僕らの秘密基地家の離れの物置小屋。ミスタとシュウはそこに毛布を持ち込んで二人で話しをするのが好きだった。
「ねえ、きょうチョコもってきたの。いっしょにたべよ」
「はんぶんこだね」
くふくふと笑い、板チョコを半分に割る。毛布にくるまって、暗闇の中で2人は笑いあった。
「ここさ、おれらだけのひみつきちだね」
「ぜったいほかのひとにはないしょだよ」
勿論、アイクとヴォックスは2人が度々この秘密基地で遊んでいることを知っている。まだ小さいルカにはバレていないが、時間の問題だろう。
「ねえ、ふたりだけのひみつふやしちゃわない?」
シュウが悪戯げに笑う。
「ふやすって?」
「あのね」
ミスタの耳に近寄り、こそこそと誰もいないのに小声で話した。
「おおきくなったら、ここでけっこんしきあげるの」
いいでしょ?と笑う。
「はは、さいこーじゃん。おれシュウとならけっこんしたい。ほかのやつとかやだ」
「ぼくもミスタがいい」
約束ね、と指切りを交わす。2人の約束が果たされるのはいつになるのか。
「なんて話してたの、覚えてる?」
「忘れるわけないじゃん」
「まさかここまでごちゃつくとはなぁ」
物置小屋には配信で使ったもう使い道のない小道具や、壊れてしまったけど捨てるのを忘れていたギターなどが散乱している。
「んはは、でも座れるスペースはぎりぎりあるよ?」
「マジでギリギリな」
シュウとミスタは、少ないスペースに腰を下ろす。もちろん、肩と肩がくっついて身動きが取りづらい。
「ね、ミスタ。手出して?」
そっと、ミスタの薬指に指環が嵌められる。
「生涯愛していくから、幸せになってね」
「シュウこそ、おれなら離れないで」
薄暗い倉庫の中、2人は愛を誓い合ったのだった。