繋がれた手 ほら、遅れちゃうよと握られた手が熱い。まるで火傷してるみたいだ。ぎゅっと握る手の強さはやっぱり男性のそれで、あぁこんなに綺麗でも俺と同じ成人男性なんだなって。繋がった熱が嬉しくて、こんな感情を抱いてるのが後ろめたくて、上がる口角を抑えながら視線を下げる。あぁ、無邪気に喜べたらどれほどよかっただろう。
「ミスタ?」
シュウが不思議そうに俺を見る。なんだか悪いことをしている気分になって、目を合わせられなかった。
「どうしたの? 体調悪かった?」
「や、平気だけど。…シュウさ、その、誰とでも手ぇ繋ぐの?」
「んー? どうだろう。 あんまり意識してないかも」
少し上を向いたシュウは何事もなさげにそう呟く。当たり前だ、そんな特別な事じゃない。それでも、俺にとっては特別で。
「俺あんま手握んないから新鮮だわ。 あ〜、ひっぱらなくても行けるから離していいよ」
へらりと笑って、掴まれた手を離そうとすれば逆にぎゅっと握られる。
「シュウ?」
「んへへ、せっかく繋いだんだしもうちょっと繋いでようよ。 どうせみんなのとこ行ったら離すんだからさ」
そんなこと言われたらわかったとしか言えなくて、恐る恐る手を握り返す。上がらないように気をつけていた口角は上がっていくし、幸せすぎて泣きそうだ。シュウにはなんてことないことなんだろうけどさ。
繋いだ手を握り返される。それだけで胸が弾んだ。ただ遅れそうだったから繋いだだけ。皆のところに連れていくだけ。そんな口実で、ボクは今好きな人の手を握っている。
手を握るぐらい理由をつけなくても出来るけれど、ガードが固いミスタには理由をつけてやった方が都合がいい。何も無しで手を繋いだら、子供じゃねぇンだからとか言って離されてしまう。自分の体温よりほのかに冷たい手を握り、バレないぐらいにゆっくりと歩を進める。
あーあ、つかなきゃいいのに。そんなことを考えてるのはミスタには内緒だ。きっとミスタは、なんでもないボクを望んでいる。でも、そんなのとっくに無理で。気がついたらいつの間にか君のことが好きなボクになっちゃってた。関係が変わるのはいつだろう。ボクから言うのかな?それとも、ミスタから?きっとミスタは言ってくれないだろうけど。それでもぽろりと口に出さないかって期待する。いつか、ミスタと手を繋いだりハグしたり、キスなんかしちゃったりするのが当たり前の関係になりますように。