある
    ・設定ゆるゆるの呪が出てくる  など何でも大丈夫な方向けです。
    【展示①】嫌よ嫌よという呪い他所の審神者に呪をかけられた特付きすぐの初にゃんと接触禁止令の出たカンストちょぎの話。書き始めから時間が経っているのがよくわかる春設定。
    注意・ネームレス性別不明主が喋る
    ・まんばもよく喋る
    ・他の刀剣も少し出てくる

    「嫌よ嫌よという呪い」

    資材を蔵に閉まったあと、湯浴みに行くもの、腹が減ったと厨を覗きに行くもの、道中に買い求めた土産を仲の良い刀に渡しに行くものと、先に部隊長が主への報告に行ったこともあり特に解散の合図もなくそれぞれが散っていく中、長義も自室へと足を進める。
    長義の暮らす本丸では特に希望がなければ、刀剣たちには個室が与えられる。そう広さはないが個人的な空間を望むものには有り難がられているし、兄弟刀や見知ったものとの同室も望めば少し広めの部屋を与えられるので、刀剣たちからも文句は上がらないし主も部屋割りに悩まなくて済むからと零していたのを聞いている。
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    京紫(けいし)

    DONEちょにゃ恋2展示作品①
    ちょぎに想いを告げられて、二振りでの遠征任務中に恋や愛について考えるにゃん。
    弊本丸の設定多数。
    終古朽ちるその時まで「終古朽ちるその時まで」

    〝山姥切長義を隊長とし、二振りでの遠征任務に命じる〟
    近侍づてに呼び出された執務室でそう聞かされた南泉の心の中を、見せられるものならば見せて回りたいほどには動揺をしていた。何故いまなのか。長義からの差し金や陰謀も考えられるけれど、目の前に座る南泉の今の主はそういった刀の我が儘を聞き入れることはほとんどなかったし、もしあったとしても全て南泉に話したうえで「山姥切はご希望らしいけど南泉はどうする?」と聞いてくれるであろう。
    だからこれは本当にたまたま偶然、何も知らない主の起こした奇跡なのだろうけれど、正直なところ南泉の感想は勘弁してくれ、であった。
    出来るだけ早い出発をと、先に長義には話を通したことを告げた主は南泉の否の返事を聞くこともなく、さあさあ急いでと固まる南泉を執務室から追い出した。まあ残ったところで任務を拒否出来るわけもなく、身支度も心の準備もろくに出来ないまま時間だけが過ぎ慌てて門に向かう羽目になったはずなので、その強引さに今は助かったのかもしれないけれど。
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    京紫(けいし)

    DONETwitterで参加した第39回毎月ちょぎにゃん祭りの再掲です。
    お題「スイカ」
    夏バテにゃんとなんとしても食べさせたいちょぎ。
    おつかいという名のデートの話。でもなぜかメインはスイカじゃなくて桃。少し誤字や言い回しなど訂正しています。
    第39回毎月ちょぎにゃん祭り お題「スイカ」「朝は食べてた?」
    「冷や汁を少しだけ」
    「昨晩も唐揚げだと喜んでいたわりには食べてなかったんじゃないかい」
    「一つ食べて悔しそうにしながら後藤にあげていたよ」
    「僕たちは食べなくてもそこまで生活や出陣に支障をきたすわけじゃないけど、南泉くんはやつれていってる気がするし心配だよね」
    朝餉の片付けも終わり、早朝からの慌ただしさがようやく落ち着いた厨。あと一刻もすれば昼餉の準備にまた騒がしくなるのだが、その前の僅かな休息の時間帯に顔を出した長義はお目当てであった祖――燭台切光忠と、歌仙兼定を捕まえ、愚痴という名の相談をしていた。

    昨年の小雪の頃に顕現した猫が、初めての夏の訪れにすでにぐったりと――主曰く夏バテというらしい――していて、ほとんど食事をとらなくなってしまったのだ。本丸内はそれなりに過ごしやすい温度に保たれているが、それが余計に外気温との温度差で体調を崩しやすく。かといって冷房もつけずに本丸内で過ごせるはずもなく、南泉は出来るだけ冷房を抑えた部屋で静かに眠ることが増えた。
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    「なぁマスター、あんまり深追いすると危ねぇっすよ」
    と声を上げた。
     マスターと呼ばれた癖毛の少年は素直にくるりと振り返ると、「そうだね」と笑みと共に返し、ブーツの足首を雪に埋めながら青年の元へと帰ってきた。
     ここは真冬の北欧。生命が眠る森。少年たちは微小な特異点を観測し、それを消滅させるべくやってきたのであった。
    「サーヴァントも息、白くなるんだね」
     曇空色の瞳の青年の元へと戻った少年が鼻の頭を赤くしたまま、悪戯っぽく微笑んだ。そこではたと気が付いたように自分の口元に手をやった青年が、「確かに」と短く呟く。エーテルによって編み上げられた仮の肉体であるその身について、青年は深く考えたことはなかった。剣――というよりも木刀だが――を握り、盾を持ち、己の主人であるマスターのために戦 2803