夜来る獣 それは真夜中を少し過ぎたくらいの時間に、いつも来る。
「おつかれサマンサ〜」
ドアを開けると、絵に描いたような軽薄を纏い、しかし誰よりも美しい最強の男がそこに立っている。
「五条さん。何の用ですか」
私は密かに、真夜中のこの時間帯は、彼が最も美しく見える時刻だと思っている。都会の闇夜に彼の銀髪と青い瞳はとても良く映えるから。直接本人に言ったことはないけれど。
「わー七海、相変わらずひどい顔じゃんうける」
私の言葉を無視して、五条さんは勝手知ったる風で玄関に入り込む。
私が会社員になってからも、この人は頻繁に部屋を訪れてくる。特に高専の話はしない、呪術師に戻れとも言わない。ただ会って、会話をし、人間らしい暮らしから遠ざかりつつある私の様子を面白がっている。
2249