いつのまにかライバルが増えていたことを知るメリッサお姉さん※ ローズバーグ姉弟の口調自信ないので雰囲気で読んでください。
その手紙に目を走らせたラウルは、口をあんぐりと開けてその場にへたり込んだ。
「ん? 何よ。私にも見せなさいよ……って、モニモニとシリル様がッ! こここ、婚約ゥ?!」
ガーンと頭を殴られたかのような喪失感と、納得してしまう気持ちのままラウルを見ると、弟のラウルは自分以上にショックを受けているようだった。親友と呼んでよく会っている二人の婚約であれば、ラウルなら両手を上げて大喜びしそうなものだと思ったのだが。
「そっかぁ……婚約かぁ……オレ、気付くの遅かったからなぁ……」
「ん? んんん? ラウル、まさかアンタ……」
まさか、モニモニのことが好きだったってこと?
ラウルは「親友なら素直に祝福するべきだよな……」とボソボソ言いながら、そのムキムキの身体を小さく丸めて膝を抱えてウンウン唸っている。
「あんなチンチクリンの、なぁにが良かったんだか」
「チンチクリンって言うなぁ! だって……だって……」
ラウルは口を尖らせてぽそぽそと呟くように続ける。潤んだ目元や紅潮した頬は身内でも見惚れそうなくらい美しいが、メリッサは見惚れることもなく、むしろ失恋してへこんでいる癖に華やかな顔面の弟に虫唾が走った。
「優しいし……」
「うん」
「カッコいいし……」
「まあ、そうかもね」
「細いし」
「確かに」
「髪の毛が艶々で真っ直ぐで綺麗で……」
「……ん?」
「オレのこと名前で呼んでくれて……」
「……ちょっと待って。アンタ、誰のこと言ってんのよ?」
ラウルは泣きそうな顔でメリッサを見上げた。
「……シリル」
「はぁ?」
モニモニというライバルもいたのに、こんな顔の綺麗な、男とか女とかの壁も顔面偏差値で吹き飛ばしそうなこの憎たらしい弟が、ライバルにいたとは!
(負け戦とは思ってたけど、コイツまで参戦してたなんて聞いてないわよ!)
失恋とその他と、色々どうでも良くなってメリッサはピンヒールの足でラウルの背中を蹴り飛ばした。ラウルは「ぎゃっ」と小さく悲鳴をあげて、蹴られた背中に腕を伸ばして床をのたうち回っている。
「失恋? ざまぁないわね!」
メリッサは高笑いしながら、今日自棄酒をする為のバーをどこにすべきか思案した。