幸福「藍湛、今日はえらくご機嫌だな」
あたりはすっかり暗い。しかし眠るにはまだ早い時間帯だ。
藍忘機はサラサラと彼の髪を手ですいていた。魏無羨は寝台に座る藍忘機の胸に頬をあて、目を閉じて夫の好きなようにさせている。
顔をあげてみると、珍しく口元を弧にする藍忘機がいた。これは相当、何かいいことがあったのではと魏無羨は声をかけた。藍忘機は首をかしげる。
「機嫌が良いように、見えるか?」
「ああ。今夜は特に。今すごく気分が良いんだろう?」
「そう見えるなら、そうなのだろう」
確かに気分は良かったのだ。
「もう昔のように」
「昔のように?」
「昔のように、君の顔を思い出して眠らずに済む」
きゅ、と魏無羨は口を引き結ぶ。そしてめったに恥ずかしがらない彼の顔が赤くなった。
559