これからの日常 サイドランプのみが付けられたほの明るい中、ちゅくちゅくと絡み合う音が響く。ルカの舌がぼくの舌を絡め取り、じゅっと吸われる。くらくらと馬鹿になっていく頭を必死に起こし、自分からもとルカの舌へ擦り寄る。
「あ、そういえば」
離された口元からは細い銀の糸が垂れ、行為の深さを見せつけられる。なんだか気恥ずかしくなって目を伏せると、ルカの手が耳に持っていかれる。
「耳、塞ぐとイイって聞いたんだ」
ちゅ、と控えめなキスの後に先程の続きというように舌がねじ込まれる。ぐちゅりという音が体に響き、頭がどうにかなりそうだった。
「ル、ルカ……」
「何、シュウ」
「これ、ちょっとその……恥ずかしい」
ルカの胸を叩き、距離をとる。恥ずかしくて目も合わせられない。どうせヴォックスあたりが入れ知恵したんだろう、あとで一言言ってやらねばならない。
「……これから、もっと恥ずかしいことするのに?」
する、とルカの手が太ももを撫ぜる。ぴくりと反応する体がより恥ずかしさを訴え、顔が真っ赤になっている気がする。それに、触られた手には銀色の誓いが嵌められていて……。
「……ぼく今日どうにかなっちゃうかも」
「ははっ、大丈夫だよ。 俺に任せて?」
「任せたらどうにかなっちゃうの」
じと、と睨むがルカは幸せそのものという笑顔を浮かべ、再度触れるだけのキスをする。
「ねえ、シュウ。 手見せて?」
「手? いいけど……」
そ、と掴まれたのは左手で。そこにはルカと同じく銀色が光っていた。
「……シュウ、俺のお嫁さんだね」
「男なんだけど」
「じゃあ旦那さん? 俺が旦那さんがいいなぁ」
ちゅ、ちゅと指輪にキスを落とす。柔らかく、優しく、壊れないように。なんだかそれがむず痒くて、手を引っ込めた。
「シュウ?」
「て、手じゃなくて……口にしてよ」
「OK」
ちゅ、ちゅとふりそそぐキスの雨に体を委ねる。軽いキスは好きだ。たくさん好きって伝えられてる感じがする。深いキスも好きだけど、頭がおかしくなりそうでちょっと怖い。ぎゅ、と背中に手を回し抱きしめる。ルカの香水の香りが充満し、そこにいるんだと改めて感じさせられる。
腹を撫でられ、キスを落とされ、じわじわと全てを剥がれていく。気がつけば何も纏っていない状態で、ルカだけがいつも通りだった。
「ぼくだけじゃなくてルカも脱いでよ」
「ははっ、シュウ拗ねてる?」
可愛い、とおでこにキスをひとつ。別に拗ねてなんてないけどさ。ばさりと脱ぎ捨てられたシャツは乱雑に投げられ、あとでアイロンをかけなくちゃなんて頭をよぎる。体を撫でる手には、やっぱり銀色が煌めいていて……。
「なんか、照れる」
「? 何が?」
「指輪……思ったより触られた時に感覚あるし、キラキラ光って見えて」
「慣れてよ。 これからはこれが普通になるんだから」
けらけらと笑いながら、ぎゅっと手を繋ぐ。
「ねぇ、挿れていい?」
「聞かないでよ」
ゆっくりと瞳が閉じられ、唇に柔らかい感覚が落ちてくる。夜はまだ始まったばかりだ。