二度目はない0
赤が雪の上に降る。戦士としては小さすぎる体がまだら模様の銀世界でゆっくり崩れ落ちた。駆け寄って容体を確かめなければならないのに、足は縫い止められたかのように動かない。敵も味方も何か叫んでいるというのに耳は一切を拾わない。
光を失っていく瞳を、ただ茫然と見つめた。
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タルタリヤと過ごす日々は、深い海に沈められているようだった。
彼は少し歳の離れた幼馴染で、私は生まれた時から面倒を見てもらっていた。大学に進学した今でもそれは変わらず、彼が暮らしているマンションに身を寄せて、朝は起こされて夜は寝かしつけられる。食事も彼が作ったものを口にして、髪もメイクも彼に整えてもらい、彼が選んだ服を着て、どこに行くにも彼が送り迎えをする。一度、このままでは人として堕落しきってしまうからと、甲斐甲斐しく世話を焼き続けるタルタリヤに自立したい旨を伝えてみたことがあるが、蛍は俺なしでは生きていけないだろなんて、目がちっとも笑っていない笑顔で一蹴されてしまった。両親にも相談したものの、タルタリヤのところに居てくれるのが一番安心だと、やはり良い顔はされなかった。
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