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    ztom_1616

    @ztom_1616

    フエノゼぇ
    低クオのラフを置いとく尻叩き倉庫

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    ztom_1616

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    書ききれないので供養( ✋˘ ˘👌 )フエノゼ

    月に読む手紙絡め合う指がしばらく会えなかった時間を埋めるように強く求め、これから、というところに似つかわしくない耳障りな音が響く。
    騎士団長召集用のコール音。
    瞬間、フエゴレオンはノゼルを手放し、ノゼル自身も素早く跳ね上がり連絡を受ける。
    「わかった、直ぐに向かう」
    先程まで掴んでいた厚く大きな手を求めるように爪がテーブルを掻いた。
    こんな時間に団長が招集されるなど余程の事だとお互いに理解しているので、余韻に浸る間もなく脱いだばかりの服を集める。

    ノゼルが例のややこしい構造の服を着ている最中、解けていた前髪をフエゴレオンが編み始めた。
    太い指先ながら、幼い頃の弟の髪を結っていた事もあり手際がいい。
    「また、だな」
    視界の端で月明かりに照らされた彫りの深い顔が微かに笑った。
    互いに求め会い始めたばかりの哀しさと団長という誇りある立場でせめぎ合う。
    出来上がると前髪に軽く唇を落とす。
    「やめろ」
    顔を背けて制止する。
    「すまん、急いでいるのに」
    その言葉が終わらないうちにノゼルはフエゴレオンを抱きしめた。
    「……これは、ズルくないか?」
    大袈裟にため息を吐いたフエゴレオンの胸部でノゼルは息を吸う。
    昔から知る匂いだが自分の腕が掴んで確かめられるようになったのはここ最近の事だ。
    編んでもらった前髪が崩れるかもしれない、と思ったのは強く額を擦りつけた後だった。
    「うるさい。動くな」
    背中に腕を回そうとするフエゴレオンを制止する。
    どういうルールなのかわからない、とフエゴレオンは眉根を寄せた。生真面目な両腕は動きを制限された時のまま静止した。

    (3秒だ)
    (3秒だけ)
    国の大事だというのは重々承知している、こんなことをする間があれば一刻も早く駆けつけて戻ってくればいいだけの話、ともわかっている。
    (だが、)
    日々研鑽を積みどんなに強く気高く、大魔法騎士という称号を与えられた者とて戦場に赴けば何があってもおかしくない。
    それをまざまざと見せつけられた。
    視界にチラつく燃える右腕を睨みつける。
    あれは私の驕りだ、と右腕をみては睨むという新しい癖が出来てしまったノゼルにフエゴレオンは何度か零したが、それは同じようにノゼル自身の驕りであることに等しい。
    敵の思惑に気づけずに王貴界の外に遠く離され、駆けつけた時には絶望的な状況だった。王族とも、紅蓮の獅子王団長とも、自分のライバルともあろうフエゴレオン・ヴァーミリオンが石畳の上に倒れていた。紅蓮よりも更に紅く、それでいておどろしい程の量の血が広がっていた。
    いつも血色が良く快活な顔が色を無くし、自身の属性である炎よりも熱く語りかける瞳からも意志が失われていた。
    流れているのはフエゴレオンの血であるのに自分の血が流れていく錯覚を起こした。視界がチカチカと見たこともない光りが瞬き、夜でもないのに薄暗くなっていくのがわかった。喉の奥が熱くなり身体を嫌な汗が這う。
    ノエルが必死に救命措置をし、レオポルドがまるで自分を映した鏡のように固まっていた。
    あの時、弟妹達がいなければ、それこそどのような暴挙に出ていたかしれない。虚勢で辛うじて立っていたと言っていい。
    思い出す度に指先が冷たくなり眉間の皺が深くなる。
    フエゴレオンの心音を確認するとするりと腕を外し、ローブを纏う。
    銀翼の大鷲団団長ノゼル・シルヴァになる。
    グリモワールで創成した水銀の大鷲に飛び乗ろうとした際に頬に触れるかどうかのキスをされる。
    「やめろと言った」
    添えられた手を払い除け、唸るような声を上げる。
    これ以上は猶予もない、と大鷲に乗る。

    お前から求められれば国の大事を放ってその逞しい腕の中に戻りたくなる。
    お前が触れただけで容易く揺らぐような者に成り下がってしまった自分を律しているのに。
    知らぬくせに。
    知らぬくせに。
    そう恨み言をぶつけてやりたい気持ちに勝るほど、知らぬままでいてくれねば嫌なのだ。

    奥歯を噛み締める。
    「無事を祈るくらいさせてくれ」
    「……覚えておけ」
    負け惜しみにしかならない言葉を吐くと水銀の大鷲が大きく羽ばたく。
    同時にバルコニーに続くガラス扉が開き、夜の冷たい風を送り込みベッドに僅かに残っていた熱を払った。
    悲しそうに、それでいて優しく微笑むフエゴレオンを残して飛び立つ。
    振り返らずに国の大事に向かった背中を見送り、自身も藍色に袖を通し腰布を締め、深紅のローブを纏う。
    「お前とのことを忘れたことなどひとつもない」
    主の帰りを待つ部屋に置き手紙の代わりに掠れた低い声が残る。


    大鷲が飛びたった同じバルコニーから、炎の獅子が満月に近づく月の夜を駆けだした。
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