味見「藍湛、藍湛!彩衣町で女の子から苺の砂糖漬けをもらったよ。あ、疑うなよ?お前はやきもちだからな。きのう妖魔から助けてあげた子だ、お前も覚えてるだろ?小皿を持ってきてやったぞ。すごく美味しいから食べてみろ!」
藍忘機は「女の子から」という言葉に眉をピクリと反応させ、
そっぽを向いた。
「いらない」
「本当に美味しかったんだって!ほら、これなら味見してみたくなる?」
魏無羨は砂糖漬けの容器に指を入れ、己の唇に塗りつけた。テラテラと光る唇に視線が移る。藍忘機は考える間もなくその完璧なまでに整った顔を魏無羨に寄せる。ちゅ、と吸うように口づけをした。
数秒唇を合わせたあと、味の感想を言うため魏無羨から顔を離す。
抱き寄せるために腰にかけた腕はそのままに。
「甘い」
「美味い?」
「まずまず」
パッと魏無羨の顔に花が咲く。
「そうか!もっと食べてみる?」
頷く藍忘機に魏無羨はパンパンと藍忘機の肩を叩いた。
魏無羨が勧めたほとんどの食べ物を藍忘機は「奇妙」と答える。久しぶりに彼の「まずまず」を聞けた事が嬉しいのだ。持参した小皿に次々と苺をのせていく。
「あれ、食わないのか?美味かったんだろ?」
魏無羨が首を傾げ、静かに動き出した藍忘機の動作を見守る。
藍忘機は箸を砂糖漬けの容器に差し込み、箸の先から垂れている甘い液を魏無羨の唇に塗った。
やっと藍忘機の意図がわかった魏無羨は口角を上げる。
「含光君。おまえって、たまにスケベだな?」
「君ほどではない」
後日、藍忘機が彩衣鎮に訪れ、頻繁に苺の砂糖漬けを購入しに来る姿が見られるようになったという。
FIN.