触らせないで 恋ってどんな味だろう、愛ってどんな味だろう。砂糖菓子みたいに甘くてふわふわ?そんな可愛らしいものじゃないでしょ。どろりと喉に絡みついて離してくれって言っても離れなくてこびり付いて仕方ない。ぼくがミスタに抱いてる感情、それは。
「シュウ?」
「ん? なあに?」
「なんか考えてるみたいだったから」
「ふふ、ミスタのことだよ」
「なにそれ」
可愛いミスタ、ぼくの兄弟。
「ねえ、チョーカーつけて」
「いいよ、かして。 服も着せてあげようか」
「ええ? 自分でできるよ」
「言い方変えようか、ぼくにやらせて?」
「ふ、ふふ。 いいけど」
ああ、可愛いミスタ。誰にも渡さない、誰にも。
「今日はルカと遊ぶんだっけ」
「そう! シュウも来たらいいのに」
「んはは、行きたかったなぁ。 仕事無かったらよかったのに」
そうしたら、ちゃんと監視出来たのにね。その言葉を飲み込んで笑顔を作る。ルカに限ってミスタに手を出すなんてないだろうけど、何かの拍子で手が触れたり肩を組んだりするかもしれない。その程度を許せないぼくは心が狭いのかもしれないけど、愛してるんだから仕方ないよね?
「ヴォックスじゃなくてよかったよ」
「? なんで?」
「彼ならすぐにミスタの腰を抱くでしょ。 嫉妬で頭おかしくなっちゃう」
「はは! 言い過ぎだよ。 別に変な意味じゃないし」
「わかってるんだけどね」
それでも、ぼく以外がミスタと触れ合うと思うとぐつぐつと抑えられない感情が込み上げてくる。
「ね、ミスタ。 ルカとイチャイチャしないでね」
「えぇ〜どうしよっかな」
「ミスタ?」
「んふ、わかってるって。 しないよ。 おれにはシュウがいるもん」
ちゅ、と瞼にキスを落とされる。思わず頬が緩み、ミスタの頬に手を添えた。
「約束だからね。 ぼく以外に触らせないで」
「ちょっとだけなら許してくれる?」
「ダメ」
「はははっ! オッケー。 じゃあシュウ、そろそろでないと」
「うん…名残惜しいけど」
「帰ってきたらめいっぱい愛してよ」
おれ、待ってるから。そう言って笑うミスタがこの世の何よりも綺麗に見えた。