多少強張った身体だが、触れて解いてゆくうちに何と柔らかいのかと驚いた。
職業柄女性の肌、それこそ腹にまで触れて性差による肌の柔らかさは認識している。だが、スズランの身体は筋肉質でもなく痩せすぎでもなく、触れたところが掌に馴染むようにやわかった。
「……あの、ソーゲンちゃん」
「はい」
「くすぐったい」
「おや…これは申し訳ありません」
意外に思ってじっくりと触れすぎたかスズランが身動ぐ。少し笑った顔は緊張が解けたようで、ソウゲンも気を抜いた。
「研究の時の顔してるよ」
「それはそうかもしれません。スズラン殿を知りたいと思うのは勿論ですが」
「うん?」
「こうも高揚する己の心を知りたい。焦れるようなこの心持ちを…心拍数が増えて下がらぬのを」
「……僕でどきどきしてる?」
「はい」
「あのね、気を悪くしたらごめんね。ソーゲンちゃん普段が世間離れしてるっていうか……やらしいことしたい欲あるのかなあって思ってたから。僕に向いてるんだなって思ったら……うれしくて不思議だよ」
「そんな風に見えておりましたか?案外と煩悩に塗れた男ですよ」
言ってスズランの後頭部を掬い取り、じっと見つめる。探究心のみで生きてきたような純粋な深草色の瞳に見据えられて、スズランは力を抜いた。
どちらからともなく口を吸い、合間に息を継ぎながら耳に触れ首に触れつつぴたりと抱き寄せる。
隙間なく埋められた皮膚から心拍を感じる。
好いた人とこうして蕩けるように触れ合っている喜びと愛しさが互いの熱を上げる。
肩を抜いて着流しを腰まで落としたスズランの胸や腕に口付けながら、足を組み直して膝へ招く。
好き合って触れ合うようになってから、閨での決まりの所作。とはいえ寝床を共にするのもまだ五度目、手探りな部分ばかりだ。
現にソウゲンが「明日、抱きたいのですがよろしいですか」と尋ねて、「連絡がちゃんとしてるね…」とスズランが苦笑したのが昨晩。
苦笑されたので「こうあからさまに伝達するのは良くないのか」と尋ねたが、「まあ雰囲気はないけど…予定も立てられるし、丁寧にちゃんと聞いてくれるのがソーゲンちゃんのいいところだし。そこが好きよ」と語尾になるにつれ小さくなった声で返されたので心が高鳴った。