カランコエ「千空、持ってきたぞ」
コハクは千空に貰った合いかぎを使って、玄関の扉を開ける。
千空とは少し前から恋人同士、という関係になった。あれだけ恋愛は非合理的だと否定した男が、ついにコハクという一人の女性に落ち着いた。
千空は今、ラボからほど近いマンションで一人暮らしをしている。
「千空?」
石の靴を脱ぎ、ずんずん進んでいく。
今日は休みだと聞いていたので、家の中にいるはずだ。玄関先には千空の靴があったし、いると思うが。
がちゃっとリビングのドアを開くと、そこに人の気配を感じる。
「あ゙? コハクか」
「着替え中だったか。すまない」
風呂あがりだろうか、千空は頭にタオルを被り、上半身は裸だ。
その時、千空の上半身が視界に入る。左肩には穿ったような傷跡と、腹部の辺りには銃創のような跡が見え隠れしている。
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