花と緑春の日差しに十二分にぬくめられた廊下が裸足に心地よい。普段はよほど暑くなければ足袋を履く踪玄だが、今は畑帰りで汚れた草履と足袋を桶に浸けているところだ。
脚半の裾も折り返し、温かい廊下に座り込んだ。
採ってきた薬草を束ねて陽干しの準備をしていると、鶯の鳴き交わしに混ざって人の足音が聞こえた。
「おや。おかえりなさい」
「……はぁ……」
現れた鈴蘭に声をかけると、彼はのそのそと踪玄の隣まで来て寝そべった。簪が床に当たって春の日差しを眩く反射する。
「また今回は長丁場でしたね。あと半日帰らなければ探しにゆくところでしたが……大層お疲れのようですね?」
「二晩も相撲の行司をやらされた…眠い」
鈴蘭が山に入っていたことと相撲の話とが結び付かず、踪玄はしばしその言葉を反芻する。やっぱり分からなかったので首を傾げると、鈴蘭は眠たげな目を細めて笑った。
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