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    Rthathatha

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    Rthathatha

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    雰囲気で読むssです。できてるじゃくよつ。野戦病院に来た頃。支部と同じです。

    #寂衢
    silentQu
    #じゃくよつ

    Twinkle,twinkle ちょっと冷えるかな、と上着の上から羽織っていた毛布をしっかりと衢は握った。野戦病院の周辺は明かりのひとつもついていない。新月なのか月も見当たらなかったが、それでも一面に広がる星空でほのかに照らされていた。
     衢は出てきた扉のすぐ隣に土が付くのも気にせず座り込む。なんとなく寝付けなくて、風にあたりに起きてきたのだった。
     ぼぉっと空を見上げる。強い明かりがないおかげで星がはっきりと輝いていた。
    「衢くん」
    「寂雷さん」
     ここにいましたか、と少し慌てた様子の寂雷が衢の隣へとやってきた。
    「探しましたよ……体、つらくないですか」
     するり、と腰の辺りを撫でられる。夜風にあたって冷たくなった体に、寂雷の体温が心地いい。
    「大丈夫です。その、寂雷さんですし」
    「では……何をしていたんですか?」
    「星を見てました」
    「星?」
     はいと返事をして空を見上げた衢につられて、寂雷も顔を上げたようだった。「これは……」と吐息がもれている。
    「すごいね。明かりがないからか」
    「はい。東都とはやっぱり見える星座も違くて。なんていうか、遠いところまで来たんだなぁって」
    「…………後悔していますか」
     その言葉に、衢は寂雷のほうを見る。衢よりも身長も何もかも大きいのに、なぜだか迷子の子どもを見ているようだった。
    「いえ! 僕は寂雷さんといられたら、それでいいんです」
     寂雷の目が大きく見開く。衢の素直な気持ちだった。そうしてどちらからともなく、くすくすと静かな笑い声がもれた。
    「そろそろ戻りましょうか」
     寂雷が立ち上がるのに合わせて衢もゆっくりと立った。土ぼこりを払って寂雷のあとに続く。火照った体が夜風で冷めたおかげが睡魔がやってきたようで、大きなあくびがひとつ出た。
     斜め前を歩く寂雷がこちらを振り向く。
    「衢くん……ありがとう」
    微笑む寂雷に、衢も笑顔で返したのだった。
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    Rthathatha

    DONETwitter診断メーカー「こんな書き出しで書いてみて(https://shindanmaker.com/606128)」より、『佐藤あるの寂衢で「吐き出した息は白く、儚く消えていった。」から始まる小説はどうですか?』です!
    ☕️舞台受肉記念日&昨日自分の誕生日だったので誕生日のお話です。
    今日はきみの吐き出した息は白く、儚く消えていった。
    すっかり寒くなったなぁと衢は改めてマフラーを巻き直す。背中のランドセルの留め具がカチャカチャと揺れるのを聞きながら小学校の校門を出た。
    今日は、衢の十回目の誕生日だ。

    今日はきみの
    両親が亡くなって、寂雷と一緒に暮らし始めてから迎えるはじめての誕生日だった。ついに二桁の年齢である。大人の仲間入りをしたようで、どこか自分がそわそわとしているのを衢は感じていた。
    けれどおそらく今日もいつも通りの一日で終わるだろうな、と衢は確信していた。なぜなら今日が自分の誕生日であるということを特別、寂雷には伝えていないからだ。
    伝えていない理由は、単にそういう話にならなかったから。もうひとつ付け加えるなら、これ以上負担になりたくなかったからだ。伝えるということは、祝ってもらいたいということ。ただでさえ衢はまだ子どもで、忙しい寂雷のお世話になってばかりだ。誕生日だと伝えることで、寂雷の思考の邪魔をしたくなかった。
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