エリオット青年は見た!生徒会に入ろうとしたエリオットは、扉の前で足を止めた。中から聞こえてくるのは、吐息が混ざったようなモニカ・ノートンの声だ。
「ああっ……ダメェ……」
「ノートン会計ッ……あと少しだからっ……」
「もう無理ですぅ……我慢できないぃ……あっ、いッ……」
「あっ……はぁ、ノートン会計ッ……」
「ふえぇ……もう無理ぃぃ……」
エリオットは扉の前で顔を真っ赤にして、慌てて扉に耳を押しつけた。
(えっ……? ええええええっ?)
思わず上がる息を手で押さえる。
(あの朴念仁、生徒会室で一体何を?! ノートン嬢のこの声はッ……どう考えたって、嬌……声……)
「うぐっ……ごめんなさ……シリル様……」
「ノートン会計ッ!」
ドンガラガッシャン
突然、扉の向こうで何かが崩れるような大きな物音が聞こえてきた。
「……ん?」
一体何が……?
薄く扉を開けて室内を覗き込むと、大きな本棚が倒れており、その下にシリルとモニカがいた。シリルはモニカを庇うように四つん這いで背中で本棚を支え、モニカはシリルの身体の下で両手で顔を覆い、えぐえぐと泣きじゃくっていた。
「シリル様、ごめんなさい……」
さめざめと泣くモニカを見つめていたシリルは、キッとエリオットを睨むと、大きな怒声を上げた。
「扉の前に居たならッ! こうなる前に手伝わんかっ!」
「あっはい、すいませんすいませんすいません……」
思わず条件反射的に謝罪を繰り返しながら本棚を起こそうとしたエリオットは、横にあった乱雑に書類を詰め込んだ箱をうっかり倒し、そのまま一緒に本棚の下敷きになってフェリクスが来るまで三人仲良くペシャンコになっていたのであった。