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    最近忘羨沼に落ちました

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    支部にあげてるものの再掲。
    現代高校生AU忘羨。二人とも高校一年生の15歳です。転生ものじゃないです。
    魏無羨誕生日合わせで書いたものです。

    #忘羨
    WangXian

    ハロー、ハッピーバースデー 本日は魏無羨の誕生日である。
     そして世間的には、ハロウィンと同じ日だ。
     ハロウィンとは本来は死者の霊が家族を訪ねる時期である。その際に悪質な精霊や魔女から身を守るために仮面を被ったり魔除けの焚き火をしていたものが、いつしか子供達が仮装をして近所の家を回りお菓子を貰う習慣が出来ていった。それが色々と転じて、仮装をしてパーティをやる日のように様変わりしてしまっているのだが、魏無羨はこの行事が嫌いではなかった。
    「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
     そんな風に知り合い達に話を持ちかける。それで菓子が貰えればそれで良し、持っていないのであれば実は今日は誕生日なんだ! と答えれば、菓子以外の何がしかを渡してくれるのだ。
     魏無羨が何も用意をしていなくても、誕生日という免罪符のおかげで咎められることはない。溢れる菓子と祝いの言葉で満たされて、喜ばしい事この上ない日である。
    「魏兄、今日お誕生日なんですか? それなら、お菓子を持ち寄って皆でお祝いしましょうよ!」
     そこに同級生の聶懐桑が素晴らしい提案をしてくれたので、その場にいた気のいいメンツが大いに魏無羨の生誕を祝してくれた。昼食を終えた後の昼休み、魏無羨のいる教室はすっかりお菓子パーティの様相を呈していた。あまりに楽しいひと時だったものだから時間はあっという間に経過して、昼休みの終了時刻になっても大声で騒いでしまったのがいけなかった。
     午後一番の授業の担当であった藍啓仁先生がガラリと教室の扉を開いて、お祭り騒ぎの惨状を目の当たりにして、みるみるうちにお堅い表情が真っ赤に染まった。藍啓仁先生が一喝しようとしたまさにその瞬間、誕生日祝いに食らえ! と投げられたクリームパイを魏無羨が華麗に避けた結果、パイが見事に藍先生の顔面にクリーンヒットしたのは、本当に喜劇——いや、とんでもない悲劇であった。お笑いコントのようなワンシーンに、魏無羨が思わず腹を抱えて大爆笑してしまったのは不可抗力だ。それが決定打となり、藍啓仁先生の逆鱗に触れ、その場の主役であった魏無羨が矢面に立たされてしまったのは致し方のない事であった。魏無羨からすれば、パイを用意したのはクラスメイトの誰かであるし、パイを投げた実行犯は江澄だというのに、それについては言及されず有耶無耶にされてしまっているのが大変解せないが。その日の藍先生の授業の半分以上は、お説教タイムと化した。
     そして、放課後になった現在。魏無羨は、一年生唯一の生徒会メンバーである藍忘機と、生徒指導室にて二人きりで顔を突き合わせる羽目になっている。この学年一の成績を誇り、品行方正、雅正で優美、類稀なる美貌を持つ優等生代表の彼は、藍啓仁先生の甥であり秘蔵っ子であった。とにかく真面目一辺倒な頑固者、規律を遵守する事が第一で、風紀を乱す不届き者を懲らしめるいわゆる懲罰係の役割を任されていた。魏無羨と藍忘機は同学年であるもクラスは違う。だが、成績優秀でありながらも融通無碍で問題児である魏無羨は入学初日から藍啓仁先生に目を付けられており、すぐさま藍忘機をお目付け役にしたものだから、クラスメイトじゃないのにすっかり二人は顔馴染みになっていた。
     藍忘機の美しい相貌は苦虫を噛み潰したかのように渋いものになり、机を挟んで向かいに座る魏無羨をじっと睨みつけている。常日頃から、藍忘機の表情からは楽しそうといった類のものは見かけたことはないが、今日は特に険しいものだ。幾許かの苛立ちを垣間見せている。
     その強烈な視線に段々と居た堪れなくなってきた魏無羨は、自ら率先して口を開いた。
    「藍湛、俺の言い分を聞いてくれよ。今回の件に関しては、本当に悲しい事故だったんだ! 俺が指示して藍先生の顔目掛けてパイを投げさせたわけじゃない、俺を標的にしてたパイを避けたらたまたま先生に当たっちゃったのさ!! 奇跡的な光景に思わず噴き出して笑っちゃったのは、もうしょうがないと思わないか? ああなってしまった一因が俺にあるのは重々承知してる。でも、わざとやったわけじゃないのに、ガミガミと怒鳴られて反省しろと言われても俺にどうしろっていうんだ!」
     大仰に喚いてみせると、藍忘機はふうと溜息を一つ吐く。
    「……魏嬰、校則の書き写しを」
    「えええー!? そんなの、入学してから何度もやっているから、空で言えるくらいになのに、やる意味がないだろう!」
    「……覚えていても、校則を守れないのなら、それこそ意味がない」
    「あーはいはい、学校で菓子を食べるのは禁止、食べ物を粗末にするのは禁止、大声で騒ぐの禁止に違反してるってことだろう? わかってるさ。イベントに託けてバカ騒ぎして、規律を破るのは確かにいけないことだ。立場や性格的におまえが容認できないのも、わかってる。……けどさ」
     ——今日は俺の誕生日なんだから、少しくらい大目に見てくれたっていいだろう?
     そんな言葉を投げかけようとして、魏無羨はやめた。自分の誕生日を大っぴらに告げて祝ってもらうなんて今まで何度もやってきたのに、藍忘機にそれを強要するのは何となく嫌だった。
    「……君が書き写しを終えるまで、私もいるから」
     藍忘機は凛と姿勢正しく座ったまま、魏無羨に紙とペンを差し出す。やはり、見逃したりはしてくれないようだ。
    「……わかったよ、観念して書き写すよ」
     差し出されたものを受け取り、魏無羨は机に向かう。携帯している生徒手帳を広げると、ここからここまでと書き写す範囲を指定する。入学当時は校則全部を三回書け、なんてこともあったから、昔と比べればまだ処罰は甘くなっている方だろう。藍忘機とは正反対に猫背で行儀悪く頬杖をつきながら、白紙を文字で埋めていく。
    「しかし、今時菓子の持ち込みも許されない高校っていうのもどうなんだ? みんなで菓子をつつき合いながら歓談することで生まれる友情だっていくらでもあるだろうし、ハロウィンで駄目ならバレンタインとかも悲惨になっちゃうな……」
     手を動かしながらも、魏無羨は口を動かすことを止めない。カリカリと紙の上にペンを走らせる軽快な音は、二人きりの生徒指導室によく響いた。
    「俺は甘いものよりは辛いものが好きだけど、やっぱり手作りチョコは特別感があってテンションがあがるんだよな~。なあなあ、藍湛は今まで何個くらいチョコを貰ったことある?」
    「……」
    「言いたくないのか? そんなところでケチケチする必要なんてないだろう。もし言うのが恥ずかしいってことなら、今年のバレンタインはチョコの数を競争して——」
    「魏嬰。学校で菓子を食べるのは禁止」
     じろりと、藍忘機の視線がきつくなる。つい先ほど、紙に書いた校則をまだ理解できていないのか、と視線だけでも伝わってくる眼力だ。また少し、藍忘機の機嫌を損ねてしまったようで、魏無羨はハハハと乾いた笑いを零しながら誤魔化す。
    「ああ、そうだったそうだった。でも、ここで食べるのが禁止って話なんだから、ただ貰うだけだったら校則違反にはならないだろう?」
    「…………」
    「ごめんごめん、そんなに目くじらを立てるなって。美人が台無しだぞ?」
     茶化すと、藍忘機はかぶりを振る。
    「君は、黙って書き写しをして」
    「藍湛、それは俺に死ねって言ってるのとおんなじだぞ? 無茶を言わないでくれ。俺の話題が気に入らないなら、おまえから何か話題を提供してくれよ」
    「…………」
    「ほら、ないじゃないか! このまま書き写しをしているだけだと、退屈過ぎて居眠りしそうだ」
     幼子のような駄々を捏ねる。せっかく藍忘機と過ごしている時間を、ただ処罰を受けるだけに費やすのは勿体なさすぎる。なので、魏無羨としては藍忘機の機嫌がこれ以上降下しないよう、彼に話を振ってみた。寡黙な藍忘機をせっついて、どうにか話を続けようとする。
    「魏嬰。今日は……」
    「今日?」
    「今日の……昼休みは、楽しかった?」
     藍忘機の話題に、魏無羨は内心首を捻る。藍先生から、魏無羨がクラスメイト達と面白おかしくはしゃいでいた事は既に聞いているはずで、羽目を外し過ぎたから今こうして反省を促されているところである。わざわざ確認する藍忘機の意図がわからなかった。
    「そりゃあ、楽しかったよ。みんなでわいわいやって……手作りの菓子を持ってきていた子もいたし。みんな気がよくてノリのいい奴らばかりさ。でも……」
     江澄、聶懐桑、様々なクラスメイト達に誕生を祝ってもらって、確かに心は踊って満たされた気持ちでいた。その最中に、ふと去来した想いを魏無羨はぽつりと零す。
    「この場に藍湛もいたらなあって、思ったよ」
    「…………」
    「そもそもクラスが違うし、実際にあの場におまえがいたら、大騒ぎになる前におまえに叱責されて、藍先生が説教するまでもなく事は片付いてただろうけど。だから、本当にただの空想でしかないけどな」
     魏無羨の誕生日を祝うメンツの中に、藍忘機もいて欲しかった。己が生まれたことを、この男にも祝って欲しかった。そう願ってしまうのは——魏無羨の心の内は、藍忘機で多くを占められているからだ。
    「……さてと、書き写しが終わったぞ!」
     びっしりと校則で紙を埋め終えて、魏無羨はがたりと席を立ち上がった。
     藍忘機に話題を振ったのは、もし真面目な彼であれば魏無羨の誕生日を覚えていれば一言くらい祝いの言葉を送ってくれるのではないかと僅かに期待していたからだ。けれどそんな言葉はなく、魏無羨は肩を落とす。きちんと教えたわけではないから、自分の誕生日を知らなくても仕方がないことだ。少し寂しくはあるが、今更祝ってくれとも強請りづらかった。普段は恥知らずと称される身ではあるが、本心を曝け出すのはあまり得意でなかった。
     何事もなかったかのように、笑顔を張り付ける。
    「これでようやく帰れるな、藍湛——」
     せめて一緒に帰るくらいはどうだろうかと誘おうとした瞬間、同じく席を立った藍忘機にぱしりと右手首を掴まれた。
    「? どうした、藍湛。俺はちゃんとノルマを終えたぞ?」
     もしかすると、この処罰だけでは足りてないのだろうか。魏無羨を捕らえる藍忘機の白皙の顔は何故か強張っていて、魏無羨まで緊張してしまう。
    「君は……」
     藍忘機は戸惑いながらも、何かを必死に魏無羨に伝えようとしている。それを汲み取って、魏無羨は掴む手に己のものを重ねた。
    「俺が、どうした?」
     優しく先を促すと、はあと悩まし気な吐息を漏らして、じっと玻璃の瞳がみつめてくる。
    「君は……破天荒であまりに奔放で困った人だけれど、情に深くて温かく人との繋がりが広い。多くの人に愛されて、存在を祝福されている。それはとても喜ばしいことだ。でも——」
     ぐっと腕が引かれると、魏無羨の身体はすっぽりと藍忘機に抱き込まれてしまった。
    「そんな君を独占したいと思う私を、浅ましく思う?」
     突如として距離が縮まり、低く沁みる低音に耳元でそんなことを囁かれてしまって、魏無羨は固まる。
    「ひっ、ら、藍湛?」
     書き写しをしていた時の溌溂さは鳴りを潜め、まるで借りてきた猫のように魏無羨は大人しくなる。バクバクと心臓がけたたましく鳴るものだから、得意の口もうまく回らない。
    「私は——本当は君の友人達よりも、先に君を祝いたかった」
     その言葉に、魏無羨は目を見張った。まじまじと、美しさを湛えた藍忘機の顔を見据える。
    「誕生日おめでとう、魏嬰」
     望んでいたものを与えられて、魏無羨はぶわりと嬉しさに身を包まれる。火が出るくらいに全身が熱く、ふるりと身を震わせた。
    「藍湛、おまえ、俺の誕生日知ってたのか」
    「……自分の恋人の誕生日を忘れるわけがない。覚えていないと思われているのは、心外だ」
     恋人。そう、魏無羨と藍忘機は恋仲である。そうはいっても、想いを通い合わせたのはつい先日の話で、まだ恋人らしいことは一つも出来ていない、初々しい間柄なのだけれど。
    「もしかして、先に他のみんなに俺の誕生日を祝われちゃったから、拗ねてたのか?」
    「……」
    「バレンタインの話に乗り気じゃなかったのも、俺が他の子からチョコ貰うのが嫌だから?」
    「…………」
     藍忘機は魏無羨の質問に口を閉ざしたが、顔を背けたことで見えるようになった形の良い耳がじわじわと朱に染まりあがっていく様が見えて、答えは明白であった。せっかく放課後に恋人と二人きりだというのに、始終藍忘機が不機嫌さを纏っていた理由が解って、魏無羨はうずうずと口元が緩んでしまう。
    「何だよ、俺はおまえにすぐ祝ってもらえなくて悲しかったんだぞ? それなのに、おまえときたらそんな嫉妬してただなんて……可愛いなあ藍湛!」
     がばりと、魏無羨は藍忘機の首元に両腕を回して抱き着き直す。その勢いで体幹を揺らすことなく、藍忘機はしっかりと抱きとめる。ぴたりとくっつく互いの身体の体温は高く、分かつ熱がとても心地が良かった。
    「へへ、らーんじゃん♪」
     気分は上々で途端に機嫌がよくなった魏無羨は、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
    「……何?」
     呼ばれた藍忘機はまだ羞恥を残しているものの、素直に返事をくれる。これなら、お決まりのセリフを言っても大丈夫そうだ。
    「トリックオアトリート! お菓子をくれないとイタズラするぞ?」
     ハロウィンに託けて、魏無羨は強請ってみる。優等生の藍忘機が菓子を持っているはずがないので、返事は一択でしかない。さてイタズラをしてやろう——と魏無羨が意気込んでいると。
    「なら、鞄の中に君が好きな菓子を持ってきているから、それをあげる」
     飄々と告げられた内容に、魏無羨は絶句した。
    「なっ、生徒会のおまえが、まさか菓子を持参してくるなんて! ……想定外だぞ」
    「君が言った通り、ここで食べなければ校則には違反しない」
     校則を破りはしないが、ギリギリのラインを攻めてくるあたり、藍忘機も少し(悪い方向に)魏無羨に感化されているらしい。魏無羨はぐうの音も出なかった。
    「想定外だ。菓子を持ってない藍湛に、とっておきのイタズラをしてやろうと思っていたのに」
    「……悪戯、とは?」
     魏無羨が残念そうに声を上げていると、藍忘機があどけなく首を傾げる。
    「ふふ、知りたいか? こういうやつだよ」
     ぐっと藍忘機の首に回した腕に力を入れて引き寄せると、その白い頬にキスを送った。ちゅっと可愛らしいリップ音をたてて離れてみると、ピシリ、という効果音が聞こえてきそうなくらいに藍忘機は固まっていて、悪戯の成功に魏無羨は愉快になった。
    「ちょーっとおまえには刺激が強すぎたかな? 本当、藍湛は初心でかわいい」
     キスを仕掛けたのはこれが初めてだ。堅物の藍忘機にはこういったことの知識は疎いだろうから、魏無羨がリードしていかないと。呑気にけらけらと笑っていると、魏無羨の身体に回っていた藍忘機の手の力が強まった。ん? と訝しんでいると、眼前にある藍忘機の表情が鬼気迫ったものに変わっていて、魏無羨は怯む。やり過ぎて、怒らせてしまっただろうか。後ずさって距離を取りたいところだが、藍忘機にがっしりと腰を掴まれていて、それは叶わなかった。
    「…………魏嬰」
    「な、なんだ藍湛?」
    「トリックオアトリート」
    「ん?」
    「お菓子をくれないと、悪戯をする」
     藍忘機の表情とセリフが一致していなくて、魏無羨は理解するのに時間を要した。どうやら、仕返しということか。
    「ええっと……じゃあ温情がくれたクッキーなら、おまえの口にも合いそ……」
    「人から貰ったものは駄目。君自身が用意したものを」
     無情にもぴしゃりと藍忘機に却下されてしまう。
    「えーと、それは……ない、な」
    「なら……」
     魏無羨は慌てた。イタズラと称して、藍忘機に一体何をされてしまうのか。思わずぎゅっと目を瞑った。
    「……んっ」
     藍忘機の手が魏無羨の後頭部に回されると、ふにゃり、柔らかな感触がする。唇に。驚いて瞼を開けると、豊かな睫毛を伏せた美貌の恋人にキスをされていた。藍忘機の唇は、少し離れてはくっついて、やわく啄まれる。優しくて、甘い、その所作にくらくらと陶酔してしまう。
    「…………君は……自覚が無さ過ぎる」
     何度も口づけられて、やっと解放された時に、少し苛立ちながらもそんな風に零された。その唇がしっとりと濡れていて、魏無羨はごくりと唾を飲み込んだ。
    「……藍湛。もっとイタズラしてって言ったら、してくれる?」
    「……もちろん、魏嬰」
     二人きりの生徒指導室で、恋人との甘いひと時を魏無羨は堪能した。
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    azusa_mtm

    PAST支部にあげてるものの再掲。
    現代高校生AU忘羨です。『ハロー、ハッピーバースデー』https://poipiku.com/602513/8742413.htmlの後日談になります。
    バレンタイン、前よりは進展してる二人。
    モーニン、ハッピーバレンタイン 二月という時期は、どうしてこうも寒さが堪えるのだろうか。暖房器具を使っていてもひんやりとした空気が部屋に充満している。カーテンの隙間から差し込む眩い日差しが朝を知らせ覚醒を促されるも、もぞもぞと魏無羨はベッドの上で布団に包まりそこから動こうとしない。
     本日は平日で、言わずもがな学生の身分である魏無羨は学校に登校しなければならない。そろそろ支度をするべきであると、頭では理解している。けれど、この温くて幸せな空間を自ら手放すのが惜しく、あっさりと欲に負けて再びうとうと微睡み始めてしまう。遅刻癖のある魏無羨が、より寝坊の頻度が増える季節である。
     入学した当時は、同級生兼幼馴染兼お隣さんの江澄がズカズカと自室に上がり込んで魏無羨を起こしに来てくれていたが、あまりの寝穢い様に早々に見切りをつけて来なくなってしまった。なんとも薄情な奴である。みの虫になっている魏無羨の名前を大声で呼びながら、遠慮なく身体を大きく揺らし、ベッドから引き摺り出されていたのは、今となっては懐かしい思い出だ。
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