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    azm3mm

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    azm3mm

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    以前冒頭だけ載せたソウスズ🟢🟣
    終わりまで書けました。長くなったので新書メーカーでなくこちらへ…お化け出ますがホラーみはありません。※🟤兄の煙管吸う🟣の描写があります←何の注意だか分かりませんが一応…?

    隊士達数人がなにやら額を突き合わせて茂みの横でこそこそしている。春の陽気にもこもこと伸びた枝葉は十分に男たちを隠すが、そこへ近づく影も隠してくれる。漏れ聞こえてくる「局長」「山南」という名前に、ギャタロウはそーっと背後に回って声をかけた。
    「よお、おめぇらどしたん?」
    「な、永倉さん!!」
    ぎょっとして振り向いた隊士達はお互いを窺い合う。
    「こそこそ上役から隠れて何をやってんでぇ。副長や藤堂の旦那につっつかれる前にこの永倉先生に吐いちまいな」
    「…実は……」
    おずおずと一人が目線を動かした先に、山南敬助の部屋があった。ギャタロウは山南——の替え玉、ソウゲンのひょろひょろと長い背丈を思い出しながら尋ねてみる。
    「山南がどうしたよ」
    「永倉さん、失礼は承知でご相談なのですが」
    「拙者どもは昨晩、いえ何回も……」



    「女の子がソーゲンちゃんの部屋に入ってくのを見た〜〜?」
    間延びしたスズランの声は特に怒っても慌ててもおらず、ギャタロウは出鼻を挫かれる。
    「いっちょこの俺が解決してやるか、と思ったがネタがすぐ割れちまったよ。つまんねぇなあどうせお前だろスズラン」
    「いやまあ出入りはするけどね、よく」
    「するだろ、よく」
    ふふと笑うスズランが口元を隠すので、はいはいとギャタロウは煙管の灰を落とす。
    「いままでで三回見てるんだと。夜じゃねえ、夕方の薄ぼんやりして来た頃だから見られもするだろ。顔は見えねえけど赤い着物を着て髪を下ろした女がよう、こうすーーっと…部屋へ入っていくらしいのよ。余所者が勝手に立ち入るなと止めようとしたが、隊士たちの中で『いや山南先生の恋人であれば失礼か』とかで様子見てたらしいぜ」
    「ふーん。それ、僕じゃないよ」
    あっけらかんとスズランに告げられ、ギャタロウは怪訝な顔をする。
    「変装でもして通ってんじゃねえのか?」
    「そんなことしないってば。赤い着物なんでしょ?髪も違うみたいだし」
    「……じゃ誰だよ」
    「それいつ頃から始まった話?」
    「十日ほど前って言ってたなぁ。その間に三回とはお盛んなこったと思ってたんだが」
    「残念ながらぴったり十日前からソーゲンちゃん新種の粘菌育ててて、体内に入ると口から胞子を吐くようになりますよって言われて僕は奥のお部屋に入ってません!逢引は他所でやってるもん」
    「いや、いらねぇわその情報」
    「でもねぇ〜うーん…三回…」
    言いながらギャタロウの手の煙管をちょいちょいと指先で引っ掻き、葉をねだる。
    「センセに怒られんぞ」
    「考え事よ」
    火をつけてやれば静かに吸い込み、スズランは首を傾げて空を見つめていた。
    しばしの沈黙に、煙を吐き出す動きに金の耳飾りが鳴る。
    「スズラン?」
    「ん、頭スッキリした」
    しばらく楽しんだのちトントンと煙管の灰を落とし、そのまま柔らかい手つきで空中に何やら字を書く。
    「あんだぁ?」
    「四ってね、死を連想させて縁起が悪いって誰かが言い始めて、最近宿屋じゃ部屋番に付けないらしいよ。そんなものただの数字なんだけど、一度聞いてしまえば人間は『そういうもの』って認識するわけ。四は世間に死の意味を持たされちゃった」
    はて話が見えぬとギャタロウが顎をさする。と、思い至って動きを止めた。
    「おい……薄気味悪くなってきたんだが」
    「その赤い着物の人、次来たら四度目だね」
    「うわ」
    「世間のたくさんの人の無意識ってすごく影響があるんだよ」
    ギャタロウが傷んだ団子をかじってしまったような顔をしていると、煙管を戻して向き直ったスズランが口を開く。

    「ギャタロウちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど」


    「え、やなこった」
    「乗りかかった船でしょーー!?面倒見いい兄貴でしょ、ソーゲンちゃんになんかあったら困るでしょ??」
    「娘っ子みたいにきゃあきゃあ畳みかけんじゃねえっての」
    縋り付いてきそうな勢いをギャタロウがかわすと、スズランは少し声を潜めた。
    「ね。ソーゲンちゃん連れ出してくれるだけでいいの、あとは僕が上手くやるから」
    「ええ……」
    「次はいつ来るか分からないから早い方がいいね。今から頼める?」
    「……まぁ実害あっちゃ困るけどよ。お前は一人で大丈夫なのかよ」
    嫌だと言いつつスズランのことも心配してくれるギャタロウに「優し〜!」とにこにこして、スズランは懐の数珠を取り出した。
    「本業だもん大丈夫よ。それにソーゲンちゃんに近づくとあっちゃあ僕だって黙ってないのよ」
    くるりと指先で数珠を回したが、その節も目立たぬ指で化け物相手に立ち回れるのかとギャタロウはううんと呻いた。



    適当を言ってギャタロウがソウゲンを連れ出した部屋。日は暮れかかり、西陽の眩しさが去って闇が迫ってきた頃。
    部屋にどんと鎮座する解剖台に寄り掛かり、スズランは「うん」と呟いた。
    廊下の障子がカタカタと揺れ、薄闇ながらも影が映る。呼応するようにエレキテル錫杖も震えるので、ありがとう斎藤さん、と声をかけて障子に向き直った。
    「開けなくても入れるでしょう」
    言えば躊躇したのか音が止まる。が、やがてするりと隙間から赤い布が抜け出てきて、見る間に女の形となった。こちらを向いているのに顔がはっきりとしない、どうやら人を真似て形を作ったが顔だけは誰をどうと覚えていられなかったのであろう。
    「ここの主人はいないよ。ご用?」
    『……ぁ、ア』
    「君、川沿いのお店の。そうでしょう」
    言い当てられてひゅっと女の形が崩れて髪がばさばさ床に落ちる。見れば紙を撚ったようなもので、これで模していたのかとスズランは感心した。
    『シ』
    「し……ああ、四?」
    『シ、シ』
    「そうだね、四のお部屋だった。大丈夫、君はお名前が変わるだけ。怖いことないよ」
    『シ……』
    今度は床に赤い着物が落ち、剥き出しの中身は畳の藺草のようだった。着物が脱げたのでキャッと目を覆ったスズランだったが、こほんと咳払いして何やら唱える。数珠が鳴り、女の形を真似ていたものは全て畳の上に散らばった。
    しばしそれを眺めていたスズランだが、合わせていた手を止めて屈む。

    床にたわむ赤い着物を捲るとそこには、割れた皿の半欠けが転がっていた。



    「で、一体どういう顛末だってのよ」
    ギャタロウは「センセを連れ出したんだから聞く権利がある」とスズランの前を退かない。
    「うんうんありがとねぇ〜。ええとね、盃が」
    「盃ィ?」
    スズランの差し出した風呂敷には、半月型に割れた白い盃が包まれていた。ぐるりと眺めたギャタロウだったが、うむ分からんと腕を組む。
    「ソーゲンちゃんのお部屋いま使えないって言ったじゃない?だからお茶屋さんで逢引きしてたんだけど」
    「その話要る?」
    「要るから!惚気じゃないから!あのね、川沿いのお店ね。いつも使ってたお部屋番号が「四番」だったのよねえ。で、『もうすぐ当店お部屋の名前を変えます』って貼り出してあって。番号だったのを鶴とか亀とかなんか縁起のいい名前にするんだって」
    「ああ、四だと縁起が悪いっつうやつか」
    「ソーゲンちゃんがお店入る時、鴨居に頭ぶつけて神棚のものが落ちてきたのよね。ほら背が高いからたまにあるんだけど……盃が割れちゃったの。ちゃんとお店には申告したけど、ソーゲンちゃんの荷物に破片が入り込んでたみたい。で、このお部屋まで付いてきちゃったんだろうね」
    「はあ……だからって何で化けて出たンだよ」
    部屋が化けて出るとは初めて聞く。物に憑く化け物もいるというが、部屋なんぞが意思を持っているならその辺の石ころだって意思があるということだ。ギャタロウはそこまで考えたが、そのまま話すとこの坊主に「石だけに意志が…」と言われるのが明白なので黙っている。
    「自分は訳の分からない理由で名前を消されちゃう、無くなっちゃう!誰か助けて!ってことでしょ。僕とソーゲンちゃん、お部屋で患者さんの話してたから……『患者』を真似て来ればこのお医者が助けてくれるって思って、人の変装して来たんじゃないかなぁ」
    「閨でなんの話してんだ」
    「恥ずかしい〜やだぁ〜〜」
    んふふと口元を隠して笑うスズランは、袖を戻してふと真面目な顔をした。
    「お店のご主人がよく手入れをしていた神棚だったのね。お店に顔出して、お祈りして来たよ。あ、これは供養しますねって頂いてきたの」
    一仕事したぁと伸びをしたスズランは、ふと錫杖を握りしめる。
    「……ソーゲンちゃんに悪いことするようなモノじゃなくて本当によかった」
    動いた錫杖がしゃらんと鳴るのは出番が無かったことの不満だろうか。斎藤さん血の気が多いのねぇ、怪我人無いのは良いことよとスズランが小声で訴える。
    それを眺めていたギャタロウは煙管を取り出しながら一応労った。
    「まぁお前も今回頑張ったんじゃねぇの。ヤバいもんだった可能性もあったのに、センセに悪いことないように動いたんだろ」
    「うん。協力ありがとねえ」

    と、そこへ足音も薄くゆらりと影が差した。

    「スズラン殿はなにか疲れたお顔をされていますね」
    「おぁ、ソーゲンちゃん」
    現れたソウゲンは、二人に並んで腰を下ろす。
    「はい。子供たちに囲まれて、微笑ましくも些か疲れたのです」
    「絵巻物ありがとな。正吉のやつは最近字が読めるようになったんだぜ、本が面白ぇからだと」
    「あの子は頭のよい子ですね」
    ギャタロウに連れ出されたのは子供達のところだったか。存外よい時間を過ごして来たらしいソウゲンの機嫌が良いので、これなら不審がられないだろうとスズランも胸を撫で下ろす。
    「ああそうだ、小生すこしスズラン殿にご相談があったのです」
    「あら?相談?」
    「俺ァ外すわ」
    「いえ、大したことでは。最近同じ夢を見るので何であろうかと思っておりまして」
    「夢?どんな夢見るの?」
    「患者が…赤い着物の女人ですね。症状を訴えているようなのだけれど、不思議と言葉が分からない。診るに診られぬ、というような夢です」
    ギャタロウとスズランは顔を見合わせる。
    「はっと目が覚めると、皆もいる寝室なのでもちろん夢だと分かります。ですが、患者の訴えを聞けず治療も出来ずで不甲斐なさを感じております」
    「……ソーゲンちゃん真面目ねえ。あんまり向き合ってあげると、悪いおばけだったら取り入られちゃうかもよ?気をつけてよー」
    「おや」
    ソウゲンがきょとんとして頭二つ下にあるスズランを見る。
    「小生にはスズラン殿がおりますから。そういった心配はないでしょう」
    「んッッ」
    スズランが咽せたのと、ギャタロウが薄目になったのとを交互に見ながらソウゲンはにこりと笑う。笑ってはいるが若草色の目がすこしもスズランから逸らされなくて、スズランは眉間を押さえる。
    「こりゃセンセの勝ちだ、隠し事しねぇで素直に話しな」
    「ウワーーッかっこつかない!!」
    その場に大の字になった坊主にひらひらと手を振り、ギャタロウは立ち去った。誰かを誘って一杯やりに行くか、と後ろ手に襖を閉めてやったのは我ながら気が利いていたと思う。


    翌朝、「昨晩は夢も見ず自室でよく眠れました」と話す肌艶の良い医者と、「ぼく口から胞子出てない?だいじょぶ?」と些か疲れた顔で欠伸をする坊主に、平和だなぁとお天道様を見上げるギャタロウであった。
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