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    京紫(けいし)

    @ke_shitl

    ちょにゃ恋3開催おめでとうございます!

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    京紫(けいし)

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    Twitterで参加している第37回毎月ちょぎにゃん祭りの再掲です。
    お題「じゃがいも」
    じゃがいものおかずをたくさん並べた話

    #ちょぎにゃん
    squishy

    第37回毎月ちょぎにゃん祭り お題「じゃがいも」雲一つない、眩いほどの碧空の下、麦わら帽子に内番着の上着を脱いだ肌露出の多い格好でしゃがみ込んで畑仕事に勤しむ恋刀の姿を見つけ、出来る限り気配を隠し足音を潜めその背後へと近付いた。
    本日は午前の出陣任務を終え、午後は事務仕事の手伝いをしているため装具を外しただけの戦装束の長義にとって、この陽射しは些か辛いものがあるが本来の用事はもう済ませてあるし、土遊びをしている可愛い猫を揶揄ったら本丸に戻る予定なので中に入ったら汗を拭おうと決めて、こめかみを伝う雫に知らない振りを決め込んだ。

    よほど集中しているのか、他の内番メンバーだと思い気にしていないのか、一向に振り向かない南泉はどうやら相当機嫌がいいらしく、距離を詰めると鼻歌を歌っていることに気が付く。
    しかしそれもよくよく耳をそばだてれば、「ポテトサラダ~コロッケ~煮っころがし~」などと料理の名前が並んでいる。ほかにもフライドポテトだのマッシュポテトだの肉じゃがだの、どれもこれもじゃがいも料理ばかりでその南泉の手元を見ればまさに柔らかな土の中からジャガイモを掘り出しているところだった。
    陽の光にこんがりと焼かれていそうな白皙(はくせき)が影に入るように背後に立つと「そんなにジャガイモが好きだったかな」と声を掛けながら、南泉が掘り起こした中から一つ手に取る。手袋越しに触れるそれはどこかほんのりと温かく、土を落とせば薄茶の皮が顔を覗かせる。大きさも程よく、良い出来だと呼べるものだろう。
    南泉はというと、振り返りはしなかっただけで長義が来ていることに気付いていたのか特に反応をすることもなく、次々とジャガイモを掘り起こしていく。
    「誉ポイントが貯まったからな、厨係に何を作って貰うか考えてたんだよ」

    それぞれの本丸で通常の給金だけでなく、臨時の手当てを渡すなどといった習慣があることは演練のあと交流という名の情報交換をした際によく聞くが、その中でも誉の回数等に応じた報酬を与える本丸は多い。
    例に漏れず長義と南泉が所属している本丸でもその制度は採用されていて、顕現年数や練度にもよるが南泉は長義と同じ誉五十回ごとに一度何かしらの希望を願い出れるようになっているはずだ。
    物を強請るもの、休みを強請るもの、現世等へのお出掛けを強請るもの、それは多種多様であったが料理の希望というのは珍しいのではないだろうか。内番と同じように割り振られる厨当番ではなく、献立や材料の仕入れなどを一挙に任される厨係に任命されている数振りの刀たちは割と他の面々に希望を聞いてくれることが多く、わざわざ誉報酬を使わずとも叶うことの方が多いのだ。
    もちろん誉で強請る方が確実ではあるものの、それにしては希望する料理も決まっていないという。その小さな矛盾に首を傾げれば、ちらりとこちらを見やってから小さく嘆息するのが聞こえた。
    「誉を使ってでも、ジャガイモを消費しなきゃなんねぇんだ、にゃ」
    どうにもバツが悪そうな言葉に一瞬の逡巡ののち、思い当たる節があり、ああと声が漏れる。
    「ジャガイモの種芋の発注を間違えたのは君だったね」
    「うっせぇ、だからこうやって率先して芋掘ってるし消費方法も考えてんだろ」
    「それは長谷部に課された罰則だろう?」
    「だから文句も言わずやってんだろ、にゃ!」
    どの刀剣にも順に回ってくる近侍の当番の際、畑の主とも呼べる桑名江からの希望によりジャガイモの種芋の注文を任された南泉は規格――ロット、と言うのだったか――を勘違いして発注を掛けた。ようは一つ頼めば十の種芋が来るのだとして五つ頼めばいいところを五十頼んでしまったのだ。数字は適当ではあるが要点としては外れていない。必要数の数倍は来てしまった種芋に内番の人数を急遽増やして本丸総出とも言える規模でジャガイモ畑の生成がされたのは二週間ほど前の話だ。
    畑の作物は本丸に流れる主の霊力を糧として通常では考えられないスピードで育つので、このジャガイモもすくすくと育ちもう収穫期を迎えたということらしい。

    「大量消費と言うならコロッケが一番いいんじゃないのか」
    「ちょっと歌仙に相談したらコロッケを頼むなら手伝いと他にも数振り手伝い要員を見つける事を条件に出されたんだよなぁ」
    「まあ手間を考えると妥当なところだね」
    「そうなんだけどよ、大して役に立たないやつが手伝いに行ったところで邪魔になるだけだろ」
    「あれ、そんなに料理苦手だったか」
    「まあ潰して混ぜて丸めるくらいなら問題なく出来るぜ」
    話している間も掘り起こされていたジャガイモを、今度は運搬用の籠に放り込んでいく南泉を横目に畑を見渡せば、まだまだ広範囲に渡って青く茂っている葉が視界に入りこれはしばらく芋には困らなさそうだなと保管場所の確保へ思考を飛ばす。
    「まあ、大人しく数回は手伝いに行った方がいいんじゃないかな」
    「……そうなるよにゃあ」
    苦々しく打たれる相槌に思わず笑みが零れる。どれだけ料理が嫌いなのかと問うたところで返事なんて来ないのだろう。手先は器用だけど恐らく気質として、単純作業や反復作業が苦手なのだ。今は罰でもあるから大人しく文句を言わずに行っているが、ジャガイモの収穫作業のみ、というのも本来なら南泉にはなかなかの苦行のはずだ。
    自由気ままな猫ちゃんだものね、と言えば手元にある丸々としたそれが剛速球で長義の身に投げ込まれるであろうことは想像に容易く、受けることもまあ不可能ではないが別にいま神経を逆撫でしたいわけでもないので、零れそうになった言葉は上手く飲み込むことにした。

    そろそろ陽も傾いてくるころとはいえ流石に暑くなってきたのと、書類に必要な確認に来ただけでまだ仕事は残っているので南泉の隣に座り込んでいた腰を上げる。
    「俺はじゃがいもとイカの煮物で頼むよ」
    「は?」
    「アテを任せる分、酒は用意しておくから」
    「あー…、もっと普通に誘えないのかよ」
    「きちんと伝わっただろう?」
    呆れたような物言いに特に反省するそぶりも見せずに飄々と言い返せば、いつものことと割り切ったらしく仰け反るように見上げてきた。
    「今日で良いのか?」
    「問題ないよ」
    「分かった、頼んでおいてやるよ」
    「作ってくれてもいいよ?」
    「俺は美味いアテで酒が飲みてえにゃ」
    なんか礼考えなきゃじゃねえか、と誉報酬ではなく個人的なお願いとして頼むらしい発言にさも名案とばかりに言葉を掛ければ、呆れたような表情を一度浮かべたあと、至極真面目な表情を作って言うので思わず声に出して笑ってしまった。
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    Replies from the creator

    京紫(けいし)

    DONEちょにゃ恋3の展示作品①
    他所の審神者に呪をかけられた特付きすぐの初にゃんと、接触禁止令の出たカンストちょぎの話。書き始めから時間が経っているのがよくわかる春設定。
    以下諸注意!
    ・シリアス風ほのぼのでハピエン
    ・ネームレス性別不明主が喋る
    ・まんばもよく喋る
    ・他の刀剣も少し出てくる
    ・にゃんが他の刀剣等に対し暴言を吐くシーンがある
    ・設定ゆるゆるの呪が出てくる  など何でも大丈夫な方向けです。
    【展示①】嫌よ嫌よという呪い他所の審神者に呪をかけられた特付きすぐの初にゃんと接触禁止令の出たカンストちょぎの話。書き始めから時間が経っているのがよくわかる春設定。
    注意・ネームレス性別不明主が喋る
    ・まんばもよく喋る
    ・他の刀剣も少し出てくる

    「嫌よ嫌よという呪い」

    資材を蔵に閉まったあと、湯浴みに行くもの、腹が減ったと厨を覗きに行くもの、道中に買い求めた土産を仲の良い刀に渡しに行くものと、先に部隊長が主への報告に行ったこともあり特に解散の合図もなくそれぞれが散っていく中、長義も自室へと足を進める。
    長義の暮らす本丸では特に希望がなければ、刀剣たちには個室が与えられる。そう広さはないが個人的な空間を望むものには有り難がられているし、兄弟刀や見知ったものとの同室も望めば少し広めの部屋を与えられるので、刀剣たちからも文句は上がらないし主も部屋割りに悩まなくて済むからと零していたのを聞いている。
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    京紫(けいし)

    DONEちょにゃ恋2展示作品①
    ちょぎに想いを告げられて、二振りでの遠征任務中に恋や愛について考えるにゃん。
    弊本丸の設定多数。
    終古朽ちるその時まで「終古朽ちるその時まで」

    〝山姥切長義を隊長とし、二振りでの遠征任務に命じる〟
    近侍づてに呼び出された執務室でそう聞かされた南泉の心の中を、見せられるものならば見せて回りたいほどには動揺をしていた。何故いまなのか。長義からの差し金や陰謀も考えられるけれど、目の前に座る南泉の今の主はそういった刀の我が儘を聞き入れることはほとんどなかったし、もしあったとしても全て南泉に話したうえで「山姥切はご希望らしいけど南泉はどうする?」と聞いてくれるであろう。
    だからこれは本当にたまたま偶然、何も知らない主の起こした奇跡なのだろうけれど、正直なところ南泉の感想は勘弁してくれ、であった。
    出来るだけ早い出発をと、先に長義には話を通したことを告げた主は南泉の否の返事を聞くこともなく、さあさあ急いでと固まる南泉を執務室から追い出した。まあ残ったところで任務を拒否出来るわけもなく、身支度も心の準備もろくに出来ないまま時間だけが過ぎ慌てて門に向かう羽目になったはずなので、その強引さに今は助かったのかもしれないけれど。
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    京紫(けいし)

    DONETwitterで参加した第39回毎月ちょぎにゃん祭りの再掲です。
    お題「スイカ」
    夏バテにゃんとなんとしても食べさせたいちょぎ。
    おつかいという名のデートの話。でもなぜかメインはスイカじゃなくて桃。少し誤字や言い回しなど訂正しています。
    第39回毎月ちょぎにゃん祭り お題「スイカ」「朝は食べてた?」
    「冷や汁を少しだけ」
    「昨晩も唐揚げだと喜んでいたわりには食べてなかったんじゃないかい」
    「一つ食べて悔しそうにしながら後藤にあげていたよ」
    「僕たちは食べなくてもそこまで生活や出陣に支障をきたすわけじゃないけど、南泉くんはやつれていってる気がするし心配だよね」
    朝餉の片付けも終わり、早朝からの慌ただしさがようやく落ち着いた厨。あと一刻もすれば昼餉の準備にまた騒がしくなるのだが、その前の僅かな休息の時間帯に顔を出した長義はお目当てであった祖――燭台切光忠と、歌仙兼定を捕まえ、愚痴という名の相談をしていた。

    昨年の小雪の頃に顕現した猫が、初めての夏の訪れにすでにぐったりと――主曰く夏バテというらしい――していて、ほとんど食事をとらなくなってしまったのだ。本丸内はそれなりに過ごしやすい温度に保たれているが、それが余計に外気温との温度差で体調を崩しやすく。かといって冷房もつけずに本丸内で過ごせるはずもなく、南泉は出来るだけ冷房を抑えた部屋で静かに眠ることが増えた。
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    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767