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    ゲニー

    ZL小説
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    ゲニー

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    【学パロ/DKゾロル】
    ・ルフィが持ってるあるお菓子をゾロがトリックオアトリートしにくる話です(何それ)
    ・ちょっちHな悪戯するので注意
    ・ペローナちゃんが出ます
    ・ハピエンです
    ・ありがたく使い回しハッピーハロウィン!

    #ゾロル
    zolu

     『≠理不尽祭り』



     本日、10月31日──。

    「お前の持ってるその菓子を寄越せ。さもなきゃ悪さするぜ」
     どーん。

     と、言い放った人物は緑頭の長身の男で、切れ長の眼をこれでもかってほど凶悪に眇め、黒髪の少年を睨めつけた。
     だらけきった月曜の朝の教室が、いっぺんに凍りつく。
     言われた本人は自分の席の自分の椅子に座ったまま、ぽかっと口を開けてその生徒を見上げていたが、
    「いやだ」
     ……一蹴。
     でっかい眼をキッと釣り上げても、どこかあどけなさの抜けない彼はバッチリ童顔だがなぜか迫力がある。
     バチバチと二人の間を火花が散った。
     この菓子は今日限定の特別製で、朝イチに売店へ並ばなければ手に入らない超レア物なのだ。絶対に渡せない。兄にも食べさせる約束をしているのだ。
     後ろの席の親友が彼のブレザーのすそをツンツン引っ張って「ヤベェって~」と何がヤバイのかビビりまくっているようだが、引く気はない。
     しかしくだんの男は「それなら」と悪さを仕掛けてくる様子もなく、急にガクッと肩を落としたかと思うと、
    「そうか……だよな」
     トボトボと教室を出て行ったのだった。
     瞬間、「だぁぁ!」と弛緩する教室。クラスメイトがなんだったんだあれは! と彼に詰め寄って来る。
    「ルフィ!!」
     彼は名を、モンキー・D・ルフィといった。サニー高校1年生。
    「アイツなんだ!? ルフィの知ってる奴か!?」
    「今日があの日だからこそのさっきの台詞だよな? にしちゃーいきなりだったな~」
    「あぁ、あの日か」
     そう言えばそうだー、と口々同意するみんなもさっきの緑頭を知らないようだが、別の何かは知っているらしい。
    「あの日って?」
     とルフィが聞けば、
    「ハロウィンじゃん!!」
     すぐに答えが返ってきた。
     おお、ハロウィンか。聞いたことあるぞ。
     確か堂々とおやつを貰ってもいい日だ。←ちょっと違う
    「アイツが誰かは知んねェけど、よっぽどこの生クマ焼きが欲しかったんだなぁ……」
     白い油紙の袋を持ち上げ、ルフィはちょっと申し訳なくなって眉を下げた。
     その生クマ焼きとは普段はただのどら焼きなのだが、今日だけなぜかクマ型なのだ(しかも顔には継ぎ接ぎ模様)。耳の分だけお得で、10月31日のみ売り出される幻の商品である。中のこしあんも生クリームが練りこまれる上、お値段据え置きの100ベリー。
     数量限定発売なのでお1人様2個まで、と決まっているのも、多分レア度をアップしているのだろう。
     その情報をOBの兄から聞いたルフィがぜひ食べてみたいと言ったら、だったらおれの分も買ってこい、と厳命されたのだった。

    「人は見掛けに寄らねェなぁ」
     と言ったのは親友のウソップだ。続けて、
    「さっきの奴、甘いモンは嫌いですぅが制服着て歩いてる印象なのに」
    「なははは! 言われてみりゃ、あんなカッコイイ奴が生クマ焼きにかぶりついてるとこ想像したらおんもしれェ~!」
     睨み合ったとき見た顔は確かに男前だった。イケメンってやつだ。
     そういうルフィは女子からよく“可愛い”と言われ常々不本意な思いをしている。
    「校章からすると3年だぜ、3年!」
    「よく見てんな~ウソップ」
    「まぁな。想像するお前もチャレンジャーだがな……」
     ウソップの長鼻がやや萎れたが、クラスメイト達は逆にヒートアップしていった。
    「次は腕ずくで盗りに来るかもしんねーぞルフィ! 気を付けろ!」
    「アイツはそういうタイプだな。きっとそーだ」
    「欲しいモンは奪ってでもモノにする!って感じ?」
    「でもすぐ引き下がってったじゃんか。案外あの髪の毛みたいに草食系だったりして」
    「そんなの解るかよ! 後でどっかに呼び出されてきっちり悪さするつもりかも……」
     みんな言いたい放題だ。あんなにビビってたくせに。
     悪さってなんだよー!とニヤニヤする奴らにルフィは首をかしげ、
    「悪さなんかされるつもりねェけどさ、おれもっぺん会ってみよっかなー」
    「はぁぁ!?」
     見事、一同がハモった。
    「生クマ焼き2個あるし。エースには2、3発殴られりゃいいし」
    「お兄さんに殴られても自分が食うんだ……」
     ボソッと呟いたウソップの言葉は無視し、ルフィはさっそく自分の分にかぶりついた。


     そんなわけでルフィはHRそっちのけで緑頭を捜索中である。
     走り回る予定なので、上着は脱いできた。
     そしてちょっぴり探偵気分。
    「おれのことは名探偵ルームズと呼んでくれ!」
     誰もいないのにパイプとか銜えるフリしてみる。
    「んー、口ヒゲとマントもあるといいのに。あとあれだ、まーるい帽子!」
     にゃはははと一人盛り上がってハッと我に返り、ルフィはそんな場合じゃねェとまた気を引き締めた。何かと忙しい。
    「捜査の基本は……何だっけ? とりあえずアイツのことで解ってんのは──」
     案件の男、情報まとめ。
    ①緑頭のイケメン
    ②3年生
    ③生クマ焼きを欲しがっている
     ……以上。
    「少な……。ほんじゃ3年の教室をあたってみるか? 3年の教室をあたってみよう!」
     結局は行き当たりばったりのようだ。
     ルフィはそうと決まれば3階から1階へ階段を一気に駆け降りる。3年の教室は1階だ。
     そして例の売店の前を通りかかり、ふっとあることに気が付いた。
    「アイツ、何でおれが持ってるって知ってたんだ??」
     知っている者がいるとすれば、それは売店のおっちゃんか……?
     ルフィはレジカウンターにいた店主のまるい巨体を見つけ、さっそく聞いてみることにした。
     聞き込みだ、聞き込みー!
    「おっちゃん! ちっと教えてくれ!」
    「なんだぁ? また来たのか、今朝一番乗りのモンキー・D・ルフィ。もう生クマ焼きはねェぞ? キシシシ!」
    「その生クマ焼き、緑頭の奴が買いに来なかったか?」
    「緑頭……? あぁ、ギリギリ買えなかったアイツだな! 予備はねェのかとか噛みついてきやがってめんどくせェの何の……。ま、あれはハロウィン限定商品だからな、彼女にでもやりたかったんだろう」
    「間違いねェ、ソイツだ! そんで他に何か言ってたか!?」
    「買った奴で知ってる奴はいねェのかと聞かれたんでめんどくせェがおめェの名前と、2年のナミってのと3年のサンジってのを教えてやったぞ。あとは覚えてねェからな」
    「おお両方知ってる! ありがとう!!」
     ルフィはペコリお辞儀して、売店を猛ダッシュで後にした。

     が……。
    「ナミんとこもサンジんとこにも来てねェって……じゃあ諦めたんかな? でも教室にもいなかったしなー」
     同学年のサンジに聞いたら、ソイツは11組だと言われ覗いてみたのだが、HRも始まっているというのに緑頭はいなかったのだ。←自分のことは棚に上げる
    「でもいないってことはまだどっかウロついてるよな!?」
     それともサボりだろうか。ルフィもHRや授業への、でなきゃいけない! という観念は全くないタイプだ。
     良くも悪くも自由奔放。
     座右の銘は『人は人。おれはおれ』──。
    「あーあ、でもおれ早起きして眠みィんだよォ。授業中寝ちまうだろうし、チョッパー先生んとこでも遊びに行こっかな~」
     ルフィはもう緑頭のことは念頭から外し、サボりプレイス(=保健室)へ急ぐことにした。
     校医のチョッパー先生は、別段ルフィに甘いわけではないのだが、先客(具合の悪い生徒)がいない限りは無理やり追い出したりしない。
     入学当初、無理に追い出してルフィが裏山の溜め池(もちろん立ち入り禁止)で溺れた経緯があり、顔面蒼白になって以来それなら目の届く所でサボってくれた方がマシ、と苦渋の選択をしたからだった。が、もちろんルフィは知らない。
    「チョッパー先生! 遊ぼうぜー!! ……ありゃ?」
     扉前の不在プレートを見ないルフィなので、もぬけの殻の白い部屋に首を傾げた。
     なーんだいねェのか。帰ろう……。
     と、ルフィが引き戸を閉めようとしたとき、奥から高いびきが聞こえてきたのだ。
     カーテンの向こうにはパイプベッドが2つ並んでいる。
    「チョッパー先生もサボりかぁ?」
     そんなわけはないが、ルフィ思考のなせるわざである。
     ルフィは戸を閉めてテコテコとカーテンへ近寄り、シャーッと開け放った。
    「起きろ! チョッパー先生!!」
    「うわぁ!?」
     チョッパー(ルフィ予想)がマンガかコントのように飛び起きた。
     しかし飛び起きたのはルフィの予想に反し(当たり前)、全くの別人だった。
     そして、ルフィは生まれて初めて運命と言う目に見えない引力を感じることになる。
    「あーっ!! お、お前っ、緑頭の生クマ焼きじゃんか!!」
    「……おれはそんな名前じゃねェ」
     寝起きでさらに凶悪な眼光がルフィを上目遣いに睨んだが、それは一瞬で、
    「あ……? あぁお前、さっきのケチな1年か」
     しかもヒジョーに心外な一言付き。
    「ケチじゃねェ! これはおれが1番に並んでゲットしたお宝なんだぞっ」
    「お前それ……! まだ食ってねェんだったらくれ!」
    「だからイヤだ!! これは兄ちゃんの分なんだ。約束してんだっ!」
    「あーそうか……。“約束”なら仕方ねェよな」
     首の後ろに手をやり、深々と嘆息した男がベッドに腰かける。ルフィはキョトンと見て、なんだかワクワクするまましししっと笑った。
     なんつーか、思ってた通りの奴だ。
    「てのはやめて、これお前にやろうと思って探してたんだ」
    「……は!?」
    「なんか訳ありなんだろ? だからやる」
     男の隣に腰かけ、ルフィは紙袋を「ん!」と突き出した。
    「けど兄貴のなんだろう? 貰えねェよ。半分諦めてふて寝してたんだが、だからって“約束”を破らせてまで受け取れねェ」
    「お前って……マジで思った通りの奴だ! おれ気に入った!!」
    「いや気に入られても」
     つーかおれの話し聞いてたか?と小首を傾げて見つめてくる男をルフィはマジマジ見やる。
     袋を押し返してきた彼の手は、まだルフィの手を握っている。
    「お前、名前──」
     ルフィが緑頭の名を聞こうとしたとき、保健室の引き戸がガラリと開いた。
    「……やっべ。校医戻って来ちまったか?」
     男がここにいたのは不在を狙っての確信犯らしい。
    「チョッパー先生か?」
     ルフィも男の肩越し戸口に目をやるも、途端、男がゲッと顔をひきつらせるのには首を傾げた。
     なぜならその横顔に畏怖すら浮かんでいたから。男がそーっとカーテンを閉めようとする。
     今さらチョッパーにバレたからといってコイツがこんなにビビるわけねェ、と確信したルフィは、
    「誰だ!?」
    「バカお前、声出すなっ」
    「そこかぁロロノアー!!」
     またシャーッと開いたカーテンから現れた女(だった)にルフィは思わずぽかぁんとなった。
     まっさか、この女を怖がってんのか? こんな強そうな男が??(という意味でのぽかぁん)
    「お前ロロノアっていうのか」
    「まぁな」
     そのロロノアは女の方を見ようともしない。
     女はピンクの長い髪をツインテールにした頭に王冠、制服のスカートはどうやったのかかぼちゃみたいに膨らんでいて、校則違反のシマシマタイツに、極めつきは変な形の傘をさして立っていた。
    「ロロノアの彼女?」
     確か売店のおっちゃんがそんなことを言ってたような。
    「違っっがう!!」
     思いっきり否定されたが。
    「そうなんか? なんかちょびっとホッとした。じゃあ何しに来たんだよお前」
     後半は女に問いかけた。
    「おめーは喋るんじゃねェ! おいロロノア聞いてんのか!? 生クマ焼きは手に入ったんだろうな、早く出せ!!」
    「ねェよ……」
    「何でだよっ、この役立たずの能無しの唐変木が! このペローナ様を怒らせると──」
    「バ、バカよせ! コイツもいるんだぞ、それだけはやめろ……!!」
    「ネガティブホロウ~~!!」
     咄嗟にルフィを庇ってくれたロロノアだったが、
    「ウッ…! 皆さんと同じ大地を歩いてすみません……」
     バッタリと床に突っ伏した。続いてルフィも、
    「お、おれはもうダメだ……死のう」
     その場にガクリと手を着いてしまったのだった。
    「す、すまんお前を巻き添えに……おれのせいだ」
    「いいんだ…おれは生まれ変われるならナマコになりてェ……」
    「いやおれが生まれてきたから……」
    「いやいやおれなんか貝になれば……」
     ネガティブは留まるところを知らない。
    「ホロホロホロ! 思い知ったか!? ──ん? そ、そこの1年……! おめーが持ってる袋、生クマ焼きじゃねェかぁ!? 私に寄越せ!!」
    「な、生クマ焼き……? あぁ、おれにこれを食う資格はねェ……死のう」
    「じゃあくれるんだな!? ラッキー♪」
    「クッ……待て、それはこいつの兄貴の……!!」
     ロロノアがルフィの紙袋を奪ったペローナに手を伸ばすも、簡単に振り払われフンと鼻で笑われる。
     そして紙袋から生クマ焼きを取り出した女は、
    「きゃあああこれがモリア様特製、生クマ焼きか……! お前の名前はクマシーにしよう。カワイイ私のクマシー♪♪」
     すりすり頬擦り。命名までした。
     ペローナはようやっと機嫌が直ったのか、ホロホロ笑いながら去って行ったのだった。

    「す、すまん……。お前の生クマ焼きだったのに……」
    「うう、なんだったんだ今の」
    「何かよくわかんねェがあのペローナの魔術にかかると、よっぽどネガティブな奴じゃねェ限りさっきみたいになっちまうんだ……。お前も相当前向きらしいな」
    「当ったり前だ! ハァ…やっと元に戻った……。たく、なんつー迷惑な女だ! けど取られちまったもんは仕方ねェ。取り返してもいいけどあの技がなぁ、うーん」
    「だよな……。アイツやたらとおれに纏わりついて来やがって、もう二度とおれに近寄らねェって約束で生クマ焼きを渡すことになってたんだが……。あんなに人気だとは思わなくてよ。お前スゲーなぁ、1番だったんだろう?」
    「ししし! まーな」
    「とりあえず座ろうぜ」
     ロロノアに腕を捕まれルフィは床から再びベッドへ。
    「お前もう気にすんなよ? ロロノア!」
    「つーか3年呼び捨てにすんな」
    「じゃあロロノア先輩?」
    「なんか気持ちワリィ……。ゾロでいいぜ」
    「名前、ゾロ?」
    「あぁ。ロロノア・ゾロだ」
    「ふぅ~ん」
     名前までカッコイイとか。ズリィよなぁ、と思いながらルフィは隣の上級生をまたじーっと見てみる。
     バチッと目が合うも、ゾロはふと目線を逸らせ、
    「やっぱデケェ目……」
    「ん?」
    「お前ルフィだったよな? 1年5組モンキー・D・ルフィ。売店の親父にあと二人の名を聞いたんだが、苦手な奴らだったんでルフィには悪いが狙わせて貰った……。お前見た目、弱っちそうだったし?」
     最後はニヤリ口角をつり上げ揶揄するゾロに、「ひっで!」とルフィは返すもウシウシ笑ってしまう。
    「ゾロはナミとサンジ知ってんのか?」
    「なんでその名前……」
    「おれも売店のおっちゃんにゾロのこと聞いたんだ! さっき探してたって言っただろ? したらナミとサンジの名前が出てきてさ。アイツらはおれの友達だ!」
    「そうだったのか……。サニー高も狭ェなぁ。奴らとは同中ってだけの腐れ縁なんだが、ナミは守銭奴だから10倍ふっかけられそうでやめた。で、ぐる眉はナミの下僕……。ヘラヘラした奴は好きじゃねェしアイツとは昔っから馬が合わねェから、頭を下げる気にはどうしてもなれなかったんだ」
    「なるほどわかった、ぼんやり。だからどっち行ってもいなかったんだなゾロは」
    「アイツらんとこ行ったのか? ホントに探してたんだなぁ、おれんこと」
    「おう! ま、ここで見つけたのは偶然だけどな~」
    「なら結果がこれでますます悪かった……」
    「いいィよ!」
     それよりも、こんな共通の友達がいて今までゾロに行き当たらなかったことをルフィはもったいないと感じる。
     さっきとは打って変わって優しく笑うゾロがルフィの頭をぐりぐり撫でてきて、ルフィはちょっと眉尻を下げた。
    「あ、悪ィ……ルフィ」
    「うーんでもやっぱ、ちょっとおれモヤモヤする……」
    「兄貴の分盗られたからか?」
    「うんにゃ。結局ゾロに生クマ焼きやれなかったのに、悪さもされてねェし……。今日はあの日なのによォ」
     なんか、不完全燃焼。
    「わ、悪さ? あの日?」
    「今日はハロウィンじゃんか!!」
     どどーん。
    「あ……そうか。よく考えりゃお前に言ったあの台詞、ハロウィンの日には何かやらなきゃ悪戯されるっていう、理不尽極まりねェ祭りの決まり文句じゃねェか」
    「理不尽って! ぎゃははは!」
     ルフィが腹を抱えて笑えばゾロも年相応の顔になって笑った。なんだかちょっと可愛い、新たな発見。
    「あの女にそう言えって言われたんだよ。そうすりゃ角が立たねェとか言いくるめやがって……」
    「おれのクラスの奴、固まってたけど?」
    「げ……」
     気付いてなかったらしい。大物なのか鈍いのか(多分両方)。
     また決まり悪げにゾロは頭を掻いた。しかし、
    「ま、ありがとなルフィ。助かったよ。金はきっちり返す」
    「いらーん! ハロウィンはただで菓子貰えるめちゃくちゃラッキーな日なんだぞ? バカだなーゾロは」
    「バカとはご挨拶だぜ。ま、お前がいらねェつーなら絶対ェ受け取らねェんだろうな」
    「うん!」
     短い付き合いなのにすでに見切られている。不思議ゾロだ。
     そしてゾロが「じゃあ」と腰を浮かそうとするので、ルフィは咄嗟に引き留める言葉を探さなきゃとグルグル考えるも、ちっとも浮かんでこない。
    「待てゾロ!!」
     とりあえず、直球阻止。
    「……?」
     ここで別れたらこれっきりになってしまうだろう。やっぱ、そんなのもったいないから──。

    「イタズラ……する?」

     ルフィの口からはそんな予定外の台詞が滑り出していた。
    「…………は?」
     たっぷり間を開けてのゾロの反応。切れ長の目を見張っている。そりゃそうだろう、でも引かない。
    「おれこのままじゃモヤモヤするし!」
     だから、ちょっとくらい顔にラクガキされたりとか、擽られるくらいなら、全然OK。きっかけになればそれでいい。
     上目遣いにゾロを見つめたルフィはじっとその出方を待っていたが、なんだがほっぺたが熱くなって困った。
    「ルフィ……。あのなぁ、その顔は逆効果だって。ホントに悪戯されたらどーすんだ?」
    「ん? だからしろって言ってんだけど?」
    「はぁ!?」
     またまたたっぷりとゾロが沈黙する。
     そしてどんなイタズラされるんだろうとビクビク構えていたら、なぜか唐突にゾロの顔が近付いてきたのだ。
    「??」
    「お前に逃げる権利、ねェからな」
     とか、息が掛かりそうな至近距離で囁かれ。
     次の瞬間には、温かいものがむにっと唇に触れていた。
     ……。
     ………。
     …………!?
    「ぷ…はぁ! ゾ、ゾロォ!?」
    「……二目惚れってやつかもな」
    「へっ?」
    「悪戯、するぞ」
    「え、えと……ええっ!?」
     こちょこちょーとかじゃねェの!?
     大混乱中のルフィは最早うまい逃げ道も用意できないまま、どさっとベッドに押し倒された。
     遠慮なくのし掛かってくる、ゾロの重み。
     布越しでも感じる屈強な胸筋。
     また唇を塞がれ、濃厚なキスをされながらYシャツのすそをズボンの中から引っ張り出され、ルフィはビックリしてその手をバシバシ叩いた。
    「んっ、んゃっ、んっんー!」
     いやいやしてもジタバタしても、ゾロのキスは解けないし、掌はルフィの素肌をするする這うのをやめてはくれず、おまけに興奮した腰を押し付けられた。
    「!? ……!!?」
     誰だよ、コイツが草食系とか言った奴……バリバリの眠れる魔獣だったじゃんかーーっ!!
     ルフィはそうして。
     ゾロの言った意味を、身をもって痛感するのである。

     ハロウィンなんて──。

     ハロウィンなんて“理不尽祭り”もいいとこだぁあああ!!!



     ──30分後。

    「ハァ……死ぬかと思った」
    「いや、まぁ、色々悪かったよ、今日は」
     まだ呼吸の荒いルフィと、やや反省気味のゾロ。
    「ちょっと! ゾロ、ルフィ!? こそこそ話ししないっ!!」
    「すいませんチョッパー先生……!!」
     ぶっちゃけ二人は保健室の隅っこで正座させられているのだ。終業のチャイムが鳴るまではこのまま、だそうだ。
     しかし生活指導の先生ほか諸々に報告されなかっただけありがたいと思わなければいけない。なぜなら、授業中にも関わらず、保健室のベッドでニャンニャンしていたわけだから……。
     最初はあたふたしていたルフィもゾロにあちこち触られすっかり感じ始め、翻弄されて気持ちよくって、ゾロがもたらす快感に抗えなくなっていった。
     甘ったるい声を上げ、ゾロにイカせてもらったり「最後までいいか?」なんて悪魔の囁きにコックリ頷いたり、アナルを弄られ痛いやらゾクゾクするやらのちょうど中間地点で漂っていた……まさに、そのときだった。
     校医のチョッパー先生が戻ってきて、あわや中断、御用となったのである。
     ルフィは今思い出しても顔からも体からもカッカと火を噴きそうだ。
     隣で正座しているゾロが「腹イテェ」とアレの未処理でボヤくたび、その逞しい肩が触れるたび、耳元に「ルフィは平気か?」とか囁かれるたび。ホント、ドキドキするわ、ムズムズするわ……。
     こんなのは生まれて初めての体験で。
    「ルフィ? おい、マジで怒ってんのか?」
    「へ!?」
    「後ろはハジメテだったか? なぁ……」
    「ち、ちがっ」
    「経験あり?」
    「そっちじゃなくて、お、怒ってねェしっ」
    「だったら続き、いつするよ?」
    「~~~っ」
    「ルフィ? 聞いてるか? ──なぁ、ルフィつってんだろうが」
    「うっっ…もう……、ムリっ」
    「あ?」
    「ウッ…ワァアアアアっ!!」
    「!!?」
     バーーンと立ち上がったルフィにゾロとチョッパーが唖然とした。言葉も出ない。おまけに、
    「ト、ト、ト……!」
     とかイミフなことを口走り出して。
    「と??」
    「おいルフィ? どうした?」

    「トリック・オア・トリート!!」
     ──おれもひと泡吹かせてやんなきゃ、気が済まねェ!!!

    「……あ! そっかそっか、今日はハロウィンだよなっ!! お菓子なんかあったかなー?」
     意外にも立ち直りの早かったのはチョッパー先生。
     しかしルフィが真っ直ぐに見ているのは、もちろんゾロで。
    「知ってると思うが、おれぁ何も持ってねェからな」
    「じゃあ……悪さする」
    「……了解。好きにしろよ」
     ニヤリ、笑うゾロの顔を今日何度目見るだろう。
     コンチキショーやっぱカッコイイ~!とか、ルフィは悔しく思いながらも、
    「ゾロ!!」
     両手を広げて飛び付いてく気満々……だったのだけれど、またまたタイミング悪くチョッパーに阻止されてしまった。
    「そうだこれがあったんだ! なーなー二人とも、これ食うかっ?」
     くりっと振り返ったチョッパー先生の手には見慣れた紙袋。“これ”とはなんと、例の生クマ焼きだったのだ。
    「な、生クマ焼きだと……!?」
     ゾロの顔がひくり、ひきつる。
    「生クマ焼きだーーっ!!」
     ルフィ大興奮。
    「先生達には毎年2個ずつ配られるんだぞ。あ、内緒にしといてくれよ!?」
    「えー!? なんだよそれ狡くねェ? おれが今日どんだけ早起きして並んだか……!!」
    「なーんだ。教師からせびりゃあよかったぜ」
    「せびるって……とにかく内緒だからなっ、二人とも!」
    「はいはい。チョッパー先生の面目にかけて、な」
    「わかった。おれも黙っとく」
    「でも今日は特別! なんたってハロウィンのお祭りだもんな~! おれ祭り大好きだっ♪ だからこの生クマ焼きはお前達にやるぞ? おれも綿あめ食いたいな~♡」
    「ホ、ホントか? 貰っていいのか!? やったー兄ちゃんの分ゲット! ありがとうチョッパー先生~~!!」
    「うんうん♪ 子供がおやつ貰う日なんだから遠慮はいらねェぞ!」
     その生クマ焼きの入った袋をルフィはキラキラおめめで受け取った。
     1個は、もちろんゾロへ。
    「ん、ゾロの分!」
    「おうサンキュ。じゃいただきます」
     さっそくパクリ、とかぶりついたゾロにルフィとチョッパーは「あー!」と声を揃えた。
     まだ授業中!とチョッパーが窘めるも、ゾロは知らん振りで。
    「おーこりゃなかなかうめェな」
    「だろ! だろだろ!?」
     今朝は生クマ焼きを食うゾロ、を想像して大ウケしたもんなのに、意外にもゾロと甘いものは似合っている。
     そしてゾロは、ヨダレを垂らしまくって凝視しているルフィに「ホラよ」と口許へ差し出してくれて。
     ガブッと噛みついたルフィはだいたいの予想通りゾロの指まで食ってこっ酷く叱られることになるものの。
     またコロッ、と考えを改めていた。


    「ハロウィンはやっぱいい日だったぁー!! 生クマ焼き食えたし、ゾロもゲットできたしっ!」
    「おれを菓子と一緒くたにすんな!」
    「好きにしろっつったじゃん」
    「そりゃ言ったがよ……何する気だよ」
     晴れて情状酌量の釈放となった二人は今、テコテコと廊下を並んで歩いている。
    「そうだな~。じゃ今日は休み時間ごとに二人でお菓子ゲットに行こう!」
    「お、おれに『トリック・オア・トリート』とか言えと……?」
    「当たり前じゃん。そんで仮装とかすんだよな? ほんじゃおれがフランケンで、ゾロはドラキュラだ!」
    「いやいや、ルフィが黒猫でおれが狼男だろう」
    「なんでだよ」
    「襲いまくる。猫耳のお前」
    「アホか! イタズラされんのゾロの番だろ! 言うこと聞かねェとゾロがおれにエッチなことしたのみんなにバラしてやる……」
    「なっ……たく、ホラみろ。やっぱりハロウィンなんざただの理不尽祭りだ!」
     目くじらを立てるゾロにルフィはあひゃあひゃと笑った。
     そして今日、10月31日のこの邂逅に感謝しきりだ。
     自分達が出逢い、惹かれ合い、触れ合うのに1日と掛からなかったことを思えば、なんてなんて理に叶った日なのだろう、と──。

    「よーし、二人でかぼちゃマンになろう!!」
    「もう勘弁してクダサイ……」
    「言うこと聞かねェと──」
    「やるよやりゃいいんだろっ!!」

     やがて二人は学校中を賑わせる、お騒がせの名物コンビとなる。

    「トリック・オア・トリートだ……ゴラァ」
     やったらドスの利いたでっかいかぼちゃマンと、
    「お菓子くんなきゃイタズラすんぞ~~!!」
     やったらテンションの高いちっちゃなかぼちゃマンの、2対の活躍(?)によって……。


     HAPPY HALLOWEEN 



    (オチない)

    生どら焼きはマジうまいっす(^^)d
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