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    さかな

    @fish_and_sakana

    青春鉄道二次創作を書いています

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    さかな

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    紙端国体劇場様青春鉄道二次創作

     高崎と道子上官の話
     みっちゃん=ジュニアの姉様って言うつもりで書いたヤツ。
     女子上官の設定をイマイチ理解できていない時にノリとテンションで書いた。

     青鉄ハマった初期に書いたやつ。多分続きは書かない。
     さかなはみっちゃんと高崎の組み合わせが好きだったんだよ……あのチョコレートの話(二次創作)はきっと一生忘れないし、定期的に読み返す。本当にお気に入り

    高崎とみっちゃん「女性の上官の中で、誰がいいと思う?」
     誰が言ったのかは分からないが、それがこの話の始まりだったと高崎は記憶していた。
     当然、この場に居た路線はそれに興味を引かれて話を始める。ある意味、当然の流れと言えば当然の流れだろう。上官達がこの部屋に立ち入らないことを知っているからこそできる会話。彼等の部屋に頻繁に立ち入っている、彼等を兄に持つ本線を見れば、彼は特に何も言わない。否、彼もこの話題に否定的な意見を出さなかった。
     というよりも、彼はいの一番に発言する。
    「俺の姉貴一択だろ。それ以外はない」
     きりっとした表情で言われたそれに、「あー」という雰囲気になる。
     彼が名前を出すとしたら、彼の姉である道子上官であるのは誰もが分かっていたことである。当然、高崎も分かっていた。そして、勿論、この後の流れも何となく分かっていたことだ。
    「俺は苦手だなー。美人だけどキツいし。陽子上官の方が好き」
     武蔵野の発言から陽子上官の話に広がる。
     身長高くて、可愛くて、美人で、優しくて――
    「何より胸がでかい」
    「おい、不敬罪」
    「でもほんとのことだろー」
     思わず嗜めればそう返ってきて高崎は溜息を吐いた。
     同僚の話を流しながら、間違ってはいないと思う。彼等の話も間違っていないし、己もそう思っていた。
     陽子上官は気立てが良くてキレイで、平等だ。人気が出るのも分かるし、実際に職員に告白されたこともあると聞く。山陽上官も穏やかで人が良いから、なおの事、点が高い。
     北子上官は誰もが認める格好良さ。物事をはっきり言うし、はきはきした物言いは好感が持てる。東北上官が話さない分を話してくれるので、大変ありがたい存在だと思う。
     己の上官である越子上官は、女の子らしい女の子と言っていい。男なら守ってあげたくなる女性だ。上越上官とは正反対の性格であるし、少々気が弱いところがグッとくると言うやつも少なくないと記憶している。
     まち子上官は、見た目がとても可愛らしくて癒される。秋田上官と同じくよく食べるが、その姿は大変可愛らしいし、美味しそうに食べる姿がとても評判が良い。秋田上官も、明るく穏やかな性格で、親しみやすい印象を与える。
     つばさ子上官は可愛いし、素直で、明るい女性で人気が高い。山形上官も穏やかな性格のためか、彼女に告白したと言う話もよく聞く。その後の話は、全くと言っていいほど聞かないのだが……。
     同僚たちの話はそうして盛り上がっていく。
     その中で、出てない名前に東海道が何も言わないのが不思議でならない。
    「なぁ、高崎はどうなんだよ? やっぱり、越子上官か?」
     直属だもんなー。とからかい交じりに常磐に声をかけられた。常磐はまち子上官がいいと言っていたか。食費は地元の知り合いを当たれば何とかと言っていた気がする。
    「俺は、道子上官がいい」
    「へっ? なんで?」
     騒がしかった室内が一気に静かになった。東海道からの鋭い視線を感じつつ、常磐を見る。
    「お前、守ってあげたくなる系女子が好きだと思ってた」
     ストレートな物言いに、高崎はそんなことはないけれど、と前置きしてから話し始める。
    「言い方は悪いけど、越子上官は皆に守ってもらえるだろ?」
     女性らしい女性の越子上官は、言ってしまえば誰からも守ってもらえる。困っているところを見つけると、ついつい手を貸してしまいたくなるのが男心だ。それに、彼女には北子上官がいて、彼女なりに大切にしていることを知っている。
     高崎にとって、越子上官は、手のかかる上官でしかなかった。
     それを言っても良いものかと迷う。不敬罪もいいところだ。そう思って、少し考えてから次の言葉を口にする。
    「だから、一人で何でもできる道子上官に憧れるな」
     何がだからなのだとか、憧れかよーだとか、聞こえるが、高崎はそれ以上答えるつもりがなかった。未だに東海道からの鋭い視線は消えないが、それでもいいと思っている。
     誰にも話したくないことの一つや二つ珍しいことではない。
    「まー、道子上官は高嶺の花だべ。俺等には手の届かねぇ存在だし」
    「美人なんだけどな、キツめの」
    「言葉もキツイ」
     そう言って盛り上がる彼等を、今度こそ、高崎は遠目に見ることにした。

     ***

     別に、高崎も最初から道子上官がいいなと思っていたわけではない。
     言ってしまえば、他の同僚達と同じように彼女は美人だけど言葉がキツいし、手厳しいしで、苦手だった。
     それに、誰がいいかと聞かれたら、不敬罪だと思いながらも、彼等と同じような答えを出しただろう。実際に道子上官に心を寄せる前は、陽子上官がいいなぁと何となく思っていたくらいだ。話すのが楽しそう、と勝手なイメージを持っていたから。

     それが変わったのは、以前、大雨が降った時。
     在来は軒並み運転見合わせ、高速鉄道上官方も遅延や運休を出していた日だった。
     高崎も東京に軟禁されている状態で欝々としていたのだ。気分を変えようと一人になれる場所を探して、一般路線でもあまり立ち入らない区域に入ってきた。薄暗く、人通りのないその場所は、高速鉄道上官も、一般路線ですら立ち入らない、本当に誰もいない。
     ――はずだった
     角を曲がろうとした時、向こう側の角とこちら側の角のちょうど中間くらいの窓。そこに人影を見つけた。こんな場所に誰だ? と不審に思い、目を凝らしてみると――
    「道子上官……?」
     キレイな黒色の癖っ毛とピョコンとはねたアホ毛は、東日本に属する自分があまり関わらない上官だ。窓際に立って外を眺めている。
     いつも凛とした背は、どことなく不安げで頼りなさそうに見える。
     ――どうしたんだ?
     誰もいない場所に高速鉄道がいること自体が危ないし、不自然だ。上官方に何かあれば、それこそ大問題である。社内は確かにセキリティなどの関係もあり安全だが、それが絶対的に安全だとは言い難い。だから、東海道などは上官方を一人で外に出さないように、と警戒しているのを見たことがある。
     それなのに、見る限り道子上官は一人だった。
     話しかけ辛い雰囲気に、高崎は息を潜めて彼女を見ていることにした。何かあってからでは遅いし、何かあってほしくないと思ったから。
     辺りは誰もおらず、静かで、物音一つしない。
     だが、良く耳を澄ませてみると、雨音の中に嗚咽が混じっているのが聞こえた。よくよく見てみると、窓の外を見る横顔は何かを睨むような表情をしている。しかし、その目からは滴が静かに流れている。
    「……私だって、頑張ってるのに」
     苦し気に吐き出されたその言葉に、高崎は立ち尽くした。
     ――あぁ、道子上官は……
     凜としている雰囲気しか見たことがない。仕事は全て完璧で、仕草も上品。高速鉄道として恥じない姿をしているといえる。だが、その分だけ、気を詰めていたのだろう。彼女は、本当はずっと無理をしていたのだ。
     それに、北子上官とは、あまり仲が良いとは言えないらしい。こういう日に二人が会うとよく喧嘩をしていると越子上官から聞いている。だから、きっと今日もそんな感じだったのだろう。そう思った。
     一人で泣いてほしくないと思い道子上官の方に足を向けようと気合を入れる。
     しかし、一歩踏み出す前に、反対側から足音が聞こえた。
    「姉さん!」
     反対側から彼女に駆けよったのは東海道だ。声だけで分かる。否、あの静かに走る足音は東海道特有のものだと知っている。
    「良かった! やっと見つけた。心配したよ、姉さん」
     酷く愛しむ、というには甘さが含まれたその声色に、高崎は聞いてはいけないようなことを聞いてしまったような気分になった。それに、
     ――姉さん、ね
     東海道はそう言った。道子上官のことを「姉さん」と。普段の彼の様子を知らなければ、なにも不思議には思わないだろう。彼は彼女の弟なのだから。だが、彼は普段彼女のことを「姉貴」と呼ぶ。それに意味があるのか、考えたくない。
    「……心配かけてごめんなさいね、東海道」
     彼の方を向いた道子の表情は分からないが、東海道の表情から、彼女の表情は歪にゆがんでいるのだろうと予想ができる。こう言ったことに不器用そうな彼女だ。今まで泣いていたのに、急に切り替えるなんて無理な話だろう。
     それに、例え、彼女が泣き止んでいたとしても、彼女の目元が赤らんでいるだけで彼は居もしない敵を恨むのだ。彼女を泣かせるものは全てが敵だと言って憚らないのだから。
    「ぜんっぜん大丈夫だよ! 姉さんに何もなくてよかった……。在来の方は男ばかりだから、戻ろう? 何かあったら、兄さんだって心配するよ。それに、すっごく怒ると思う」
     道子上官は東海道上官にも愛されてるんだなとなんとなしに思う。否、彼等は互いを何よりも思い合ってる。互いが互いを大切にしている。それを東海道の様子から感じるのだ。だからきっと、道子上官も心配をかけたくはないのだろうと思い至った。
     それでも、彼女の頭がにわかに下がったのを見ると心配になる。だが、すぐに頭を上げると言った。
    「そうね。そろそろ戻らないと!」
     ――あ、カラ元気だ
     高崎でもそれを感じられる声色に、やはり分かりやすく東海道の表情が歪んだ。彼は、それを許容できないだろう。大好きな姉のカラ元気を見過ごすような真似はしない。
    「うん、そうだね。――姉さんの努力は、俺が良く知ってるから」
     大丈夫だよ。
     彼はどんな思いで、その言葉を口にしたのだろう。本心で間違いない。
     だが、それだけではないだろう。彼は、姉、兄に対して異様な執着を見せる。だから、多分、それだけではない。純粋な心配からの言葉でも、純粋に言葉通りの意味でもないと思った。彼の執着は並ではない。だから、在来は彼の言葉に深く追求しないのだ。
     多分、優越感。
     上官達の事を一番に理解しているという思いからくるその思いだ。実際に、東海道上官も道子上官も、一般路線は苦手意識を持っている。そして、自ら近付こうとは思わない。だから、彼等を理解することはないのだ。
    「……ありがとう」
     東海道からにわかに顔を逸らした道子上官の横顔が見える。
     少しだけ頬を染めているのは恥ずかしいからだろう。とても美しく見えた。

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