小話『木星の輪』シャアに誘われるまま、シャリアは部屋に入りお酒を酌み交わす日々が続く。
ある時は作戦の延長と勝利の策を。またある時は会話もなく液体をくゆらせる時が流れる…。
その日はシャアがグラスをおろしてしばらく。
シャアの目の前に置かれたそれらしい小箱を手に取り、かの時とは逆周りにテーブルを周り、シャリアがかけるソファーの隣に腰を下ろした。
「大尉、左手を。そしてできれば手袋を外して貰えないか?」
その流れる仕草を眺めていたシャリアは、シャアの言葉を飲み込みグラスを置く。
シャアへ向けて少し体を向けて。左手の手袋をゆっくりと外しグラスの横に置いた。
その左手を、シャアの左手がすくう。
引き合う右手の指先には銀の輪が一つ。
その仕草に見惚れたシャリアは、ふいっ、と顔を上げるシャアにつられて顔を上げ。
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