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    ほぼ椎名牧場
    基本的に他人の絵とか文で見たいものが置いてある

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    ファンタジー

    ##燐ニキ

    なんか獣人族が暮らしてるようなそういう世界の話 大のオス二匹が共に寝ても幅が余る大きなベッド。燐音はこの広いベッドが嫌いだった。まるで早く嫁を娶り世継ぎを残せと言われているようで、広いはずなのに妙な圧迫感を感じていた。家族が平等にこの広さのベッドを与えられていたのならば気にならなかったのだろうが弟の一彩のベッドは召使い達とそれ程変わらないごく一般的なサイズだ。まだ自身も一彩も幼かった頃はよく添い寝をしていたが今の燐音が成長した一彩と添い寝をしようものならあまりにも窮屈に感じるのだろう。
     同じ血が通っているはずなのに種族の違う弟、昔は自分とは違う物珍しさによく弟の丸い尻尾や長い耳を触っては嫌がられた記憶が蘇る。兄のする事はほぼ肯定していたような弟が嫌がっていたのだから本当に嫌だったのだろう。形状が違うとは言え自身にも耳と尻尾はあるのだから他人に触られたくないという心情は分かってはいるのだがどうしてもその違う形状に興味が湧いてしまうのだ。
    「あン時一彩には悪ィ事しちまったなァ……」
     燐音は今自身の横ですやすやと寝息を立てている丸い尻尾をふに、と揉むように撫でる。
    「んっ……んぃ~……」
     丸い尻尾を触れられピクりと体を震わせもぞっと体を動かし寝返りを打とうとしているが燐音にがっしりと抱き込まれているせいでその願いは叶わなかった。だが余程疲れているのか目を覚ます気配はない。
     燐音は今、伴侶として迎えた相手を腕の中に収めている。それは誰かに勝手に決められた相手や燐音が君主として仕方なく適当に迎えた相手ではない。燐音が自身の意志で年月を掛けようやく婚姻の合意を得て正式に嫁として迎え入れる事ができたのだ。
    「やっぱデカすぎだろこのベッド」
     燐音にとって忌まわしき寝床もようやく安眠を得られる場になりそうだと思ったのも束の間、初夜を終えた燐音は疲労感や緊張の糸が解けた安心感よりも、未だ冷めぬ興奮に目も体も冴えっぱなしだった。
    「なァ、ニキもっかいしようぜェ~……」
     腕の中の体をそっと愛撫すれば呻き声をあげもぞっと体を震わせ反応を見せるが起きる気配はない。それもそのはず、燐音が初めてだったようにニキも初めてだったのだ。そして初めてにも関わらず、むしろ初めてだからだったのか互いの欲は止まらず限界が来るまで終わることはなかった。初めてのピロートークは会話という会話もなかった。ただひたすら息を切らし言葉の出ない空間を誤魔化すようにキスをしようとすると「またしたくなったら怖いから……今はダメっす!」と止められてニキはさっと布団に潜ってしまった。そしてそのまま入眠してしまった。
     今こそ燐音がニキの体を抱いている状態にはなっているが元々熱を覚ますのには丁度いいと広いベッドを有効活動しニキから離れようとした燐音を抱き枕とでも勘違いでもしたのか、腕を伸ばし燐音の体を自身の方へ引き寄せたのはニキの方だ。そんな事をされてしまえば先程までのしかかっていた倦怠感はどこか遠くへと吹き飛び、冷めかかっていた熱は再び上昇し気づいた時にはしっかりと抱き返していたのだ。
     思えばこうしてニキと身を寄せ合ってベッドを共にするのは久しぶりだ。出会ったばかりの頃は召使いのベッドよりも狭いベッドの中で身を寄せ合い冬は体温で寒さを凌ぎ、夏は家主であるニキを蹴落とした日もあった。幼かったニキが成長した事でさすがに二人で寢るには窮屈すぎると寝床を分けた。
    「よく耐えてたモンだよなァ……」
     あの頃から燐音はニキに好意を抱いていた。何度も性的衝動に駆られてはギリギリの理性で必死に抑えていた。発情期は悟られぬよう理由を付けて外で寢るようにしていたが発情期でなくとも多感な年頃に意中の相手と共に暮らすというのは多大な忍耐が必要だ。そうだ、あの時期を耐えることができたのだから今この一瞬もやり過ごす事ができるはずだ。燐音は聞いたことのない、おそらく食べ物の名前であろう何かを口走りながらニキの幸せそうに眠る姿になんとか幼い弟の姿を重ね血の繋がった家族のことを思い出し欲を逃がそうとする。
     しかし今のニキは恩人でも友人でもなく燐音の愛する伴侶だ。それも事を終えたばかりのニキを腕に抱いているのはまた状況が違う。すっかり普段のアホ面を晒した寝顔をしているが燐音に抱かれ色を帯び恐ろしい程の妖艶さを纏い情欲にまみれた姿が焼き付いて離れない。
    「ニ~キィ~……」
    「んん~……まぁだっすよぉ……そのお肉はまだ味付けがぁ……」
     食べ物絡みであるという事以外はどんな夢を見ているかは分からない。たまたまたなのかまるで燐音の呼びかけに答えるかのような寝言。夢の中で共にいる相手は燐音なのかもしれないが本物の腕に抱かれているというのにニキは夢の中の燐音の相手をしていると思うと面白くない。燐音ならまだマシな方だ、これが他の相手だというならもっと面白くない。燐音はニキの無防備に開いた唇に噛みつくようにキスをした。




     燐音とニキ、二匹の出会いは四年ほど前まで遡る。燐音は窮屈な里を抜け出し勢いで距離のある都会まで出てきたはいいものの手持ちの金は全て使い、都会という環境故に得意とする狩りをすることも叶わず路頭に迷っていた時だ。
    「おーい、おにいさん。そこの狐のおにいさん、生きてるっすか?」
     朦朧とした意識の中に響く幼い声、目の前にいるのはまだ幼い姿をした兎だ。
    「……何の用だ」
    「用も何もここお店の裏なんでこんなとこで倒れられちゃ困るっす」
     賑わう町中から少し外れにある小さな食堂。その裏口近くで燐音は座り込んでいた。そうだ燐音はその食堂からの香りに誘われ気づいた時にはここにいたのだ。
    「チッ……わーったよ」
     人通りも少なく休憩するには丁度いいと思っていたが人に見つかってしまったのなら仕方がない、燐音は体を起こし移動を試みるが限界に近い体力では上手く体を動かす事ができなかった。
    「あぁっ、おにいさんふらついてるじゃないっすか!どこか具合悪いんっすか?」
    「うるせえな……あっち行け、どけっつったのはテメェだろうが。っつーかガキと草食動物、特に兎は嫌いなんだよ。馬鹿だから」
    「誰もどけなんて言ってないっす!お店の近くで死なれたら困るしそれにほっとけないっすよ。特に狐は悪さする子も多いから怖い人が敏感なんっすよ、怖い人に見つかっても知らないっすよ」
    「怖い人……ねェ」
     長い間山奥で暮らしていた燐音だが都会では動物間での敵対や差別があるというのは小耳に挟んでいる。特に肉食動物と草食動物の確執、山で手口が通用しなくなった小賢しい動物達による都会での詐欺や窃盗。特に狐は霊力が高く神通力を使う者がいたり相手を騙すことを得意をしているせいで警戒されているのだ。警戒されている故に関わろうとする者も少ない、だからこそ燐音は都会で過ごすうえで他人から干渉されにくい狐は便利な姿だと思っていたのだが目の前にいる子兎はそんな狐相手に臆することもなく絡んでくる。これ以上厄介な事になる前にと壁伝いに歩き出したが気づいた時には燐音の視界は暗くなり、意識は消失していた。


     燐音が意識を戻したのは空っぽの胃を刺激する匂いが漂う空間、そこで柔らかく暖かい毛布に包まれていた。
    「あっ、おにいさん起きたんっすね!店長~!おにいさん起きたっす!!」
     目を覚ました先で慌ただしい様子で子兎が走り回っている。どうも燐音は店内にある座敷席の上で寝かされていたらしい。それもご丁寧に毛布まで用意してくれていたようだった。状況を理解しきれていない燐音の前に年配の男がやってくる。食堂の店主である鼬のような姿をした男は子兎に変わって燐音が今いる状況を説明してくれた。そして燐音が状況を整理している間も食堂の中で長い耳をぴょこぴょこと揺らしせっせと調理と給仕をこなす幼い兎。
    「あいつガキの癖に働いてんのか」
    「あの子はちょっと訳ありでね……でもいい子だから邪険にしないでやって欲しいんだ。それにあの歳で料理の腕前も大したもんだよ」
     評判のいい店なのだろう、町外れにある割には賑わっている。得体の知れない者を快く迎えてくれる店主の人柄がいいのか、それともそんな得体の知れない燐音を連れてきた子兎がそれ程信頼を得ているのか、おそらく両方なのだろう。店内の様子をきょろきょろと眺めていると子兎が大きな皿に山盛りの料理を乗せた皿を運んでいる。あんな量食う奴がいるのか、どこのどいつか見てみたいと運ばれる皿の方向を見ていると突然大きな黄金色の山が燐音の視界を遮った。
    「……?」
    「はい、どーぞ。おにいさんお腹すいてたっしょ?ニキくん特性チャーハンのようなものっす!」
     あろうことかその山盛り料理は燐音の眼の前へ運ばれたのだ。
    「ようなものってなんだよ……」
     燐音が自身の顔の高さ程ありそうな黄金色の山に圧倒されている一方でなかなか出された食事に手をつけようとしない事に痺れを切らした子兎がれんげで湯気立つ山を切り崩し一口にしては大きすぎるような量を燐音に向け差し出す。きらきらとした真っ直ぐな瞳で匙を向けられてしまうとこの好意を無下にするわけにもいかないと燐音は開く限りの口を開け、小さな山を口の中へと招き入れた。
     出来立ての熱さと一口にしては多すぎる量に一瞬苦しさを覚えるがその苦しさは一瞬にして消え去った。久しぶりにまともな食事を口にした事もあるのだろうが口の中に広がる味はあっさりとしているのに今まで味わったどの高級食材よりもずっと味わい深く、こんな美味しいものがこの世にあったのかと感動を覚えてる程だった。
    「うん、うまい……これ、お前が作ったのか?」
    「そうっすよ、本当は僕の賄いにする予定だったんで使ってるお野菜とかお肉は普通の人なら捨てちゃうような……あんまりいい部分じゃなくて申し訳ないんっすけど」
     高級食材などは一切使ってはいないどころか余り物で作ったのだと言う。それは裕福な暮らしをしていた燐音にとってあまりにも未知の味だった。もし燐音に仕えていた召使いがそのような食事を燐音に提供していた事が発覚すれば斬り捨てられていた可能性もある。しかし今現在、燐音は自らの手で進んで夢中で廃棄されるような食材で作られた料理を味わい胃の中へと運び気づいた時には完食していた。
    「ごちそうさま。美味かった」
     最初は突っぱねていたものの受け取ったものはあまりにも暖かく、身も心も満たされ自然と笑みが零れる。そしてその言葉を受け取り燐音に向けほんのりとはにかみつつも燐音に向けニコっと緩んだ笑みを浮かべた子兎の顔が何よりも印象的だった。まるでその周りにはキラキラと輝く光が散りばめているように思った程眩しい笑みだった。それを見た瞬間、燐音の中で初めて芽生える感情が生まれる。それが『恋』という感情である事に当然燐音は気づいていない。
    「あいつはいい嫁さんになる」
    「嫁って……それを言うなら婿だろう。あの子はオスだよ」
    「ふ~ん、都会ではそうなのか」
     燐音の視線は長い耳と丸い尻尾を揺らしながら働く子兎をじっと追いかける。鼬や猫の店員と比べてしまうせいなのか、それとも幼くあれど俊敏で力もあった特殊な兎が身内にいるせいなのかどうにも違和感が拭えない。
    「あんな鈍臭そうな兎もいるんだな」
     本能全開で生きられる山の中とは違い都会ではある程度機能が落ちてしまうものなのか、それともやはり弟や自身の育った環境が特殊すぎたのか、燐音はふと気になり少しばかり子兎から視線を外し他の店員の観察も初めていると少し慌てた様子の子兎の声が耳に入る。
    「店長~!あっちのお客さん注文違うっす!!肉野菜炒め定食大盛りじゃなくて普通の野菜炒めって言われたっす」
     注文ミスが発生して子兎がわたわたと燐音と話をしている店主の元へとやってくるがその表情は慌てているというよりもどこか嬉しそうにしている。
    「すんません!さっきのお客さんの伝票と間違えちゃって!今作り直してます!!」
    「え~じゃあこの肉野菜炒めはどうなるんっすか?!僕が食べていいっすか?いいっすね!!」
    「仕方ないね、とりあえず食べるのは一通り注文終わってからね」
    「やったー!」
     時には間違えた品でもいいという客もいるが今回はそうではなかったようだ。その場合間違えた注文は従業員への賄か廃棄になる。だがこの店は子兎がいる以上廃棄になるという事はない。子兎は誰よりも食への執着心が強いのだ。
    「忙しいとこういう事もあるよね」
     店主はそう言いながら燐音の食べ終えた食器と共に厨房へと戻っていく。1人残された燐音はそのままずっと子兎の働く様子を眺めていた。



    「……これ家……なのか?」
    「失礼っすね!狭いとこっすけど屋根と壁と台所はあるんでお外よりはマシだと思うっす」
     そのまま野に放ってまた倒れでもしたら後味が悪いという理由で燐音はそのまま子兎の家に連れて来られた。家というにはあまりにも質素な、狭い集合住宅の一室。
     子兎に誘われた際一度は断ったが出会ってたった一日、それも狐を信じ切って家に招き入れるというのだ。あまりにも無防備すぎる。
    「いいのかよ、お前の事食っちまうかもしれねえんだぞ」
    「なはは、そんな事できるんだったらあんなとこでお腹空かせて倒れてないっすよ」
    「あれが演技だったら?お前を信用させて、お前を食って次はあの店を狙うかもしれねえ」
    「それは怖いっすね。でもお腹空かせて困ってる人を見殺しになんて僕にはできないっす」
     もちろん燐音にはそんな意図はない。助けて貰ったからには恩を返すつもりでいる。そしてなによりもあまりにも無防備で弱そうなこの子兎を守ってやりたいという庇護欲。一度沸き起こってしまった感情というのはそうは簡単に捨てきれない。だから燐音は言われるがままにのこのこと着いてきてしまったのだ。
    「……おふとん、狭いっすけど」
     子兎は寝る支度を始めると当然のように燐音を自身が普段使っているベッドの中へと誘う。
    「別に俺は床でいい」
    「そうはいかないっす、う~ん……でも確かに暑苦しいっすよね……」
     暑さのピークは過ぎたとは言え季節は夏、二匹密着して寝るには少々寝苦しいだろう。
    「あ!そうだお父さん達の布団があったはず」
     押入れから布団を取り出し子兎は少し被っていた埃を振り払うとその布団の上に寝転がる。その様子からしばらく使っていないのだろう。両親は不在のようだがいつから不在なのか、どうして幼い子供を残しているのか、もしやもう帰らぬ存在なのか、多少気になる事があるとは言え特に詮索はしない。そこを詮索してしまえば燐音自身もおそらく身の上を明かさないといけなくなる可能性もある。それは避けたかった。確かにあの店主は子兎の事を『訳あり』と言っていた。こうして訳あり同士巡り合ってしまったのも何かの縁なのだろう。
    「別に俺は……それなら俺がそっちで寝る」
    「大丈夫っすよ、僕の方が体小さいし」
     燐音を連れて帰ると言い出した時も思ったがニキは見た目の割に案外頑固だ。そして自分の事よりも他人を優先する。昼間もそうだ、本来なら自身が食べるはずだった賄を全部燐音に寄越した。その結果店主と他の店員が気を利かせ注文を間違えたフリをして子兎に食事の機会を与えたのだ。店主から聞いた話によればニキは小さな体をしているが体質的に空腹になりやすく大量の食事が必要だった。だから普段なら捨ててしまうような食材も無駄にせず食べきる。というよりもそれくらいしないと生きていく事が厳しいのだ。
     あれだけ働いていてそれなりに疲労感もあるはずだろう、燐音は子兎が先に眠るのを待っていたがいつまでも壁に背中を預けっぱなしの燐音がきになるのか、まるで圧を掛けるかのようにぱちくりと開いたどんぐり眼にじっと見つめられ続け仕方なくベッドの上に体を預ける。
     一人用にしてもどこか狭いベッドに使い古された薄い布団はそんなに心地の良いものではない。だが燐音はそんな寝心地の良さよりも染み付いている子兎の匂いに気を取られていた。
    「おにいさん、眠れそう?」
     声を掛けられ目が合うと妙に気まずい気分になった燐音は顔を隠すように子兎から視線を逸らす。
    「……燐音」
    「ほぃ?」
    「天城燐音、俺の名前だ」
    「僕は椎名ニキっす」
    「それは知ってる」
     ふふっと漏れる笑い声、きっとふにゃっとした笑顔をしているのだろう。触れられているわけでも息が掛かる程近距離にいるわけではない。それなのにどこかこそばゆい。初めて抱く感情にそわそわして結局その日燐音は上手く睡眠を取ることができなかった。


     行く宛のない燐音はニキにくっついて再びニキのアルバイト先の食堂へ訪れる。仕事の邪魔をしない、混雑したら席を譲るという条件で燐音はカウンター席で店に置いてある古い小説本を読み進めていた。やがて店内は賑わいだしそろそろ席を譲る頃合いになるかという時、やってきた客に店内は騒然とする。
     町外れの大衆食堂にやってくるには気合が入りすぎているのではないかと思える程の華美な装飾品を身に纏い、胸元が大きく開き腰の位置までスリットの入ったドレスを着た派手な装いの女豹。見るからに鍛えられた三匹の黒豹を従え店員の挨拶にも答えず、一歩進むごとに床を突き刺すように細く伸びたヒールを鳴らしながら席にも付かず何かを探すように店内を見渡している。
    「お、お客様……?」
    「この店に子供のパンダがいるだろう、そいつを出しな」
    「パンダ?」
     パンダ、愛されるという事に対して天性の素質を持った寵愛動物。無意識の間に他人を魅了してしまう愛らしさ、しかし他種族に比べ個体数の少なさとその特性の厄介さから殆どのパンダは竹林からあまり出てこない。迂闊に出ようものなら知恵が回り悪意のある他種族に利用される事も多いからだ。
    「こんな場所にパンダなんているわけねーだろ」
    「白昼堂々めし処で飯食ってるパンダがいたらそこは見世物小屋だ」
     威圧感を放ちながら女豹は店内にいる店員、客一人一人に顔を近付け匂いを嗅いでは違う、と苛ついた様子を見せる。
    「おい、そこの子兎。雑食の香がするが貴様は本当に兎か?」
    「えっ!僕っすか……確かに僕はお腹すくとなんでも食べちゃうっすけど……」
     女豹に指示され黒豹がニキを取り押さえる。
    「えっなんっすか?!」
    「そいつの耳を調べろ」
     命令に従い黒豹はニキの長い耳をぐいっと引っ張る。
    「ひぃっ……!痛いっ……!痛いっす!!やめろおっ、はなせぇっ!」
    「お、おい……!!」
     腕っぷしに自慢のある熊の店員が止めに入る前にただならぬ様子を感じた燐音がちょっかいをかける。
    「なぁ、悪ぃけど俺甘口のが好みだからあんまピリピリした空気出されると困るんだわ。子兎から離れろ」
     挑発を受け燐音へ向かおうとする黒豹とは裏腹に女豹は落ち着いた様子で黒豹を制止する。
    「……素直に野良狐の言う事を聞くバカがどこにいる」
    「ふぅん、『野良』『狐』ねぇ……」
     燐音は軽口を叩きながら高圧的な態度を取る女豹に鋭い眼光を突き刺すように睨みを効かせる。
    「……ッ?!」
     すると全身の毛が逆立つような威圧感に思わず豹達は縮こまり地に手足を付ける。
    「大丈夫か?」
     震えながら両手で耳を押さえる子兎に燐音の声は届いていない。何かに怯えるように震える子兎の肩を抱き寄せ、辺りに流れる異様な空気に気づく。
     豹だけではない、その場にいた全員が萎縮していた。
    「あ~……俺がピリピリさせてどうすんだ」
     燐音が気を緩めた途端張り詰めていた空気が軽くなる。それでもその眼差しを間近で浴びていた女豹はしばらく動ける様子ではなく先に身動きの取れるようになった黒豹達に運ばれ店の外へと出ていった。これで騒動が丸く収まれば良かったのだがそうもいかない。
    「……おにいさん今の……」
    「君、一体今何をしたんだい?」
     ひと睨みでプライドの高い豹を黙らせる力。恐ろしい程の威圧感。こんな事ができるのはただの狐にできる事ではない。燐音に向けられる畏怖の視線、やってしまったと燐音は被っていた帽子の鍔を深く下げる。
    「ちっとばかし虎の真似してみただけなんだが、みんなを怖がらせるつもりはなかった……忘れてくれ……」
     悪知恵の働く狐が他の動物の特性を真似る事はよくある。狐が警戒されているのはただ悪知恵が働くせいだけではない、狐の中には神通力が使える者が少なくはないという理由もある。燐音もそのタイプなのだろうとその場では話がまとまった。とにかく迷惑な輩を追い出すことには成功したのだ、それで一件落着と普段通りに戻った空気に燐音はほんの少し安心する。だが燐音が抱えた不安要素は自分の事だけではない。
    「あ、僕もお仕事戻らなきゃ」
     燐音の腕に抱かれたままのニキがもぞもぞと動き出し燐音は慌てて手を離す。つい勢いで抱いてしまった。状況が状況だったのだ、ニキは何とも思ってないのだろうがまだ付き合ってもいない、それどころか好意すら伝えていない。そもそもまだ出会って二日目だ。それなのに手を出してしまった。やはり早めに思いを伝えしっかり責任を取らねばと考えていた時だ、仕事に戻ったはずのニキが再び燐音の元へ駆け寄ってくる。
    「おにいさん、さっきは助けてくれてありがとう」
     耳を揺らしぺこりと丸い頭を下げる。頭を下げられ礼を言われる。燐音にとっては日常で、当然のように受け入れていた行為だった。その当たり前の光景にいつしか燐音は何も感じなくなっていたのが、ニキのその行為にはなぜだか心が温かくなった。それは幼少期に初めて感謝を告げられた時のような優しい気持ちだった。



     女豹襲来事件からしばらくは警戒していたがあれからニキや店周辺に不穏な出来事は起きていない。平和なのはいい事なのだがどうしても燐音には気になる事があった。昼間はまだ暑さが続くが夜風はほんの少しだけ冷たくなってきた。風に揺れる長い耳に視線を送りながら燐音はニキに問いをぶつける。
    「なぁ、お前本当は兎じゃないだろ」
     ニキに対して抱えていた違和感、そしてあの女豹の物言い。
    「あ~見えないっすか?最近背伸びたんっすよね、僕としてはこれ以上大きくならなくていいんっすけど……」
    「そういう事じゃねえんだけど……まぁいいわ。お前が兎だろうが狐だろうが未知の生命体だろうがニキはニキだ。それにはかわりねぇ」
    「そうっすね、僕は僕、椎名ニキっす」
     例えばニキが兎ではなかったとしてどうするつもりだったのか、その答えは分かりきっている。どうもしない。我ながらおかしな問いかけをしてしまったと後悔しながらもふさふさとした尻尾を使い燐音はふわっとニキの小さな背中を撫でる。
    「おにいさんのしっぽ、あったかい」
     燐音が今するべき事はただこの穏やかな日常を守り抜く事だ。

     その日二匹は初めて同じ布団の中で身を寄せ合いながら眠りについた。
     


     時の流れというものは残酷なもので、ニキの願いは叶わずニキはすくすくと大きく成長していった。燐音と出会い四年が過ぎる頃には出会った頃の燐音の背丈と変わらぬくらいまで成長した。
     変わったのはニキだけではない。燐音も更に背が伸び、賭け事を覚えた頃にはコツコツ真面目に働く事をやめニキの稼ぎにまで手を付けるようになってしまった。
    「ニ~キきゅんっ、お金貸して」
    「貸さないっす!ってか倍にして返すってお金持ってたのに何でまた借りに来たんっすか?」
    「オトナには色々都合っつーモンがあンの。いいからとっとと寄越せ」
     燐音は本来従業員以外立ち入り禁止の厨房に赴きニキに絡んでいる。店にいる誰もが最早見慣れた光景になっていて今更突っ込む者もいない。
    「もぉっ邪魔っす!ベタベタ触ってこないで……んぎゃ!しっぽ握るなぁ!!」
    「きゃはっ、随分とまあケツもでっかくなりやがったなァ」
    「そんなでかくないっす……分かったっすよ、ちょっとだけ貸すからしっぽ離して」
    「そーこなくっちゃなァ!」
     仕方なくニキは厳重に仕舞い込んでいた財布を取り出すと中身を開ける前に財布ごと燐音に取り上げられてしまう。
    「あっ!」
    「じゃあな!ボロ財布の中身パンッパンにしてきてやンよ!」
     まるで村を荒らす山賊が如くやってきて下品な笑い声を上げブンブンと尻尾を振り回しながら嵐のように去っていく。
    「はぁ~……僕たちの生活費がなくなったら困るのは燐音くんもなのに」
     ただでさえニキは食費が掛かる。体が成長し食べる量が増えた事もあり以前よりも生活は苦しくなっていた。それでも燐音を切り離そうとしないのは拾った責任感もあるが一人で食べる食事より二人の方がずっと美味しい事を知ってしまったからだ。

     料理をしているとあっという間に時間は過ぎていく。そろそろ客足も減り賄飯にありつこうかとしていた頃だ、突然背筋がぞわっと震えその場から身動きが出来なくなってしまう。その恐ろしい程の威圧感には覚えがある。過去にも似たような事があった。ニキが女豹に捕まった時、燐音に助けられた時だ。
     だがあの時の威圧感とは感じが違う。呼吸が上手くできず嫌な汗が止まらない、何か騒がしい気がするが強い耳鳴りですべてが雑音にしか聞こえない。圧は次第にニキに近寄りニキは暗闇の中へと包まれる。



    「燐!燐はいるか?!」
     息を切らしながら賭場に駆けつけたのは常連客の猫だ。燐音とは賭博仲間でもあり美味い話があればすぐに持ってきてくれる情報通。
    「なァにそんなに慌ててンだよ、ここより儲かる賭場でも出来たか?」
     焦燥した様子にそんな話をしにきたではないいうのは察しがついている。そもそも儲け話ならばこんな人の多い賭場にはわざわざ持ってこない。嫌な予感がするができればその予感は外れて欲しい。しかし燐音のそんな願いは届かなかった。
    「ニキが誘拐された」
     あと一つ牌が揃えば上がり。高得点で総取りできるというタイミングだったが燐音は卓を捨て無言で席を立ち慌てて店を出た。


     戻ってきたところでそこにニキがいないのは分かっていたがまずは状況を整理しなければいけない。まだ店内に残る張り詰めた空気、青ざめた様子で燐音の顔を見上げる店主、だが店の中が荒らされた様子はない。
    「……青龍様があっという間に連れてってしまった……俺たちは何もできなかったよ……」
     その名前に反応し燐音の尻尾がピキっと逆立つ。青龍と言えば四獣と呼ばれ白虎、朱雀、玄武と並び地を治める神獣だ。
    「青龍が?ここは白虎の縄張りだろうが。なんでここに」
     四獣にはそれぞれ方角に倣った縄張りがあり互いの地域への干渉をしないという決め事がある。住民が自らの意思で移住とする事は構わないが神獣の意思で管轄外の住人が欲しくなった場合、神獣同士で交渉あるいは悟られぬよう『神隠し』を実行する。おそらくニキはその対象に選ばれてしまったのだろう。
     ニキは料理の腕は確かだが腕利きの料理人ならニキでなくてもいいはずだ。それとも青龍の治める地域は余程料理人に恵まれていないのか、燐音は他人の領域へ手を伸ばす程の理由を考えある仮説へと辿り着く。それはずっと燐音がニキに抱いていた違和感だ。そしてその違和感の正体は燐音が口を開く前に店主の口から明かされる。
    「あの子は本当はパンダなんだ」
     驚きの感情はなかった、それどころかやっと掛かっていたモヤがすっきりと晴れた気がしてどこか清々しさもあった。パンダは青龍の治める地域には生息していない。何かしらの事情でパンダを味方に引き入れたかった青龍側は直接パンダの里に交渉を持ちかけたが断られこうして里から離れた場所で暮らすパンダへと目を付けたのだ。

     ニキの両親はパンダの里で小料理屋を営む料理人だった。子供を儲け、ひっそりと暮らしていくはずだったが生まれた子供の竹林を喰らい尽くす勢いで止まらぬ底なし胃袋はやがて他のパンダから疎まれてしまう。子供を養う為にはこのまま里に居続けるのは難しいのかもしれないと両親は見世物になる覚悟で里を出て都会で飲食店を経営し始めた。そうなれば当然物珍しさにやってくる客で店は繁盛する。だが同時に客を取られた同業者やパンダを悪用し儲けようと考えた輩に嵌められ店は閉店に追い込まれてしまう。もうここでは暮らしていけないがこれ以上自分たちの事情に巻き込んではいけないと同業者の中で唯一信頼関係を築いていた店主にニキを託し夫婦はこの地を去っていった。幼いながらに状況を理解していたニキはそれを了承し、偽装の術を施され兎として過ごしていた。
    「あの子に術をかけてる麒麟様が言ってたんだよ、最近白虎様の霊力が弱まっているって。どうも次期当主になるご子息様が行方知れずのようでね、生きているかどうかすら定かではない。麒麟様の力は白虎様の加護あってだからね。それが薄くなっていたから見破られてしまったんだろうね」
     その言葉に燐音の胸がぐっと締め付けられる。
    「……俺のせいか」
    「え?」
     燐音は被っていた帽子を脱ぎ捨てると三角に尖った赤い耳がみるみる丸く変化していく。変化をしているのは耳だけではない、ふさふさと揺れていた尻尾はしゅっと細く伸び美しい白銀に黒い縞模様を艶めかせている。
    「あ、あなた様は……」
     その様子を見ていた誰もが狐に化かされているとでも思いたかったがその溢れる気品と神々しさ、そして強い霊力はそう簡単に真似できるものではない。
    「白虎様……?」
     その地に暮らすものは四獣の加護を受けている。身に覚えのあるその暖かな力は紛れもない本物だ。
    「ニキを取り返してくる」



     鼻腔を擽る香りに香りだけでは足りないと訴えるかのように鳴る腹の虫。
    「桃饅頭!!!!」
     ニキは無意識のうちに香り立つ方向へ足を伸ばしその香りの正体を掴み口の中へと放り込む。
    「おいし~っ!これ僕が知ってる味付けと違うっすね~、なんだっけ東の方で主流の…………んぃ?」
     本能が赴くままに桃饅頭を頬張り多少空腹が満たされた事でただでさえ食以外の事には働くことの少ない頭が働き始める。
    「……あれ……ここどこっすか?」
     見慣れない広々とした豪華な部屋、そしてそこまで強くはないが一度味わった妙な威圧感。ニキは恐る恐る放たれる威圧感の方向へと目を向ける。
    「ひっ……ご、ごめんなさいっ!!勝手に食べ物に手を付けたことは謝ります……!!だから食べないでぇっ……!!!」
     頭を抱えニキは生じる違和感、久々に触れる本来の姿に戸惑いを見せる。
    「あっ……あれぇっ……耳っ……耳がぁっ……」
    「それがお前の本当の姿なのだろう」
     パンダの姿に戻っている。そしてとてつもない霊力を目の当たりにしてニキは己の状況を察する。あの時何者かに誘拐されたのだと。
    「あの老いぼれ白虎め、こちらが下手に出てやったというのに……」
     頭に伸びる猛々しい角に長く青い髪と髭を伸ばした美しい青年はぶつくさを呟きながら冷たい目をニキに向ける。その凍るような視線にニキの体は竦み上がる。
    「まあいいパンダが手に入ればこちらのものだ。あとはどうやってこの種を増やしていくか……」
     悲しい事に食文化以外の知識が薄いニキは今目の前にいる人物が四獣の一角、青龍である事に気づいてはいない。だがその時ニキに湧いた感情は素直に恐怖だった。ニキは最低限その日の食事にありつければ他の事はどうでもいい。あわよくば腹いっぱいになれたらもっといい、そんなスタンスで生きてきたつもりでいた。食事以外の事はどうでもよかったはずなのに今ふと脳裏に浮かんだのはたくさんの食事と、その食卓を共に囲う燐音の姿だ。
     この先自身がどうなるのかは分からない、生かされるのか殺されるのかも。殺されるならばまだ皿の上に残っている桃饅頭を平らげたい、生かされるとしても桃饅頭は食べたい、燐音と分け合って美味しさを共有したい。
    「うぅっ……燐音くんにまだお金返してもらってない……」
     眼の前の青龍がなにやら小難しい話をしているが当然ニキの頭には入ってこない。頭に浮かび上がる燐音を思い出し同時に憎らしくなる程の横暴な態度に度重なる借金の存在を思い出す。このままニキがいなくなってしまったら燐音はどうするのだろう、自分の迂闊な行動のせいで燐音が野垂れ死にしてしまうのは後味が悪すぎる。優しい店主が面倒を見てくれるかもしれないがこれ以上迷惑を掛けてしまうのはあまりにも申し訳が立たない。ああどうしたものかと考えごとをすれば訪れる空腹。ゆっくりとニキが思考の停止を始めた頃に勢いよく部屋の扉が叩かれる。

    「ちわ~っす!白虎屋さんでェ~っす!こちらにうちのカワイイパンダちゃんがお邪魔してるって聞いたンですけどォ!」

     見覚えのある声に姿、だがその姿はニキがよく知る姿とは異なっている。だがその匂いから別人ではないという確信があった。
    「燐音くん?!」
    「白虎……!!!貴様生きていたのか!!」
    「え、俺っち死んでたの?」
     うろたえる青龍をよそに燐音は同じく状況を分かっておらずうろたえているニキを抱きかかえる。
    「いや~うちのパンダちゃんが迷子になったようでスイマセンねェ」
     燐音は敢えて誘拐されたとは言わない。今回の件は燐音も責任を感じているのだ、先代の力が弱まっているという事を把握しながらも神獣という責務から逃れようと故郷を捨て下々の世界へと降り立った。その結果がこれだ。その隙をつかれ縄張りを侵略されまさかこれから一生かけて幸せにしていこうとした大切な存在を奪われたのだ。
    「朱雀と玄武には通達済みだ。次手を出してみろ、こうは行かねェ」
    「くそッ……」
     青龍とて事を荒立て全面戦争をしてまでパンダが欲しいわけではないが『神隠し』はある事なのだ。だから今回も『神隠し』として事を終えるつもりでいた。しかし選んだ相手が悪かった。『神隠し』にはお誂え向きだった存在の背後に神獣がいるなんて誰が思っただろうか。
    「……っと相応の詫びは頂いてくぜ、その代わりこっちはてめェの縄張りから『神隠し』はしねェ。これでどうだ」
     燐音はある程度自身に有益になる交渉も持ちかけ、相手も完全に損にならないよう条件をぶつける。元より燐音は神隠しなど行ったことがなければこの先も行うつもりはない。つまり燐音にとって得しかないのだ。


     無事ニキを取り戻し、食堂に事の顛末と燐音の正体を明かし治安が守られている事を保証しそれはそれこれはこれと食事を済ませて二人肩を並べ寝床のある狭い小屋へと足を運ぶ。共に並んでいる際にちらちらと視界に入っていた長い耳はもう見えない。
    「おかしいと思ってたんだよ、そんなケツのでけェ兎がいるわけあるかって」
    「僕そんなにお尻おっきいっすかね?燐音くんがちっちゃすぎなんっすよ」
     当然のように尻を叩く燐音に抵抗の意味も込め燐音の尻へ仕返しだと手を伸ばすと長い尻尾でぺしっと叩かれる。
    「あだっ!」
    「ニキ如きが俺っちにそう簡単に触れられると思うなよ」
    「ひどっ……まぁ確かに僕みたいなパンダが気安く触っていい相手じゃないはずなんっすけど……なんなっすかね」
     燐音の正体を明かしたところでニキの態度が改まるわけではない。むしろその方が燐音としては助かるのだが。
    「……狐でも虎でも神獣様でも燐音くんは燐音くんっすもんね」
    「そーそー、燐音くんは燐音くんだなァ」
     過去にもそんなやり取りをした来がする。ニキは覚えているかは分からないが。燐音は長い尻尾でニキの丸い尻尾をつん、と突く。

    「あ!神獣様って事はいっぱいお布施とか貰ってるんっすよね?今日お財布から抜いてった分くらいすぐに返せるっすよね?」
    「あァ?神獣様の加護タダで受けられると思ってンのか?」
    「ひぃっ!横暴!!っていうか僕加護とか頼んでないっす!お金返して!!」
    「ダ~メ、ニキきゅんは俺っちのお嫁さんになって貰うから、一生離さねェぞコノヤロー」
    「いやああっ!!お父さんお母さんごめんなさい、あなたの息子はとんでもない暴君に捕まっちゃいました」
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