シュウはそんな格好しない 配信も終わり、一息つこうとリビングに行った時のことだった。あの日は長時間配信で疲れ切り、気分転換にアップルジュースを飲もうと思ったんだ。時間は夜更けで、もうみんな寝静まってるだろって感じ。けど、リビングには明かりがついていた。珍しいな、誰がいるんかなと思い足を進めると、そこには─
「あ、ミスタ。 配信お疲れ様」
ダボッとしたパーカーを着た、シュウが立っていた。生脚を晒して。
「なっ……?!シュウ、なんて格好してんの!」
「それは自分の姿見直してから言って欲しいかな」
オレの服装と言えば、シュウと似たようなオーバーサイズのパーカー一枚だった。
「俺はいいの! シュウはダメだろ!」
「なんで?」
「なんで、って……」
目のやり場に困るからですけど。あと他の奴らに見て欲しくないし。
「とにかくダメ! ダメだからちゃんと服着て!」
「着てるよ?」
「それは着てないに入ります!!!!」
きょとんとしたシュウの顔が、どんどん悪戯を思いついたような歪みを帯びていく。ちらりと手を裾にかけ、ゆっくり上に持ち上げる。パンツが見えるかと思ったところでその手は止められた。
「何期待してるの。 助平」
「〜〜ッッッ!!!!!」
気づくとオレはその場から逃げ出していた。アイクの部屋を高速ノックし、寝ぼけたアイクにシュウが反抗期だと泣きつく。アイクはまたかといった感じで、オレの言葉を受け流す。
「うん、シュウがね、服を着てなかったの……。 そう……。 まぁそういうこともあるんじゃない」
「何言ってんのアイク! シュウだよ!? 俺じゃなくて!」
「わかってるけどさぁ、寝ていい?」
修羅場明けで眠いんだよ、とそのまま布団に戻ろうとするアイクを必死に引き止める。
「寝るならオレもここで寝させて!」
「狭いから嫌」
「頼むよ、出るの怖いんだ!」
「ミスタ〜? いる?」
「っ!!」
ドアの外から聞こえる声はシュウのもので、ひやりと汗が垂れる。待て待て、服着てないんだぞ?そんな格好でアイクの前に出せるわけ─そんな俺の心なんて考えてくれず、扉はゆっくりと開かれた。
「あ、いたいた。 ダメでしょ、アイクに迷惑かけちゃ」
そこにいたのは、いつものパジャマを身にまとっているシュウだった。もちろんズボンも履いており、ボタンもきちんと閉められ清楚そのものだ。
「……シュウだ」
「ぼくだけど」
「シュウ〜〜!!」
「わっ」
「ねぇ、もう寝ていい?」
記憶通りの清楚なシュウに思わず抱きつく。あぁ、やっぱり夢だったんだ。悪い夢を見た。いや、役得ではあったけど。
「ほら、ミスタ。 ぼくらももう寝ようよ」
「うん、寝る、よかった」
シュウに手を引かれ、二人の寝室へ足を進める。ちなみに後日、また生脚のシュウと遭遇し悲鳴をあげた。