Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    水月 千尋

    @arukurein

    短すぎるものは恥ずかしいのでフォロワ限。
    R18はリス限。
    一部、支部に置いてあるものとかぶってる。

    マイタグを細かく付けたので
    少しは作品を探しやすいといいなぁ……
    と、思っている。


    【リスト追加条件】
    ・Twitterプロフに
    『18↑高卒済』以上とわかる記載があること。
    ※『18↑成人済』『成人済』は✕
    ※『19↑』『20↑』はそれのみでOKです

    リスト追加ご希望の方は、
    当アカウントへ🎈🌟とリプを飛ばしてください。
    (🎈🌟の絵文字だけで大丈夫です)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 70

    水月 千尋

    ☆quiet follow

    類司。
    高校生の2人。

    恐らく2年以上前に書いたもの。
    多分ツイで投げたきりでどこにも置いてない気がするので、置いておきます。

    #類司
    Ruikasa
    ##類司
    ##2000字以下

    【未送信メール】【未送信メール】
     オレンジ色に染まり始めた放課後の屋上。時折ひゅるりと肌寒い風が通り抜けていくその場所の冷たいドアを背に座り込んだ僕は、スマホのメール画面に文字を打ち込む作業を延々繰り返していた。思案して指を止めては一行打ち込み、さらに三文字打ち込んでは保存して、また全部消して打ち込んで……といった具合に。
     そんな、演出のメモを取る時と同じ打ち方のせいだろう。未送信メールの数はあっという間に五十を越えた。このままいけば一度も送信できないままに三桁の大台に乗るのは火を見るより明らかだ。僕は肺の奥に溜まった気持ちの淀みごと深々と息を吐き出し、空を見上げた。
     ゆっくりと、しかし確実に暮れていく空を、天を駆けるペガサスの尾にも似た流線形の雲が駆け足で流れていく。それがどんどんと遠ざかって──やがて空の果てへと消えていくまで見送ってから、僕は意を決してまたメール画面と向き合った。
     ……もう指は迷わない。綴る言葉はシンプルに。体裁のいい文章も考えない。素直に、気持ちそのままを入力して、送信する。
     宛先は──『天馬司』だ。
     それが無事に送信された事を目で確認した僕は座ったまま半回転し、今度はドアと向き合った。軽く指を曲げた手で、眼前に立ち塞がる金属の板をノックする。

    「……ねえ司くん、まだそこにいるんだろう」

     返事はない。音もない。
     それでも彼がそこにいる確信があるから、続ける。

    「そろそろ顔を見て、直接話さないかい?」

     まだ淡い水色一色だった空の下で、僕は彼と些細な言い合いをしてしまった。いや、些細と思っているのは僕だけなのかもしれない。何せ彼の方は珍しく言葉を詰まらせると怒ったような呆れたような顔になって、言葉を交わすどころか、目も合わせてくれなくなったのだから。更にはそのままさっさと帰ってしまいそうだったのだが、このまま別れてはいけない気がした僕は咄嗟に──ドア越しでも構わないから話をしよう──と引き留め。今に至るのだった。

    「せめて声を聞かせてくれないかな」

     ドアにひたりと手を当てた。冷気を含む風にたっぷり冷やされた金属のドアは、触れる生き物は許すまじと言わんばかりに手の熱をあっという間に吸い取ってしまう。まるで彼の拒絶そのものに思えてくる。
     ──さすがに被害妄想かな。
     心の中で自嘲しつつ、ドアに触れたまま言葉を継いだ。

    「さっき君にメールを送ったよ。でも大事なことは直接話したいと思って…………ねえ、司くん」

     こつんと額を当てて寄り添う。


    「お願いだから──顔を、見せて」


     祈りをこめて。人工的な天の岩戸を前に僕が出来ることは、もうこれ以上何もなかった。
     と、次の瞬間だ。
     ぎぃぃ、という蝶番の低いうめきと共にゆっくり扉が開かれて一対の琥珀がこちらを覗き見てきた。しばらくぶりに正面から視線を交わせた、それだけで飛び上がりたいくらい嬉しくなったが、そのままドア向こうから姿を見せた彼はまだ口をへの字に曲げたままで。声を発するより先に、その手に持っていた黒のマフラーを無造作にこちらへ放り投げた。
     僕が慌ててそれをキャッチすると、司くんはまた視線をそらしてぼそぼそ答える。

    「……メールは見た。とにかく帰るぞ、類。そろそろ戸締まりされる」
    「そ……う、だね。こんな時間まで引き留めてわるかっ──」
    「それから」

     今度はズボンのポケットから青い手袋を取り出し、僕の冷えきった手を片方ずつ鷲掴みして強引にはめていく。
     そして深くうつむき、


    「オレも、送れなかったメールがあるんだ。……後で送る」


     一瞬、怒りが継続しているのかと思った。が、すぐに髪の間からのぞく耳の端が真っ赤になっているのが見えて、ほっと胸を撫で下ろした。どうやら無事に和解出来そうだ。
     鼻歌を歌いたい位の気分でいそいそとマフラーを巻く。と、そんな僕の前で彼が──オレも悪かった、すまん──そう言って深々うなだれたものだから、僕はもういいんだよと答える代わりにぎゅっと抱きしめた。その身体は、彼の背中と腰に貼られたカイロのお陰かぽかぽかと温かい。さすが司くん。僕に──なぜお前は何度言っても寒さ対策をせんのだ!──そう怒っただけはある。
     今度から、もう喧嘩にならないよう防寒対策を心がけよう。
     彼の手袋に包まれた手で、彼のにおいがするマフラーを鼻先まで引き上げて。僕は固く固く決心したのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💞💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    水月 千尋

    DOODLE参謀🎈×将校🌟。(モブ参前提)
    単話調にタイトルついてますが、実質4話目。

    まだ完結してませんが、以降の話は作成中。


    ========


    【前話】
    →https://poipiku.com/599411/10134333.html
    【すれちがいの午後】
     暖かな陽気。穏やかな風に、やわらかい日射し──。前日の肌寒さが嘘のように、今日は朝から春めいた良い天気だった。屋敷前の木々へ羽を休めに来たらしい小鳥のさえずりも、心なしか賑やかだ。
     そんな変化は窓の外だけにとどまらない。普段は日当たりが良いとはいえないこの執務室にも陽光が射し込んできていた。ささやかな恩恵程度ではあるが、窓際に飾った一輪挿しの花瓶越しの光が今座っている机の所まで届くのは初めて見る。もう少し暖かくなってきたらこの部屋のまた違う一面を見られるのかもしれないと思うと、それはそれで楽しみだ。
     一方で、机の端に積んだ要望書の量は昨日や一昨日と何ら変化はなかった。放置しているのではない。処理出来た分と同じくらいの枚数が翌朝に届く為、一向に減っていかないのだ。作業自体は一枚一枚に目を通して可否のサインをしていくだけではあるものの、その可否を決めるのに手間取る案件も当然混在していて気も抜けない。
    6331

    related works

    recommended works

    neno

    MOURNING成人済みの付き合ってない類司のはなし。タイトル重そうに見えますがめちゃくちゃ明るい(?)普通の話です。
    ※成人済みしてる。
    ※めーっちゃ軽い嘔吐表現があります。
    復讐「る、類……急に起こしてすまん」

    今目の前でかわいらしく布団にくるまって、その隙間から僕を覗いているのは司くんである。司くんはお酒の飲み過ぎで昨夜の記憶がないらしく、起きたときに置かれていた状況を未だ飲み込めずにいる。司くんが言うには、起きたときに裸の僕がなぜか横に眠っていたらしい。驚いて自分が布団から飛び出すと、なぜか自分自身も脱いでいて、咄嗟に僕を叩き起こした、という話だった。
    「……その、昨日、なにがあった……?」
    「うーん、僕もあまりよく覚えてないな。たしか……、ああ、思い出した。昨日はむし暑かったから、二人で裸で寝ちゃったんだ」
     事実無根、すなわち嘘八百である。思い出したもなにも僕の頭にはしっかりと昨夜の記憶が刻まれていた。ついでに言うなら、昨日はむし暑くもなかったが、僕にとっても司くんに忘れられていた方が好都合である。それに、司くんにとってもそれが一番いいだろう。僕の言葉に司くんはあからさまにほっとした表情を浮かべている。
    2478