鍵くんが借り物競争に出る話 借り物競争。コースの途中に置かれた紙に書かれたお題に沿ったものを持ってゴールしなくてはいけないこの種目は、咄嗟の判断力、借り物をするコミュニケーション力、その他諸々が求められる競技だ。足が速いだけでは務まらないこの種目に、A組は鍵浦昭を選出した。
うまくできるかなぁ、なんてぼやく本人をよそに、クラスメイトはその人懐っこさ、人数の多い部活所属、寮生という特性をフルに活かせと声援を飛ばす。何せこの種目、借り物が物体ではなく――。
「校長先生ー! どこですかー!」
「誰かー! 運動部の部長さんー!」
「うちの担任どこ行ったー!?」
借り物のお題が、人、なのである。
お題の紙を手に右往左往。コースも外れ、参加者は校庭中を走り回る。
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