《茨の魔女》は呼び捨てにされたいエンドウ豆大成長事件の後、アシュリー家に泊まるモニカとラウルは、モニカは時間を見つけては本に齧り付いてラウルは庭を隅から隅まで根掘り葉掘りして過ごしている。
そして「今度は間違えてないぜ!」って肥料を撒こうとするラウルをシリルが「貴様は学習というものを知らんのかッ!」って首根っこ掴んで引き摺っているような日々。
「本当の本当に間違いがないか、モニカに見てもらいながら調合するなら許可をしよう」
とシリルに言われて、三人で頭を寄せ合って何回も計り直ししながらやっとのこと調合が終わり、いざ庭の隅に置いた鉢植えに少しだけ混ぜて検証しようとした時、庭にいたラウルを後ろからシリルが呼びかける。
「ラウル・ローズバーグ、先ほどの件だが……」
「えっ……呼び方……」
ラウル、何故かしょんぼりしてシリルを見る。
「なんだ?」
「どうせなら『ラウル』って呼んで欲しかったなぁ」
とラウルが言うと、シリルは戸惑ったように目を左右に彷徨わせた後、少し顔を赤らめてからゴホンと咳払いをして
「ラ、ラウル。土に使用する際にも念のためモニカに同席してもらうようにしてくれ……」
とボソリと言うから、ラウルはパァッと笑顔になって「わかったぜ!」って言ってシリルをギュッとハグしてから屋敷に走っていく。
シリルは「土で汚れるッ!」って言いつつも、ラウルの後ろ姿をちょっと嬉しそうな顔で眺めている。
なおモニカが見てる横で、ラウルが適当に匙で肥料を放り込んで実験は失敗に終わった。