一目惚れ 照りつける太陽が肌をジリジリと焦がす。歩くだけで汗が出て、じっとりと鬱陶しい。そんな中、一人走り続ける姿があった。名前も知らない男の子。見たことがないから、後輩かな。グラウンドで一人走り続ける彼は、金色の髪の毛を揺らしキラキラと輝いていた。
「わぁ、早い…」
なんとなく目を惹かれ、まじまじと見てしまう。短距離走をしているらしく、何度も何度も行っては帰ってを繰り返している。乱雑に腕で汗を拭いとる姿が様になっていた。じっと見ていると、ぱちりと目が合う。やば、と思ったら彼がこちらに走りよってくる。
「俺に何か用ですか?」
耳障りのいい声色に、天は二物を与えるんだなぁなんて考えた。見目の良さと、運動神経と、声の良さと…あれ、これじゃ三物か。
「あ、ええと…そうだ、これ」
先程買ったジュースを手渡す。丁度よく買っていたのはスポーツ飲料だった。少しは彼の役に立つかもしれない。
「ジュース…?」
「あ、口つけてないから安心してね。 その、走ってた姿が綺麗だったからさ。 つい見とれちゃった。 見てたお詫びに貰ってよ」
じゃあ、僕はこれで。練習頑張ってね、と伝えその場を後にする。輝く太陽に照らされた、輝く髪を持つ男の子。夏も悪くないかもしれないな、ぼくには似合わないけどなんて思いながら家を目指す。残された少年の顔が真っ赤なことには気づかず。