時間の調整ができ数便早く帰国した、それがたまたま下校時間で、偶然通り道に彼の通う学校があった。
だから顔を見にきてやった。
馴染みのハイヤーに荷物を任せたⅣは、さて、とサングラスの下から校門を眺めた。
教室という小さな箱から解き放たれた生徒たちはこの時間でも賑やかだ。すでに大人に混じって職を持つⅣにはひどく子どもじみて見えるが、Ⅲの日々の報告を聞くに、学ぶにも遊ぶにも良い環境らしい。
凌牙もそんな世界を楽しいと思っているのだろうか。そう考え始めると、平素感じることのない感情を覚える。微笑ましいような、むずがゆいような。
Ⅳは名状しがたい感覚の根源を探るのをやめて、まだ出てこないのかと門の中を見回す。
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