甘い、熱い、苦い 一、
八月のある日、傑の机の引き出しの中から大量の薬を見つけた。俺はそれを部屋に持って帰ってゴミ箱に捨てたが、その次の日に探ると、薬は二倍の量になって傑の引き出しの中に入っていた。それ以来俺は傑の机の中を見ていない。ただの風邪薬じゃないか、そう思ったので。そう思わずにはいられなかったので。そう思わなきゃ恐ろしすぎたので。
二、
傑の手のひらは熱い。彼は特に体温が高いわけではないが、なぜか俺を触る時にだけ、傑のそれは熱くなる。興奮するからだろうか? それとも俺の体温が下がっているのだろうか?
三、
「硝子の風邪、早く治るといいな」
八月、硝子が風邪をひいた。原因は過労。反転術式の使いすぎで、身体が悲鳴を上げたのだ。彼女はそれでも任務にあたろうとしたし、上層部もそうさせようとしたので、夜蛾先生が抗議し今は病室で眠っていた。でも、病室で煙草を吸ったので、それはさすがに先生に怒られていた。
1481