EX:Ⅰ(雪は血に染まり、冬は終わらず)
あの年の冬は村の者が誰も経験したことのないほどに寒かった。音もなく降りしきる雪が人をひどく憂鬱にさせていた。
今年の冬は早く来てしまったから、いっそう慎ましく暮らさないと苦しいぞ、とひそひそと話し合う大人。太陽を覆い隠す曇天が、より村の中の空気を重くさせる。
そうして、永い永い、冬が始まった。
「なあ、雪ってどうして白いんだ?」
「雪だからだろ」
おとな達の憂鬱な気配を感じているのが嫌で、少年二人は小高い丘の上で遊んでいた。村の礼拝堂が建つその小高い丘は、村を一望出来る。管理している神父に読み書きを教えられていて、二人は充分懐いていた。一人は銀色の髪の少年で、降り積もる雪を手で掬いながら疑問を口にしている。それに答える少年は、銀髪の少年よりも年上だった。年下の少年を幼い頃から面倒を見ている。何を当然なことをと返せば、だって、と銀髪の少年は頬を膨らませた。
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